ロックやパンクのみならずエモ、エレクトロニカ、ブレイクビーツとアルバムごとにさまざまな音楽性に挑み、自己を更新し続け、名実ともに日本のトップバンドとしての存在感を揺るぎないものにするストレイテナー。彼らのニュー・アルバム『Nexus』は、新たにギターの大山純を加えたフォーピース・バンドとしての初期衝動があるばかりでなく、これまでの音楽的冒険がスリリングなバンド・サウンドと、エモーションと叙情性に満ちた楽曲へとみごとに結実している。ホリエ自らが「ロックのマスターピース」と形容するのもうなずける、この大傑作に迫る。

Interview & Text : Kenji Komai
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)


■ホリエアツシ・大山純 インタヴュー

――アルバムが完成しましたが、これほどまでのクオリティになると予想していましたか?

大山純(以下、大山):
ぜったいおもしろい音になるだろうなということは予想していたんですけれど、自分の思っていた以上の広がりをもったアルバムにはなったと思います。

ホリエアツシ(以下、ホリエ):
けっこうバラバラに曲を作ったので、その感じが出るかもと思っていたけれど、そんなこともなかった。アルバム全体を通してスペクタクルな感じが出せたかなと。

――4人になってのバンド感というのがギュッと出ていますよね。

ホリエ:
そうですね、いままでどうしても音源とライヴを分けて考えていて、緊張感や音圧、その場でしかない空気がすごく味方してライヴの表現の強さになっていると思うんです。音源は音源でしかできない、スタジオで考えながら自分たちのアイディアを試すということができるので、ライヴと音源って完成品がぜんぜん違うんですよね。だからこの『Nexus』というアルバムではその両方を、4人になって生で演奏できるものとしてできたと思っています。

――音源なりの実験というのは、前のアルバム『LINEAR』でやりきったという気持ちもあったのですか?

大山:
実験的なことをやっても、それはそれですごいものができるような気はしますけれど……。

ホリエ:
4人になってそれをする必要がなくなったかなって。今回のレコーディングに関しては、もちろんその場で変化していくものもあったんですけれど、プリプロで出来上がったものを録るというやり方でした。

――そうすると曲作りの段階からかなりスムーズな制作だったと?

ホリエ:
曲ごとにヴィジョンを示しながら、意見を出し合いながら、最終的にひとつのイメージに向かっていくという意識はありました。プリプロの段階で、4人の演奏で音の世界観が完成しているので、メロディを作るにも歌詞を書くにも、そこであらたにイメージをかき立てられるというか。

大山:
(ストレイテナーとして初めてのレコーディングということで)遠慮してやってもしょうがないので、ガンガン自由にやらせてもらって、そのうえで相談をするという感じですね。好き放題演奏して「こんなん出たけどどうかな?」って提示していくやり方でした。

ホリエ:
あとは、「Lightning」や「蝶の夢」のように、純くんとひなっちが昔作っていた曲から発展させていった曲もありますし、「Stilt」は純くんがすごい前から作っていたリフが元なんです。それが意外にもストレイテナーっぽいんですよね、ファンはこういうものを求めているんじゃないかなという。

大山:
今回やっと使えてよかったなと。

ホリエ:
いまのバンドの方向性的になかなかこういうポップな曲が生まれてこなくて、でもせっかくだからすごくポップなメロディをつけようと。そうしたら、このアルバムのなかの"光"になりましたね。

――他にも「Little Miss Weekend」は、これまでのストレイテナーらしさのなかでも、かなりストレートにふりきれたタイプの曲ですよね。

ホリエ:
だから、どちらかというと楽曲のバリエーションをあまり広げないようにしていました。なんか新しいこととか実験をしようとこのアルバムでは思わなかった。むしろ、集大成を目指して作ったところはあります。そのなかで、いままでのストレイテナーとはなにか?ということは自分に問いましたね。自分の好きなものを作りたいし、自分が高揚したり、感情移入できるものを作りたいという気持ちは根本にあるんだけれど、ここにきて、リスナーとかオーディエンスはバンドに何を求めてくれてるのかとか、何が惹きつけているのかというのを自分でも考えるときがあって。このアルバムは、その答えだと思うんですよ。だから、ファンへの感謝の気持ちがすごくこもっていますね。

