昨年のサマーソニックに続いて、今年はフジロックに出演とデビュー・アルバムがリリースされていないにも関わらず、熱狂的な支持を得ているフランス出身の 2人組、THE SHOES。ロックの高揚感とダンス・ミュージックの陶酔感を兼ね備えたサウンドは、エレクトロというジャンルの可能性と枠組みを大きく変える予感を抱かせる。そして、ついに完成したアルバム『SCANDAL!』から放たれる強力なグルーヴと心が騒ぎだすポップ感が、その予感を実感へと一瞬にして変えてしまう。まさにDAFT PUNK以来の衝撃がここに!

Interview & Text : New Audiogram
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)

■THE SHOES インタヴュー

──フランスのランス出身ということですが、どんな街なんですか?

Benjamin Lebeau :
シャンパンで世界的に有名なんだ。


Guillaume Briere :
そう、まずはシャンパンだね。フランスの北東部にあるんだけど、すごく退屈な小さな街だよ。シャンパンで財を成した人もいれば、貧しい人もいる。俺たちは子どもの頃から後者のクラスに属してたけどね(笑)。やることがないから音楽をやって、退屈な日常を紛らわせていたんだ。実際、ランスからは俺たち以外にも、そういうヤツらはいっぱいいるしね。YUKSEKとBRODINSKIもそうだよ。


──では、ランス独自の音楽シーンもあったわけですね。

Guillaume :
シーンができたのは、わりと最近だね。昔はダメなロック・バンドばっかりだった(笑)。YUKSEKが有名になってからはエレクトロ・ミュージックってこんな風にやればいいのかって、わかったんだろうね。俺たちもできるじゃんって、やり始めた若者が増えていったんだ。でも、俺たちはYUKSEKと同じ世代なので、彼のやり方をまねたわけじゃない。そこのところは、ちゃんと書いておいてくれよ(笑)。街にあるいくつかのスタジオでエレクトロ・ミュージックをやってるヤツらとはいつも顔を合わせるし、自然とつながりができてきて、シーンが生まれたのかもね。


──ダンス・ミュージックに目覚めたきっかけは何だったんでしょう?

Guillaume :
ドラッグ(笑)。まあ、これは冗談だけど、ダンス・ミュージックにはそんな覚醒的な作用があるよね。クラブでの一体感や高揚感は、まさに病みつきと言っていいんだからさ。


──自分たちで音楽を作り始めたのはいつくらいからですか?

Guillaume :
10歳のときからBenjaminと友だちで、その頃からずっと一緒に音楽を作っている。エレクトロ・ミュージックって、作るのにバンドみたいに高いコストを必要としないんだ。スタジオもいらなければ、ミュージシャンもいらない。若い頃は誰だってお金がないだろ?だからエレクトロ・ミュージックは最適なのさ。それに自分たちの好きなことができる、まさにインディペンデントな音楽なんだ。


──今年のフジロックでもそうでしたが、あなたたちはDJとしても活動しています。DJが音楽活動のスタート地点だったんでしょうか?

Benjamin :
ミュージシャンが先だね。最初は、みんなそうするようにギターとかベースをやっていたんだ。パンクとかグラムっぽい音のバンドを組んでいたんだ。。だから俺もGuillaumeもギターとベースができる。バンドが最初で、その後にエレクトロ・ミュージックという順番だね。


Guillaume :
FILMっていう名前のバンドだったんだ。自分で言うのも何だけど、これがけっこうフランスでウケててさ。国内でライヴをかなりやったし、CMの音楽を作ったりもした。有名にはなったんだけどあきちゃって、THE SHOESを結成したわけなんだ。


──LADYHAWKEにSANTOGOLD、THE VIRGINS、GOLDEN SILVERS、THE MUSIC、HADOUKEN、LATE OF THE PIERなど、ここに挙げたのはごく一部にしかすぎませんが、ずいぶんとリミックスを手がけていますよね。ダンス・ミュージックはもちろん、ロックも多いです。やはりバンドをやっていたから手がけやすかったりするんでしょうか?

