2012.12.9 (sun) Shibuya CLUB QUATTRO, Tokyo
te' 2年ぶりとなる東京でのワンマンは、『ゆえに、密度の幻想は綻び、蹌踉めく世界は明日を『忘却』す。』をひっさげてのツアーの成果をたっぷりと感じることのできる内容だった。まず飛び込んでくるのがそれぞれの楽器の音の響き粒立ち。エフェクティヴなアレンジながらドライヴ感を加速させる「『弦』の揺らぎは多様の文様を紡ぎ、泡沫夢幻の重奏をかなでる。」など、エレクトロニックな要素やエフェクティヴなアレンジでの空間設計をふまえたロックな疾走感が心地良い。
そう、これまでの彼らのライヴにあった有無を言わさぬ音圧やノイズよりも、楽曲のドラマ性が際立つように感じられるのだ。シンフォニックなアンサンブルにより、楽曲ごとのストーリーテリングがより明快になった。「あったかいっすね。お客さんを敵だと思ってたんですけど」とMCでkonoが笑っていたけれど、オーディエンスを突き放すようなあの緊張感が薄らいでいる。それは決して、やわになったということでなく、むしろ「茫漠の中の『粒子』の蜜月は、私という存在が煌めく刹那の現身。」での浮遊感など、新たなベーシストmatsudaの加入により、さらに楽曲の可変性が高くなったことによる変化なのだと思う。
そのペダンチックな曲タイトルの印象ゆえか日本のシーンで異端と捉えられがちかもしれないけれど、世界を見ればレディオヘッドやシガー・ロスの名前を挙げるまでもなく、彼らのようなポストロックをベースにダンスミュージック、ポップス(時にはヘヴィメタルまで)など多様な要素を溶けこませようとするアーティストは少なくない。世界のロックの潮流との共鳴を果たし音のクオリティを磨き上げながら、どれだけリスナーを驚かせられるか、te' は常に挑戦している。なによりも雄弁に訴えかけてくる彼らのサウンドにある、いい意味でのサービス精神が、よりダイレクトに観客に伝わっていることは確かだろう。後半で披露された「楽観の深奥で燻る魔は、万人が宿す普遍的無意識の『罪』の残滓。」でのフロアとの一体感はなんとも壮観だった。
本編最後はニュー・アルバムからメランコリックな「私は川の窪み。流れは過ぎゆけど保たれる波紋。『動的』な秩序。」。さらにアンコールでは、記念すべき残響の初リリース作「己が分を知りて及ばざる時は速やかに止むるを『智』と言うべし。」(思えば2004年のリリース当時、この作品へコメントを送っていたのが誰であろうmatsudaだった)ほか4曲をプレイ。「来年はもっとライヴやりたい!!」と宣言した、彼らのさらなる躍進を楽しみにしていよう。
Text : Kenji Komai