――なるほど。

ホリエ:
もっと実験的に、いましかできないことをバリバリ試して、結果ファンを置き去りにすることはしたくなくて。『LINEAR』は自分たちの聴きたい音楽、そこに近いものを作るという気持ちがあって、『Immortal』では、どうあるべきかってまたライヴに回帰したところもあるんです。だから『Nexus』はその進化形というか、打ち込みとか後から加えるシンセとかで表現していたものが、この4人になったら生身で表現できるんだぞって。僕がひとりでギター3本を重ねてもなかなか広がらなかった世界観が、純くんのギター1本で全然違う。はみ出すんだけれど、自分のイメージにはなかった世界を作り出したりとか、それはバンドとしては普通のこのなんだろうけど、僕にとっては新しい。

大山:
おもしろいことに、4人になって音数は減っていたりするんですよね。ライヴでも、PAさんに「フェーダーをいじる必要がないくらい自然」と言われたりしました。

――その楽曲の生々しさに合わせて、ホリエさんのリリックについてもよりダイレクトになっている印象があります。

ホリエ:
「蝶の夢」は鬱々とした感じが曲から出てたから、危機迫る感じ、というように、音からイメージする歌詞が多かったです。自分というものをちょっと離れて見るというか、自分はこういうことを言わなさそうだな、歌わなさそうだなということをあえて書いてみたり。「Lightning」では弱さというのを出していますね。そういうものも人間の一部であって、ありにしてみたっていうか。

大山:
ちょっとしたヘタレだよね(笑)。いままでそういう曲はなかった。

ホリエ:
ヘタレは好かん!みたいなことが多いので。友だちがくよくよしていてもなぐさめない(笑)。自分で立ち上がらないでどうする!みたいな曲が多かったと思うんですけれど、この曲ではなにかにすがりたい、そういう心境を描いていますね。

――その変化は突然訪れたんでしょうか?

ホリエ:
5年前にひなっちが入ったときにも変わったんです。それまでは完璧主義的なというか、自分の思いどおりになんとかして持って行きたいという気持ちがあったけれど、自分のイメージが壊されていく、越えていくのが楽しくて、これだからバンドはおもしろいという。それがさらにいままた自分のなかで変化して、それが詞とかメロディの面にも現れたのかな。

――そして言ってみればリスナーとなにかを共有したい、というトーンが今作からは強く感じられます。

ホリエ:
リスナーを意識するというのは前からあって、伝えたいという気持ちは作品を追うごとに強くなっていました。いまは根本に感じるバンドの絆というものからスタートして、さらに広がっていっていると思う。リスナーとの繋がりだったり、もっと広げると、いまを生きているというだけで繋がっているような、そういう気持ちを歌にした曲もあって。

――ラストの「ネクサス」にも描かれていますけれど、この現代で誰かと運命をともにしているという感覚は、普段の生活でも肌で感じられたりすることもありますか?

ホリエ:
めったにないけど、感じるときもあって、そういうときってすてきだなって。もっとたくさんのひとがそういうことを気づけたらすてきだなと思います。

――そうした懐の深さも含めて、改めて、『Nexus』にはロック・バンドとしてのしっかりとしたたたずまいというのが作品全体の手触りとして感じられます。

ホリエ:
"王道"を作ったという気はしますけどね。これが2000年代の王道な気がします。ロックでもいろいろあるけれど、パンクだったりギター・ポップだったり、そういうものをジャンル分けせずに全部通り越してロックというなら、このアルバム。ロックのマスターピースだと思います。

大山:
10年後くらいにそういうふうに紹介されたいですね。2000年代の日本のロックを代表するアルバムはこれだ!って。そのくらいのものが出来たんじゃないかと思っています。



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