2013.9.20 (fri) @ ZEPP TOKYO, Tokyo
バンドという生き物にとって、リリースごとに「新作が常に最高傑作」であり続けることは難しい。Nothing's Carved In Stoneのように、メンバーそれぞれが高いスキルと経験値を持つバンドであればなおさら、いつまでも「初期衝動」という言葉で突破できるほどのハードルに満足するはずがない。エレクトロニックなプロダクションやダンス・ミュージックの方法論を導入した空間処理といったサウンドへの探究心と、右肩上がりのライヴの動員に象徴されるオーディエンスからの支持を両立させている。
村松がMCで強調した、キャパシティ2700名とされるZEPP TOKYOのこの日のライヴが「ほぼ即完だった」というニュースは、バンドと一緒に成長していくリスナーをもあらためて奮い立たせる事件だったことだろう。
パワー一辺倒でもなく、テクニック至上主義でもなく、リスナーの耳を刺激しながら同時に大衆性をも備えた、実に聴きごたえのある『REVOLT』を携えたツアー・ファイナルとなるこの日のセットは、アルバムからほぼ全曲を披露。しかも「ライヴ・モンスター」の異名を持つにふさわしく、ステージの熱量は増加させながら、これまでのアルバム以上に振幅の幅を広げた楽曲をライヴ仕様にヴァージョンアップさせていた。
「Assassin」「You're in Motion」という作品でも序盤に配置された楽曲から、日向のヘヴィなベースが牽引する「Predestined Lovers」など、疾走感を重視する前半。そして、グラマラスな鳴りを持つ「The Fool」ノイジーな「Bog」不穏さをかきたてるアブストラクトな「Sick」といった楽曲を揃えた中盤のパートが続く。「客席とステージ、どちらもNothing's Carved In Stoneだと思っている」という村松のMCで一体感を確認しながら、プログレッシヴな楽曲をライヴの流れのなかで聴かせ、踊らせてしまうところに現在の彼らの真骨頂がある。
さらに、後半への展開の導入に2曲続けて配置された日本語詞曲「きらめきの花」「村雨の中で」のストレートさたるや。生命力を高らかに歌うバンドのたたずまいにより、「Around the Clock」といったこれまでの人気曲の爆発力も倍増された。本編最後に歌われた「朱い群青」のすがすがしさと開放感は、オーディエンスとの絆をさらに深めることができる要因になったことだろう。
アンコールでは「『出てこいこのヤロー』とか言わないの?」とこぼす村松の言葉に反応したオーディエンスの声援に応え、仕切り直して再度舞台袖から登場し直すという茶目っ気も見せる。12月にシングルをリリースすることを発表し、早く披露したくてたまらないといった様子でイントロをプレイするというサービスも。さらに1月のツアー、そして新木場STUDIO COAST2デイズを行うことも報告された。
「最高の今日」、それを続けていくことで、未来への道が続いていく、と村松は繰り返していたが、それってまさにNothing's Carved In Stoneのバンドの姿勢そのものじゃないか。快進撃を続ける4人から俄然目が離せない。
Text : Kenji Komai