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フジファブリック　"ホシデサルトパレードTOUR 2011"

悲しみは容易に乗り越えられないが、日々、新たな喜びや発見があるのが人生だ。起こったことを受け入れて進む、そんなドキュメントを新生フジファブリックはアルバム『STAR』の完成を経て、今回のツアーで見せてくれた。現体制でのバンド存続を決意してから約1年4ヵ月という時間は要したものの、いやむしろ彼らの決意はそれだけ固かったのだと思う。

緊張より高揚感に満ちた会場の客電が落ち、メンバーが登場。金澤のシンセがスペイシーな響きを上昇させて頂点で鳴り始めた1曲目の「STAR」はさながら「スターシップ・フジファブリック号」の上陸を思わせる。冒頭から新生フジの世界観をドーンと提示された思いに熱くなり、ファンも前方へ押し寄せるのが見える。「夜明けのBEAT」では、以前も今も乗り越えた既に心のヒットチューンとしての風格が。なんとも凄まじい盛り上がりなのだ。長年のファンのみならず、「モテキ」のヒットもあるのだろう。一気に加熱するファンに対して思わず間奏で「トーキョー！」と叫ぶ山内。もっとスクエアなライヴをイメージしていたが早くもタガが外れてる！

アンサンブルが図太さを増した「B.O.I.P.」では、金澤が繰り出す鍵盤のアドリブに山内もインスピレーション全開で応酬。笑いを誘うシンセ・サウンドには「なんやそれ……」と言いつつ、さらに変なフレーズで「今日は俺の勝ちやな」と満足気な山内。笑いと変態性ギリギリのラインはやはりフジファブリックならではだ。そして二人のやりとりをにこやかに見守りつつ、屋台骨を支える加藤のベース。サポートの刄田（東京事変）のドラムも含め、「バンドってやっぱ楽しい！」というシンプルな気持ちにオーディエンスを運んでいく。また、ムーディ～ドローン～ブルージィと、ギタリストとしての確かなスキルを山内が見せた「地平線を越えて」も序盤のフックに。

中盤にはアコースティック・セットでアルバム収録曲の中でも架空の南国感漂う「アイランド」、そして今回、グッズとして受注販売もされた「FAB GUITAR」のお披露目をした金澤がそのままFAB GUITARを演奏し、山内とのアコギ2本という場面も見せてくれた「MUSIC」。深いテーマと困難な時期を想起させる曲でもあるのだが、曲そのものが持つ根源的なテーマを素朴とも言えるアレンジで演奏した彼らに意気に感じた。

後半は「Drop」「君は炎天下」「パレード」とアルバム『STAR』からの楽曲を続けて披露。ことに「パレード」の透明感やネオアコバンドが演奏するソウルフィール的なものも重なって、寒いけれどちょっと心弾む今の季節と見事にシンクロする。そして終盤には、山内がこの歌をうたえたことがバンドを続ける確信になったであろう「会いに」。そんなセンチメンタルな気持ちを上回る勢いのある演奏と素直な山内のヴォーカルがフロアをさらに熱くする。刄田のドラマーでありながらまるで舞踏家のような自由なドラムや、曲の始まりにオフマイクで叫ぶ「ありがとうございまーす！」には笑いを禁じ得なかった。それだけ中音のグルーヴも気持ちよかったのだろう。

そして本編ラストはそれまで湧きに湧いていたファンが立ち尽くしてステージを見つめる様子が胸に迫った「ECHO」。スターシップ・フジファブリック号が離陸するようなスペーシーなアレンジと、「あれからね、色んなことが沢山起こってさ」から始まる山内のヴォーカルに、ここにいる全ての人の感情が重なり、思わず涙腺が決壊。ただそれは志村の不在だけでも、その後の３人の心情だけでもなかったように思う。おのおのにとってのままならない毎日や、それでも生きていく静かな決意、そんな様々なものがものすごい輝度になって会場に溢れていた。４人の顔に溢れる達成感、そしてまだ始まったばかりの新生フジファブリックへの期待。それはアンコールの拍手の大きさにも現れていた。

再びステージに登場したメンバーは素全開のユルいモードで物販の紹介なんかしつつ、演奏はもはやタガの外れたR＆Rバンドの佇まいで「星降る夜になったら」と「TAIFU」をやり切って終演。狭義のジャンルに収まり切らないこのバンドの強さは、2012年にはさらに突出するのではないだろうか。この日、新生フジファブリックは最前線にいた。

Text : Yuka Ishizumi

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