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10 YEARS OF ALL TOMORROW'S PARTIES The 2nd day
[2010-03-03 11:05]

@ Butlins in Minehead 12 Dec 2009

二日目は昼一発目からPAPA M! …のはずだったのですが、まさかの、昼食を皆で和気あいあいと楽しんでおり、逃す。自分の中ではBATTLESの次に伝説の重鎮の一人として楽しみにしていたのですが…。そんな楽しみをも時に覆してしまう、その場任せの流れ。ある意味、それもフェスにはつきものですよね…とポジティヴに考えて、次は日本からの登場AFRIRAMPO! と英字表記はやっぱり不思議な感じで余りピンとキませんよね、あふりらんぽです(笑)。

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まず、登場から、私が初めて彼女達を難波ベアーズにてとっても昔に観たその頃と変わっていない堂々たる真っ赤な出で立ちで登場。勿論、大型のファッション・コレクションからお呼びが掛かるなどもする彼女達から醸し出されるオーラは、より一層落ち着きすら感じ取れるものはありますが、何と言うか、根底の尖った部分と繊細な女子ならではのアート感が何も変わらず。

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最後の、バラード曲と言って良いのか、歌い上げられる一曲は、どこまでイギリスの皆さんに通じたかは分かりませんが、私には突き刺さって来ました。かつてゼロ世代と言う名称が誰かによって命名された、大阪アンダーグランドシーンの音楽に垣間見える一つの特徴、個性的な詞を武器に放ちまくられるエネルギーの裏で、壊れそうな脆さをチラ見せする彼ら。Doddodoちゃんや、おしりぺんぺんずなどもそうですよね。私は、彼らのそう言った裏サイドが時々たまらなく好きなのですが(笑)、しっとり美しくステージを締めてくれていました。素敵でした。

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周りのイギリス人及びドイツ人に聞いていみた感想は、極めて「おもろいやっちゃなー」と言う印象のようでしたが、「だってカワイイやん?」と返しておきました。彼女達の後、このメインステージでは、これまたポストロックの元祖である一組、DIRTY THREEを控えている。その前にSHELLACへとセンター・ステージに小走り移動。

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日本では専ら彼らの姿を拝めないのが残念なのですが、ATPコンサーツ(プロモータとしての名称)のお陰でとりわけロンドンでの公演回数は一年に数回と言う頻度。それに伴いイギリスではTOUCH AND GO~SOUTHERN RECORDS周辺のUSバンド勢の人気が若い層にもリヴァイヴァルしており、SHELLACに至っては広い年齢層に今になってその名が浸透して来ている面もあります。

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帯同者のイギリス人に、「ドラマーは日本人なのか? マンガヘアーだから」と聞かれましたが、Todと言う名が日本人であるはずはありません(苦笑)。丁寧にブツ切りされたレイヤーの髪型がマンガヘアーかどうかはともかくとして、彼のミュージシャン然とした佇まいには毎回脱帽してしまいます。この上ないくらいの細身に、常に猫背気味の姿勢から繰り出される鋭角極まりない抜けまくるヒッティングは、いつ観ても同じ鮮明さで観る者を圧倒します。そこに更に追い打ちを掛けながら時に交わるAlbiniの鋼を伝えるあのザラついたギター音。それを下方から抱え込みつつオーディエンスに投げ放とうとするBobのベースが揃って、誰も真似できないバランスと威力で畳み掛けて来る。

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何度観ても胸倉つかまれるライヴなど、本当のところ早々ないもので、それ故に可能な限り何度でも彼らのライヴに足を運ぼうと思うのだ。と言うことで、一頻り恍惚とさせて頂いた後は(笑)、ここから怒濤のレジェンズ続き。日本でのドローン~サッド・コアの流行が来た頃からずっと一度はライヴを体感してみたかったDIRTY THREEの登場です。

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これが、想像していたステージとは全く別ベクトルのエンターテイメント・ショーであった。フロント・マンであるヴァイオリニストのWarrenが他のメンバーをぐいぐい率いて行くスタイルが特徴的。かつ、彼自身は全体の7割はオーディエンスに背を向けながらも、どこかセクシーに腰をくねらせながら情感豊かに豪快なヴァイオリンを弾き奏でる。感情が一層高まるその度に、ヴァイオリンの旋律がぶれることもなく先の尖った革靴で高く空を蹴るパフォーマンスは更にオーディエンスを盛り上げていた。

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合間に挟まるMCでは、途中の風船を降らせるプロットについて「リップスみたいにド派手なことは出来ないけどね!」などと言ったりウィットの効いたジョークで会場との距離をグっと縮めていたし、まさかサッド・コアの代表格によるステージとは思えない、巧みで飽きの来ないステージを完成し切っていたのが鮮明に思い出されます。

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是非とも叶えば、彼らのワンマンもいつか鑑賞してみたいものです。

