2010.9.25 (sat) @ Akasaka BLITZ, Tokyo
気のせいかもしれないが、ぎっしり埋まったこの日のフロアは、いつも以上に男性オーディエンスたちが目立つ。それはNothing's Carved In Stoneというバンドがいまこの国のティーンエイジャーたちとって最も憧れるバンドのひとつとして完全に定着しているということを如実に説明しているかのようだ。ロック本来の屈強なバンド・アンサンブル、そしてメンバーそれぞれの類まれなるプレイヤビリティ……、最高のロック・バンドしての必要条件を完全に満たした彼らに、若い連中たちが憧れを抱くのも当然のことだろう。
ツアー・ファイナルらしい高揚感に満ちた赤坂BLITZのライヴは、セカンド・アルバム『Sands of Time』のオープニング「Chaotic Imagination」、「Cold Reason」をたて続けにプレイすることで、『Sands of Time』で聴かせていたオールド・ロックのドラマティックな感覚とオルタネイティヴな疾走感を併せ持つ独特の世界を現出させる。久しぶりの東京公演は、全国各地をまわることでさらに鍛えられあげたバンドのアンサンブルの完成度の高まりを充分に感じられるものだった。
中盤ではトリビュート・アルバムに提供したTHE YELLOW MONKEYのカヴァー「バラ色の日々」がプレイされたが、この曲での村松によるグラマラスなヴォーカルのハマりっぷりを聴くたびに、Nothing's Carved In Stoneの日本語詞の楽曲も聴いてみたい気持ちにかき立てられる。続けて『Sands of Time』からプログレッシヴなインスト「Memento」が披露される流れは、このバンドのポピュラリティと実験性をつぶさに感じられる場面だった。
MCでは、喧嘩もしたというツアーを締めくくることへの感慨が語られる。村松が「申し訳ないけど俺ウブさんの胸で泣くから」と冗談めかしていたけれど、やはり4人のファイナルへの特別な思いを感じることができた。セットリストとしては、くだんのTHE YELLOW MONKEYのカヴァーを除いては2枚のオリジナル・アルバムからの楽曲で構成されたNCISスタンダードともいえるど直球のセットリスト。しかし、それぞれの楽曲に緩急をつけた構成は決してオーディエンスの興奮を損なわせることなく、後半の上昇する熱気の果てに演奏された「Around The Clock」、「Isolation」においてのフロアの爆発は目を見張るものだった。
なんと言ってもこの夜、とても印象に残ったのは、積極的にコール・アンド・レスポンスをアプローチし、愚直なまでにリスナーとの一体感を作り上げていく彼らの姿。彼らの熱き気持ちと気迫がビリビリと伝わってくるかのようだった。そして親密を感じさせるイントロからドラマティックな展開が続く本編ラストの「Palm」。こうしたエモーショナルでメロディアスな曲も、決して湿っぽくなることなく、爽やかささえ覚える突き抜けた開放感をサウンドのパワーと空気により作り上げてしまうところに、Nothing's Carved In Stoneの魅力がある。気が早いかもしれないが、またすぐに次のパフォーマンスを観たくなってしまう、そんな素晴らしいパフォーマンスだった。
Text : Kenji Komai
Photo : Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER)
Nothing's Carved In Stone Official Website
Nothing's Carved In Stone Official MySpace
Sands of Time Nothing's Carved In Stone |
Around The Clock Nothing's Carved In Stone |