2011.12.18 (sun) @ Shindaita FEVER, Tokyo
22時27分、向(Vocal)は坊主頭のてっぺんを観客の方にずっと向けていた。時間にすれば数秒程度かもしれないが、とても長く、深いお辞儀だった。そして、ステージ左脇にスッと消えていく彼の横顔が泣いているように見えた……。いや、ただ汗にまみれていただけかもしれないけれど、その一瞬の横顔がやけにエモーショナルで胸にグッときた。
「kamomekamome結成10周年記念ライヴ」と銘打たれたこの日は、ヌンチャク時代から対バン経験がある仙台発のEXORGRINDSTがオープニング・アクトを務め、激重グラインドコアを存分にアピールする。しばしの休憩を挟み、「年忘れの大運動会、おっぱじめようぜー!」と向が煽ると、kamomekamomeは現時点での最新3rdアルバム『Happy Rebirthday To You』から冒頭3曲を曲順通りにプレイする。
序盤から向とKenzo(Bass / Chorus)による掛け合いヴォーカルは壮絶な火花を散らし、男だらけの場内は瞬時に沸点に達した。「最初のライヴは、客がドン引きだった(笑)。『ルガーシーガル』(2ndアルバム)でわかりやすくしたら、割と好評だったんだ。まあ、ノレるからね。でも俺らはずっと同じ気持ちでやってる。俺はこの4人に負けない歌を歌わなきゃいけない」と、10年の歩みを感慨深げに振り返る。
確かに1stアルバムは、長尺で宙に8の字を描くような掴みどころのないグルーヴが渦巻いていた。対して、2ndアルバムはリフ主体で攻撃性を際立たせたライヴ映えする楽曲にシフトし、ファン層を拡大させる転機作となった。この日は3枚のフル・アルバムからバランスよく選曲し、ほかにスプリットやオムニバス盤のみで聴ける「メモは語る」、「フルクライマックス」も織り込んだ、密度の濃いセット・リストだった。とりわけ、数年ぶりにやった「あの人のパレード」を筆頭に、中盤から後半にかけて、1stアルバムから多く披露してくれたのは個人的に嬉しかった。
後半、向は「“とある魔法”は悲しい曲と思われてるみたいだけど、あれは一人のAV女優のドキュメンタリーを見て、(歌詞を)書いたんだ。その子はすごくお父さんに愛されてて……すごく幸せな曲なんだよ」と真意をポロっと零す。取材時は歌詞についてあまり多くを語りたがらない彼も、ライヴでは自然と心の扉が開くのだろう。あるいは、否定的な歌詞と捉えられることに我慢ができなかったのかもしれない。
本編ラストは「Happy Rebirthday To You」でモッシュ大会となり、観客の余力をすべて奪い去る。だが、まだまだこれで終わらない。アンコールは「言葉をナメちゃいけない。言霊はあると思っている」と言った後、いきなり新曲をプレイする。これがkamome流ハードコア・パンクと名付けたくなるほど過去最高に振り切れた直球ソングで、背筋がゾクゾクするかっこ良さだった。それから「メデューサ」、「プロメサイア」と続き、約2時間半(!)に渡る長丁場のライヴは、あっという間に過ぎ去った。
「10年続けて確信になった。これからも続けるから……」と向は充実感たっぷりに語ると、冒頭に記した深いお辞儀へと繋がっていく。今日はツアー・ファイナルで見られる祝祭的な高揚感というよりも、地に足が着いた冷静さと、マグマのごとき情熱が交互に襲ってくるようなダイナミズムに溢れていた。勝手ながら、kamome第一章完結と言いたくなる総決算的パフォーマンスだった。2012年はライヴを減らし、地元・柏に引き籠り、ニュー・アルバムの制作に励むという。また、こちらのド肝を抜く強烈な作品を作ってくれるに違いない。
Text : Ryosuke Arakane
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)
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