昨年は、オムニバス・アルバムとベスト盤2枚の同時リリースなど動きはあったものの、それらを聴いて、ますます新作が待ち遠しくなった人も多いだろう。 eastern youth待望の新作『歩幅と太陽』は、生きることをシンプルに肯定してくれるようなエネルギーを放つアルバムとなった。結成21年目にして、ますます聴く者を激しく突き動かす魅力を持つバンドの今の心境を、フロントマン・吉野寿に聞く。

Interview & Text : Eriko Ishii
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)


■eastern youth 吉野寿 インタヴュー

──新作、いいですね。思いきり夏のアルバムじゃないですか?

吉野 :
そうですね。夏っぽい感じにしたいなと。夏に(アルバムが)出るのが久しぶりだし、"やった"と思って。


──夏はやっぱりうれしいですか。

吉野 :
うん、だってエネルギーに満ちてるし、乗り越えるのに力が必要な季節でもあるし。秋や冬はどっか内向的な感じがするけど、夏はもっとバーッとエネルギーが渦巻いてるから。昔は特に、"なんせアルバムは夏に出なきゃダメなのだ"っちゅう気持ちでやってましたね。たぶんね、夏で動いてるんですよ、世の中は。


──世の中は。知らなかった(笑)。

吉野 :
夏中心で動いてるんですよね。はっはっは! ……でもそういうのもだんだんどうでもよくなってきた。やってるうちに、自然に任せて自然のサイクルで録っていくと、だいたい1年半に1枚くらいのペースになるし。まぁ気にしないでやっていこうと。


──でも今回は、それでも夏なのだ! っていう踏ん張りがある。

吉野 :
あー、夏っていうよりも、どっか……ひとつ吹っ切ったんでしょうね。少し抜けた感じはするかな。今までに比べて、ちょっと手応えはあるっていうか。やっとこんな感じになってきたっていうかね。要するに、曲のアプローチで、前だったらバンドのにおいとかイメージを考えて "これはちょっと無理かな"とか思ったりもしたんですけど、もうそういうことも思わなくなった。どんなアプローチでも、どうやっても俺たちっぽくなる。それは信頼できる面でもあるし諦めたところでもあるんだけど、音楽シーンとか流行とか、もうどうでもよくなったんでしょうね。いよいよ。


──いよいよ(笑)。以前は試行錯誤していたんですか。

吉野 :
影響はされてなかったけど、でも、"こんなことやって嫌われたらどうしよう?"とか、まぁちょっと考えながらやりますよね。そういうのがいよいよどうでもよくなりしまて。俺たちが「1、2、3、4」でドーンとやって、いいぞ、力があるぞと思えれば、もう流行ってなくても大丈夫だと。だから自由になったんでしょうね、そういう部分では。


──最近はライヴでも「我々も旬が過ぎているようで」とか平気で言ってますよね。すごいこと言うなぁと。

吉野 :
いよいよヤバそうな雰囲気もないわけじゃないけど(笑)。でもいいんです、本当のことを言ったほうが楽だし。


──そこで気が楽になるっていうのも、わからなくはない気がします。

吉野 :
そうですね。考えたんですよ。すごく、本当は……苦しんだっていうと大袈裟ですけど、やっぱ苦しかったですよ?今も苦しいし。で、考えたんです。どうすべきなのか、どうあるべきなのか、どういうふうに生きていくべきなのか。答えはすぐに出ないし今も出てないけど、ちょっとずつ、自分にとってこだわる必要のないものと、こだわらなきゃいかんものを選別してきたんですよね。わかりやすいたとえを出せば、今の音楽シーン。キッズが何を求めてんのかとか、もうどうでもいい。それが果たして自分のやりたかったことなのか?と思うと、やっぱり違うから。だったら本当に自分がつかんで見てきた景色、俺は今この時点ではこう思うんだっていうものを、隠さず、体ごとぶつかっていくというか。もうそういうことしかできないぞと。


──体でぶつかると言っても、相手に向かって全力で走るみたいな曲調じゃないですよね。むしろグッと黙って立ち止まっているような。

吉野 :
本質的なものは変わってないけど、アプローチの仕方は変わってきた。音も減らしてますね。やっぱ引き算で考えてます。足すのは簡単で、トラック増やせば物質的な分厚さは出るんだけど、それだけでは人間の持ってる、有機的なものっていうのが見えづらくなってくるから。あと、音の隙間に大事なものがあると思うから。


──パンク・バンドがそうなっていく変化を、よく"枯れてくる"とか"滋味深さが増す"とか言いますけど……。

吉野 :
"レイドバック"ってね(笑)。べつに渋いものが好きになったわけでもないけどね。ただ、やっぱ、より生々しいもののほうがいいとは思ってる。ごまかすなってことですよね。格好つければつけるほど薄っぺらくなって格好悪くなるんだし。俺がやりたい音楽って、もっと生きてる実感に直結してるものだから。人間が人間のためにやるものだし、人間をいろんな形で表現するのが芸術だと思ってるから。


──そこで今出てきた言葉が、肉屋のばあさんや放置自転車までが太陽みたいに輝くと歌う1曲目で。これはどんな感覚なんですか。

吉野 :
このとおりの気持ちですよ。何もかもが力を持って輝いてる。一般的に輝いてるとされるもの、たとえばアイドルとか芸能人とかは表面的に光ってるだけで、ただの発光体、飾りなんですよね。俺が言いたい"輝く"ってこととは違う。これは、場末の焼き鳥屋みたいなとこでずっと考えてたことで。駅前の、むき出しの店で、すぐそこがバスロータリーなんですね。人の往来がずっと見えるし、その焼き鳥屋にはもう昼間からクソみたいな人が大勢集まってるわけ。俺もそうなんだけど(笑)。でも、そこでなんか……すごくエネルギーを感じたんですよね。人に、人たちに。歩いてる人たちには虚栄心もクソもなくて、ただもう汗だくで。バスからどんどん人が出てきてじゃんじゃん乗って、みんな愚痴言ったり泣き言言ったり、喧嘩したり慰め合ったりして。全部……なんて冴えないんだと思うけど、なんてすばらしいんだと思ったんですね。


──生きている人々、そのもののすばらしさ?

吉野 :
"生きてるってすばらしい!"って言っちゃうと語弊があるけど。もっと雑踏のエネルギー。雑踏っちゅうのは、たくさん人がいるけど、何かの目的で寄り合ってない。ただひとつの条件の中に共存してるだけで、ひとりひとりは全然バラバラなわけ。でも見えないところで影響し合ってて、その雑踏の持つエネルギーが地球をぐりぐり動かしてて。すばらしいと思ったし、俺も雑踏ぶんの一でありたいなって思いますよ。それこそが生きる道だっていうか。そういうことを、形にしていきたいんだと思う、俺はね。




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