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凛として時雨 Presents "Tornado Z"

アルバム『just A moment』リリース後、2度目のツアーとなる凛として時雨 Presents "Tornado Z"のファイナルが行われたZEPP TOKYOは、冗談抜きに立錐の余地ナシ。開演前からデンジャラスなムードが流れる。そんな中、「こうれもう音出てんの？」と聴き覚えのある声が。なんとピエール中野がカゲアナしてる！ 湘南乃風のマネ？ に場内爆笑。

だが、そんなお楽しみムードを切り裂くように静謐な「mib 126」でライヴがスタートした。いつも感じることだが、時雨のライヴはTKのギターと声、345のベースと声、ピエールのドラムと絶叫しか鳴っていないにも関わらず、とても3ピースとは思えない第六感的なサウンドが聴こえてくる。それが楽器で会話するようなミディアムのナンバーから始まったことで、この日はそれがより鮮明に浮かんだ。そしてこの日の白眉はTKのエフェクターのチョイスと同レベルなぐらい変態的（褒めてます！）なライティング。3曲目の「想像のSecurity」でほんの3秒だけのためにミラーボールが瞬いたのをはじめ、変則的な時雨の曲調にみごとにリンクし、観る者の精神にどんどん侵食してくる。照明さん、恐るべし。

TKがテレキャス以外を唯一、手にした「Tremolo+A」。そこで彼は椅子に座ってで弾く。これは演奏の純度のためだろう。不謹慎だが「誰か死ぬんじゃないだろうか？」と畏れをなすほど、曲によっては地獄絵図を展開するライヴだが、バッサリ切り落とすようなエンディングとともに会場は咳ひとつ聴こえない静寂が支配。これはファンが演奏に集中している証ではないだろうか。中盤、オリジナル・ヴァージョンより凝縮されたとはいえ、タルコフスキー映画かクラシックコンサートか？ と見まごう空間のシンフォニーを作り上げる「moment A rhythm」。この曲でのレーザーライトはエレクトリックな黄泉の国にも見え、エネルギーを放出しきっているファンにとってはマジでヤバイ演出だったはずだ。

そして終盤を前に、新曲「replica」を披露。彼らにしては比較的メロディと言葉が聴こえやすい速い8ビートで、ここからアレンジや演奏がまだ育つのか？ が楽しみになる。さて、クライマックスを迎える前に恒例のMCタイム。TKによって発表された、4月のさいたまスーパーアリーナ公演敢行へのリアクションは実際の人数の軽く10倍ぐらいの大歓声（に、聴こえた）。「戦争が起こるんじゃないか」…またまた、不謹慎な想像が起こるほど、いい意味でTKはこの場の独裁者だった。そして、おなじみ怒濤のラスト2曲「Telecastic fake show」と「nakano kill you」の本編のみ全17曲で、この日、この場を完全制圧。

凛として時雨のライヴの凄さは、すでに曲そのものから始まっているのだが、ライヴとなると出ている音でオーディエンスの衝動を総動員する現実を目の当たりにすることになる。音と演奏にすべてを込めて、人間のヴァイオレンス、繊細すぎる感性、体力etc...を暴ききる。この潔すぎるスタンスで次はアリーナを覚醒させるのか？ 楽しみでもあり、恐ろしくもある。

Text : Yuka Ishizumi
Photo : Yuki Kawamoto

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