DATE : 2012.2.10 (fri) @ Shindaita FEVER, Tokyo
ACTs : Hurricane Bells / 8otto
ついに実現したハリケーン・ベルズ来日公演。ロングウェイヴで活躍していた頃からミュージシャンとしての能力を高く評価されていたスティーヴ・シュルツが、その卓越したソングライティングの才をソロ・プロジェクトという新たな形のもとで開花させた姿をようやく目撃することができた。スティーヴが独力で作り上げたというデビュー・アルバム『トゥナイト・イズ・ザ・ゴースト』のリリース後、ハリケーン・ベルズは精力的にツアー活動を行なっており、それを通じてサポート・メンバーとの間に築かれた良好な関係が、セカンド新作『タイズ・アンド・テイルズ』にも反映されていたので、おそらくライヴの場では、レコードとはまた違った形で楽曲の魅力が発揮されるに違いないと確信していたが、結論から言って、それは間違っていなかった。

今回のジャパン・ツアーで、日本から対バンを務めたのは8otto。直前になってベーシストのTORAが腕を負傷するというアクシデントに見舞われるも、この日は口ロロの村田シゲがサポートに入り(※翌々日の大阪公演ではLOSTAGEの五味兄が参加)、さらにはハリケーン・ベルズのメンバーを加えてフレイミング・リップスの「レース・フォー・プライズ」をセッションすると いうスペシャル・タイムまで提供してくれた。

フロアが充分に盛り上がったところで、満を持してハリケーン・ベルズがステージに登場する。今回スティーヴをバックアップする面々は、クリスチャン・ボンガースとコリン・ブルックスのリズム隊、紅一点バック・ヴォーカルのアシュン・カイランの3人。地元の親しい音楽仲間といった風情だが、決して単なるお友達感覚ではなく、各自が確かな実力を持ったミュージシャンであることに、あらためてニューヨークというフィールドの「音楽的な層の厚さ」を実感させられる。特に注目すべきは、プチアフロヘアもクールなコ リンのパワフルかつタイトなドラミングで、これが、スタジオ音源はもとより、ロングウェイヴにも無かったダイナミズムをもたらしていたと思う。ベースのクリスチャンも、スティーヴの機材トラブルをケアしたりまでしながら全体を支える堅実な演奏。また、アシュンの声はすでにハリケーン・ベルズになくてはならない大事な要素になりつつあることをいっそう印象づけ、彼女が幾度となくスティーヴのスタンドマイクへ自分のマイクを重ね、仲良く顔を寄せ合って歌う姿はなんとも微笑ましく心を和ませてくれた。

そして、この新しい形で再び日本を訪れることができて本当に嬉しくてたまらない、といった様子のスティーヴは、エレキとアコギを曲ごとにとっかえひっかえしながらエモーショナルなプレイを聴かせ、歌と作曲だけでなく、ギタリストとしての力量を存分に見せ つける。やはりストロークスのアルバート・ハモンド・ジュニアのバックを務めていた経歴はダテじゃない。

会場に集まったオーディエンスもみんな大いに満足していたようだし、終演後ごく自然に始まったサイン大会など、とにかく笑顔が絶えない空気感が居心地よかった。何より、こうして生で彼らの音楽を体感してみて、ハリケーン・ベルズの持つポテンシャルをこれ まで以上に確信できたし、バンドの今後にもますます期待が膨らんでいる。さらに素晴らしい新作を生み出し、どんどん大きくなっていってほしい。それから、現在は休止中のロングウェイヴについても新情報が出てくるかもしれないし、スティーヴがギターを担当 し、スプーンのジム・イーノも参加しているというアシュンのバンド=スカウトの作品リリースにも期待しよう。なんなら、次回は3組そろって来日してもらってもいいね。
Text : Yoshiyuki Suzuki
Photo : Kazumichi Kokei
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