更に続いて、当方一番のお目当てであったBATTLES! ライヴ開始前から、某KTM氏仕様のトートバッグに気付いて最前列で彼らを今か今かと待ちわびる少々ギーキィなBATTLESオタク? のイギリス人から絡まれる絡まれる。アルバムもEPも全部持っていると言う彼にとって、このトートが「オフィシャルなの?? 見たことない!」とテンションを上げさせたようで、酔っていることで更に拍車が掛かかりBATTLESトークが止まらない。何でも、行けるライヴは全部行って来たらしく、その回数は私の日本での記録? よりも遥かに上回っていました(笑)。そんなギーキィ・トークが盛り上がる中、登場して参りました。オーディエンスはぎゅう詰めと言えるほどではなかったものの、きょう声よりも低いザワツキが押し寄せて来るような、そんな期待感に一気に包まれ、新曲からスタート。

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この新曲群が、前知識なしで初めてライヴで聴いたのですが、何しろポップ! ファンク調を強く導入した新境地で、一瞬面食らうも、すぐに彼ら流のBATTLESならではの細かく鬩ぎあうアンサンブルに料理されたそのファンクネスが、こちらを一気に高い所まで連れて行ってくれるのでした。ファンクとプログレの融合に近い趣がなんとも小気味よい。彼らのお得意であるテンポの加速も時折みられ、やはりマスロック好きの高揚ポイントをしっかり抑えているのはさすがで、テンションが上がる一方。持ってかれっ放し。

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MCはヴォーカルも取るTyondaiが通常執り行うのですが、この日は例のギーク君が最前で騒いでいることもあり、彼に向けての皮肉混じりのハプニング的な声掛けがギターのIanとドラムのJohn Stanier双方がそれぞれ投げ掛けて来る一面も。どうも、その名前も忘れたギーク君は熱狂ファンとしてメンバーにも知られた人のようでした(笑)。

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新旧織り交ぜたセットリストでライヴが進められるにつれ、どんどん会場内が込み合い、熱気が目に見えるように上がって行くのが印象深かったです。

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楽しい時間はアっと言う間に過ぎ去り、出来れば観ようと思っていたMELVINSはセンター・ステージに着くと丁度終わってすぐの雰囲気のみが残っていた。まだ熱気の籠っている体温を下げようと、REDSに続く中庭の様なエリアで身体を冷まし、再びドアを開けメインの建物に入ろうとした時、大きな頭で背もさほど高くない初老のミュージシャン風の人がちょうど何かの機材を手に同じドアから出て来て、たまたまドアを私が支えたかたちになり、お礼を言われる。どこかで観たことがある人だ…と考えた瞬間、見逃したMELVINSのフロントマンBuzzであったことに気付いたのでした。そんな風にアーティストが身構えることもなく、結構そこらここらにウロウロしており、出演者側との垣根が低い所もフェスの醍醐味です。

再びセンター・ステージに戻ってみると、そこには聴き覚えのある独特のエッジの効いたギターと振り切れたエモーション溢れる声がフロアを沸かせている。私にとって初めて実際に観る彼らは、これまた世界中で次々と影響を受けた新しいアーティストを生み出させている、ポスト・パンクの一角にして元祖アート・ロックの代名詞、MODEST MOUSE。何かよく分からない気持ちが押し寄せて、彼らをATPで観られたことがただ感慨深い思いでした。

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会場内は、予想した以上に盛り上がり、外気からシャット・アウトされたセンター・ステージ内は熱気が充満し最高潮のヴォルテージに達していた。皆、この止めどなく現れて来るUSからの伝説達を目に焼き付けて、一種夢心地のような境地の様に見えました。

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彼らもまた大所帯ながらだれることなど一切なく、楽曲ごとの緩急も見事で素晴しいステージでした。この日はここでライヴ鑑賞は打ち止め。これ以降は、しばし到着前から予定されていたSUSHIパーティが部屋に戻るとを着々と進められて行くのでした…。

空腹も満たしてアルコールも満タン、部屋のテレビで流れているのは、ATP Channel。以前のATPではまだ用意されていなかったこのシステムでは、Butlins内の各部屋全てのテレビにおいて、ATPのチョイスした映画やドキュメンタリーの放送で占拠されており、24時間いつでも鑑賞できるのです。ドイツ人の女の子の帯同者に訳して貰いながらドイツで有名(だそうです)な影絵映画を観たりしながら、宴もたけなわ、かと思いきや、この日の締めは、あれだけ沢山ライヴを観た後に、これでもかと一踊りして一汗! などと言う贅沢な終焉。REDSでのパーティではBELLE & SEBASTIAN DJsがオールディーズを中心に、クラブと言うよりダンス・パーティの時代かと見紛いそうになるような平和な雰囲気で盛り上げていた。同ドイツ人の友人が気分を良くして、ギガボン(エナジードリンク+ウォッカ・ショット)を煽り出したりもしながら、外はかなりの低気温と言うのに会場内は既に暑いことこの上ない。何だか気付けば、終わりを知らないような数のUSオルタナティヴ勢を観た後は、今ベルセバが音楽をチョイスしてくれている。ギガボンが良い感じで回って来たら、普段の現実からも、野外フェスの開放感や爽快感のそれらとも、また全く違う別世界にいる様な境地になって、二人でヘラヘラ小一時間踊り文字通りの良い汗をかき、心地よい気分のまま、ものの5分で食住生活の場に戻る。

これが、ATPのある意味異様な生活リズムなのです(笑)。皆さんにも、この世俗と切り離されたかの様なコミューンに住まい、歌って踊って飲み食いして寝る、享楽が許され続ける三日間を機会があれば是非味わって頂きたいです。