前作から1年4か月ぶりのアルバム『6』を完成させたSOIL&"PIMP"SESSIONS。今作は、ライヴ・バンドとして忙しく活動する中から生まれた作品であり、その経験や実感が隅々まで行き渡ったアルバムといえるだろう。椎名林檎、Jamie Cullumといったシンガーをはじめ、さまざまなゲストを迎えたこの実験作について、タブゾンビとみどりんに聞いた。

Interview & Text : Yu Onoda
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)

■SOIL&"PIMP"SESSIONS インタヴュー

──1年4か月ぶりの新作アルバム『6』が完成したわけですが、この期間は振り返ってみていかがですか?

タブゾンビ :
どうして前作から時間が空いたかと言えば、それだけ、このアルバムに賭けていたし、ツアーの合間に綿密に録っていたんですね。しかも、録ったものに納得がいかなくて録り直したり、そうこうしているうちに1年4か月が経ってしまったんです。


みどりん :
最後まで曲順を詰めたり、妥協もいっさいなく、いいものが出来たっていう自負もありますし、達成感もありますね。


──エンジニアを7番目のメンバーと考えるくらい、音の鳴りを重視しているソイルですが、今回のエンジニアに関しては?

みどりん :
前作ではライヴ感をうまくパッケージングするため、日下(貴世志)さんにお願いしていたエンジニアを、今回はこれまでやっていただいていた池田(新治郎)さんにお願いしたんです。エンジニアさん自身もいろんなレコーディングを経て、僕らは僕らで成長して、その経験をもとにレコーディングを進めていくおもしろさがあったし、前々作(『PIMPOINT』)とは、まったく違った鳴りになっていると思うんですよ。


タブゾンビ :
今のクラブ・ジャズのサウンドって、俺からするとどれも同じに聴こえるんですよ。だから、そういうものとは違って、音を加工する以前にその音をどう録るか。その録り音勝負というか、そういう録り方がいちばん気持ちいい聴こえかただと思っているので。


──そして、今回のアルバムは初めてバンドの外部からヴォーカリストをフィーチャーした作品で、椎名林檎さんと英国の新世代ジャズ・シンガー、Jamie Cullumが2曲で歌っていますよね。

タブゾンビ :
そうですね。僕らはインストにこだわっていたわけでも、インストをやり尽くしたわけでもなく、デビューしてから6年の経験と出会いのなかで、椎名林檎さんとJamie Cullumに会って、今回、自然な流れで「次はヴォーカルものはどう?」っていう話になったんです。「MY FOOLISH HEART」はインストと林檎さんをフィーチャーしたヴァージョンの両方を収録しているんですけど、この曲は(ピアノ、キーボードの)丈青が何年か前にインスト・ヴァージョンを作ってきて、今回収録を決めた段階で「そういえば、この曲、歌を入れたかったんだよ」って話になったんですけど、僕らが最初にフィーチャーするヴォーカリストは林檎さんと決めていたので、彼女に歌ってもらったんですけど、インスト・ヴァージョンの出来もすばらしかったので、両方入れることによって、お互いの良さが引き立つんじゃないかと思ったんです。


──(サックス奏者)Oliver Nelson作曲でMark Murphyのヴォーカル・ヴァージョンがおなじみの「STOLEN MOMENTS」でJamie Cullumが歌うことになったのは?

みどりん :
もともと、Jamieが僕らの音楽を好きでいてくれてるっていう話を聞いていて、ある時、DJのGilles PetersonがイギリスBBC放送の企画ライヴで、ぼくらとJamieを引き合わせてくれたんですね。で、その後、日本でも会ったり、時間をかけて進行を深めていったんですけど、その日本で一緒にやったのが「STOLEN MOMENTS」だったんです。


──1曲目の「SEVEN」では世界的なターンテーブリスト、DJKENTAROさんがサウンド・コラージュで参加していますね。

みどりん :
僕が彼とお会いしたのは、僕がやってるピアノ・トリオ、J.A.Mのシンガポールでやったライヴで、彼もその時の出演者だったんですけど、最後に一緒にセッションをやったり、あとは"nbsa+×÷"っていうイヴェントでも一緒になったり、顔を合わせる機会が何度もあって。で、「SEVEN」では道に関する詩があって、それは(アジテーターの)社長が朗読しているんですけど、そのバックはKENTAROくんにやってもらいたいっていう提案が元さん(サックス奏者の元春)からあって、お願いすることにしたんです。それで、"道"からどんどんいろんなものが生まれてくるニュアンスをスクラッチで表してもらいました。


──それから3曲目の「PAPA'S GOT A BRAND NEW PIGBAG」は80年代のパンク・ファンク・バンドのカヴァーですが。

タブゾンビ :
この曲を取り上げるアイディアはGillesから出たんですけど、偶然にも僕と元さんが参加したTHE LOWBROWSの曲がPIGBAGの同じ曲だったりして、この偶然はおもしろいから今やらなきゃって思ったんです。下手うまなPIGBAGのオリジナル、そうとうにカッコイイTHE LOWBROWSヴァージョンと聴き比べていただければと思います。


──それ以外にも短くて濃厚な「DOUBLE TROUBLE」やLee Morganを彷彿とさせるジャズ・ロック「POP KORN」、メロディが秀逸な「PARAISO」、ディスコ・パンクな「MIRROR BOY」やプログレッシヴ・ロックに通ずる「殺戮と平和」など、収録曲はヴァリエーションが豊かで、メンバー6人の懐の広さや深さを意識させられる内容だと思いました。

みどりん :
今回のヴァリエーションに関しては、みんなの「今こんなの聴いてるぜ!」っていう自分内ブームが色濃く反映されているように思います。


タブゾンビ :
あと、デビューからの6年で、海外に出て、世界中のいろんな音楽を吸収したり、ライヴ経験を重ねた成果なんじゃないかなって。そういう意味でバンド内はかなりいい状態にあると思います。


────バンド内の結束が固くなって、さらにそうした状態で作品のクオリティを上げていくとなると、ともすれば難解な方向に向かう可能性もあるわけですけど、今のソイルはそういうことになっていませんよね。

タブゾンビ :
そうですね。根本的な部分で、どうしてソイルがこういう音楽をやっているかと言えば、よくあるジャズって、どんどん難しくなるじゃないですか。でも、そんな長いソロは聴きたくないし、オナニー音楽はイヤだから、そうじゃない格好いいセッションをしようってことで集まって始まってるんですよ。だから、オーディエンスも楽しめて、僕らも楽しめるっていう、そういうスタンスにブレはないと思ってますね。


みどりん :
僕らはプレイヤーであると同時にいちリスナーでもあると思っていて、そのリスナーとしての耳は大事にしているので。


──その一方で、今の日本の音楽シーンは商業的に低迷している現状がありますよね。

タブゾンビ :
いま日本の音楽は商業的な音楽とそうじゃない音楽に二極化してて、リスナーも音楽を必要としている人と必要としてない人にはっきり分かれていると思うんですけど、リアルに音楽を求めている人たちの作品は世界で十分に通用すると思うし、現に国内で評価されていなくても、海外で評価されているアーティストはたくさんいますよね。そういう意味で日本の文化は海外から注目されているし、国外から入ってきた音楽をミックスして新しいものを生み出すことができる日本の環境は恵まれていると思うんですね。その点は誇りに持っていいと思うし、音楽を掘り下げて聴いているNew Audiogram読者が聴いているような音楽が普通に広がっていく世の中だったらいいなって。だから、ソイルの意識としては、アンダーグラウンド・シーンから諦められているメジャー・シーンをいい音楽で崩して、切り込んでいきたい。




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