2011.9.3 (sat) @ HIBIYA YAGAI DAIONGAKUDO, Tokyo
思い起こせば5月、震災の影響で延期となった最新アルバム『MUDA』のリリース・ツアー・ファイナル、SHIBUYA-AXワンマンの振り替え公演が開催されて以降、トロンボーン担当・浜野謙太が映画『婚前特急』への出演を皮切りに、テレビやラジオに出まくったり、もうひとつのバンド、在日ファンクで怒濤のリリース・ラッシュ、そしてギター・星野源も引き続きソロでリリースやイヴェントへの出演、他の2人だってそりゃもうバンドやサポートでめまぐるしい活躍だった。その間、ファンの皆さんもこの野音公演のことを忘れてしまうくらいの忙しさだったのではと想像する。
とはいえ、そのぶんを取り戻すように、日本列島にゆっくり向かってきていた超大型台風の動向に気を揉みながら、開催までの1週間くらいを過ごしただろう。なんといっても、バンドにとって初の野音ワンマンで、しかも台風が直撃して中止になるかもしれない、開催されたとしても土砂降りかもしれない(そしたら野音の伝説になるかもしれない)と、さまざまな可能性を秘めたライヴのチケットを手にしていたのだから。
そんなハラハラドキドキを孕みつつも、開演してみると、それまで降ったりやんだりを繰り返していた雨もぴたりとやんで、本当にちょっとした奇跡のようだった。手書きのトーテムポール(星野曰く、“少しでもエキゾ感を出そうとした”)、手書きの、切り絵風の幕で装飾された舞台に何気なく登場したメンバーの第一声は“晴れたー”(星野)、“よく来たね”(浜野)。

星野の“初の野音、のんびりやります”というコメントで一見気負いなくはじまったライヴは、とはいえ、1曲目「KAGAYAKI」から、バンドのどっしりとした安定感や、「Good Bye My Son」でのトロンボーンのキレも含めて、客席に伝わってくる音楽の情報量が違う。ロックっぽさが加わった「ホニャララ」も、重々しくスタートして後に気を抜かせる「Hello Põ」も、野音をとりまく緑や際限なく広がっていく外の空気と心地よく混ざり合って、誇張でなく、五感が彼らの音楽を感じているようだった。

5時40分すぎに始まり、ちょうど日が暮れなずんできたころ演奏されたのは、SAKEROCKの楽曲の持つ“泣き笑い感”を象徴するような「老夫婦」。その直後、タイトな「穴を掘る」の後半を、なぜか浜野・星野デュオで<やっぱ好っきゃねーん!>と歌い上げた後は、ああ、彼らの下地にはそういう一面もあったなと思い出させてくれるジャジーな「グリーンランド」「ちかく」、そして、SAKEROCKの楽曲の中で一際叙情を感じる「今の私」という流れ。

彼らのライヴのすごいところは、ここからさらに違う展開があることだ。星野のマリンバが拍手と共に登場し、サポート・メンバーに星野ソロのバックや曽我部恵一ランデブーバンドなどでも活躍する横山裕章(Key)が加わった「最北端」「会社員」「千のナイフと妖怪道中記」のがっちりとしたバンド・アンサンブルは、なんだかこの日までのさまざまな思いや願いを昇華してくれるようなパワーがあった。そしてさらに、ギターでキセル兄・辻村豪文が加わって演奏された新曲「エメラルドミュージック」のポップさ、ロックさは、バンドがますます前進していることを表現していたし、新曲でこの日一番の盛り上がりを見せたのもすばらしかった。

続いては、定番、浜野・伊藤大地のスキャット・ドラム対決。これまたいつものように、「自信のないときは自分の裸に頼ってきた」浜野が、洋服を脱いだり着たりの一幕があったけれど、今回はうまくまとまって「生活」がスタート。個人的には、ドリフのコント(20代は知らないか)を音楽で表現したらこんな曲になるんじゃないかと思っているのだけど、“何にもないようでも、ドタバタしながら生活は続いていくんだよ”と語りかけてくるようなこの曲をスローなアレンジで演奏し、本編終了。

アンコールで、事務所社長・角張さんが改めて、バンド結成11年で初めてとなった野音ワンマンに触れて、感慨もひとしおの様子(彼は、台風のことが気がかりすぎて痩せてしまったらしい)。星野も“こんなへんなインストバンドが野音でやれるなんて”と自嘲気味に表現していたけど、以前、取材時に話していたように、“自分の好きな音楽は恐れ多くてやれないと思ったから、禁じ手にしていた。そうしたらいつの間にかこんな音楽をやっていた”(星野)バンドは、今、その禁じ手を少しずつ解禁しながら、新しい音楽を作っている。そんなバンドだからこそ、植木等の名曲「スーダラ節」を野音で大合唱できるのだろうなあ。12月にもツアーが決定したとのことで、その時にはまたどんなライヴを見せてくれるのかが楽しみで仕方ない。
Text: Ayumi Tsuchizawa
-Set List-
01. KAGAYAKI
02. Goodbye My Son
03. URAWA-City
04. ホニャララ
05. Hello Põ
06. FUNK
07. Green Mockus
08. ラディカルホリデー
09. 老夫婦
10. 穴を掘る(+やっぱ好きやねん)
11. グリーンランド
12. ちかく
13. 今の私
14. 七七日
15. 最北端
16. 会社員
17. 千のナイフと妖怪道中記
18. エメラルドミュージック
19. モー
20. 慰安旅行
21. Wonder Moon
22. 生活
-Encore 1-
23. インストバンド
24. スーダラ節
-Encore 2-
25. MUDA