2013.6.16 (sun) @ TOKYO DOME CITY HALL, Tokyo
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5thアルバム『君想う、故に我在り』に伴うレコ発ツアー・追加公演は、父の日(6月16日)だけにBIGPAPA名義でライヴを行うことになった。バンド名を変えただけで、ライヴの中身はてっきり同じだと思っていたが……それは大きな勘違いだった。BIGPAPA押しが随所に顔を出し、時にその設定がブレて笑いが起きる。本気だけど和やかなムードも漂う。それが今日のライヴをスペシャルなものにしていたと思う。
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「初めまして、BIGPAPAです!」という金井の挨拶を聞き、こちらも自然と表情が崩れたが、1曲目「the cookie crumbles」が始まると、真剣にのめり込んでしまう。観客の暴れっぷりも凄まじく、会場が広いだけにたくさんのクラウド・サーファーを眺めているだけでも気分が高揚した。
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「Neverland」、「CPX」と疾走感のある曲調で畳みかけ、場内のテンションはどんどん上がっていく。中盤、「昨日もここでライヴをして……いや、観に来て、BIGMAMAがこのツアーでやらなかった曲をやります。この会場が似合うと思う」と前置きすると、4人のストリングス隊を迎えて「ダイヤモンドリング」を披露する。それから「走れメロス」、「#DIV/0!」、「荒狂曲“シンセカイ”」と展開の凝ったドラマティックなナンバーを連発し、改めてバンド・アンサンブルの美しさに魅了された。
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後半は「Jeffery Campbellのスケートシューズで」(今日誕生日を迎えたファン19人をステージに上げた)を皮切りに、最高傑作『君想う、故に我在り』からのナンバーを矢継ぎ早に連発し、繊細でスケールの大きい世界観で聴き手を温かく包み込む。特に表題曲の神聖な空気感は絶品で、今日のハイライトの一つだった。
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アンコールは父の日に絡めて、BIGMAMAの育ての親とも言えるレーベルのボスに向けて、金井がアコギ1本を持ってズカズカと満員のフロアに突入し、そのど真ん中で「I Don’t Need a Time Machine」を熱唱。
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そしてステージに戻ると、新曲「alongside」も披露するなどサプライズが続く。Wアンコールの「until the blouse is buttened up」で最後を締め括り、2時間20分に及ぶショウは幕を閉じた。最新作の楽曲を軸に据えながら、過去の名曲群もバランスを良く配したセット・リストだった。新旧のファンを喜ばせる気配りとBIGPAPA縛りという遊び心が、通常のライヴとはまた趣が異なる風通しの良さを感じさせた。『君想う、故に我在り』という記念碑的なアルバムを作り終えたことで、これまでのキャリアもじっくり振り返り、肩肘張らない余裕さえ覗かせるパフォーマンスを展開した。そういう意味では、今のBIGMAMAを象徴するようなライヴだったと言えなくもない。次のニュー・アルバムを期待してしまうのは、まだ早すぎるかもしれないが、間違いなく第二章の始まりを告げる作品になると思う。今年も来年も……その先もずっと目が離せない。
Text : Ryosuke Arakane
Photo : ★Azusa Takada / *Yasuhiro Shimoka