Guillaume :
そういうわけじゃないけど、ヴォーカルレスのダンス・ミュージックよりも、歌があって歌詞があるものの方がメロディとかハーモニーを変えたりできるのでおもしろい。楽しんでやれるから、自然と増えてきたのかな。


Benjamin :
そう、歌詞のパートだけを残して、あとは違うものに差し替えてみたりね。ロックからの依頼が多いのは俺たちがやれば、ポップなものを作ってくれると期待しているからだと思うよ。


──リミックスで得た経験とは?

Guillaume :
いいこともあるし、悪いこともある。リミックスをやると自分たちのオリジナルのアイデアを人に渡してしまうことになるからね。やりすぎると、"ああ、あれはやっちゃたよな、もう"ということになるんだ(笑)。だから『SCANDAL!』の制作前はやらないようにしていた。去年だけで40曲くらいやってたからね。アイデアをためてたんだ。


──そのリミックスについて、ポリシーみたいなものはありますか?

Guillaume :
1ユーロでも多く、もうけること(笑)。まあ、それもあるけれど、よくない曲だったらいじりがいがある。いかに良くするのかが、リミックスのおもしろいところでもあるんだ。自分の好きな曲、いいなと思える曲はさわりようがなかったりするから、リミックスのしがいがない。でも、悪い曲がどれとは言えないよ(笑)。


──APHEX TWINも以前に同じようなことを言ってました。

Guillaume :
彼もわかってるな。頭がいいよ(笑)。


──アルバム『SCANDAL!』もそうですが、あなたたちの音楽はダンス・フロアだけでなくライヴハウス特有のノリも持ち合わせていますよね。

Guillaume :
俺たちにはふたつの面があるんだ。ポップだったりメロディアスだったりするのはライヴハウスに向いている。クラブではメロディアスであることはあまり重要視されない。俺たちはライヴもDJもやるから、そのふたつの特徴をわかっているんだ。だから踊れて楽しいものを作れるんだよ。大きな会場だと、ドラマーをフィーチャーして、俺たちもギターとベースを持って、ライヴっぽいセットをやるんだ。


──では『SCANDAL!』も、そうしたクラブとバンドの意識をうまく使い分けながら作ったんでしょうか?

Guillaume :
う〜ん、それは全然気にしたことがないな。時によって感情が変わるように、音楽にも自然にアプローチしているからね。ロマンチックだったらそういうタッチになるし、怒りがあったらアグレッシヴになる。ルールも制限もないよ。


──『SCANDAL!』には、あなたたちの名前を日本に広めた「KNOCK OUT」と「LET'S GO」も収められています。

Benjamin :
うん。「KNOCKOUT」はTHE SHOESで初めて作った曲なんだけど、最初はインストだったんだよね。3か月くらい経ってから、ヴォーカルを乗せてみたらいいんじゃないということになって、今のかたちになった。そのとき、ボクシングに興味があってさ。「KNOCK OUT」という曲名にしたのと、"1234"というカウントを入れてみたんだ。


Guillaume :
「KNOCK OUT」はもともとはFILM用だったんだよな、確か。「LET'S GO」は、今日みたいに全然寝ていない状況で朝の7時から、Benjaminがハイになってシンセを弾きながら、"LET'S GO"って繰り返しているうちに曲になった(笑)。1時間ほどでできたんじゃないかな。"LET'S GO"って言葉は世界共通で英語がわからないところでも理解してくれる。みんながわかる言葉で曲を作る。それが成功への秘訣でもあるんだ(笑)。


──その「KNOCK OUT」は80kidzによるリミックスも収められています。

Guillaume :
このリミックスが彼らとの出会いだったんだ。すばらしい、スぺシャルな出会いだなと思ったよ。雰囲気なのかメロディなのかはわからないけど、すごく日本っぽいと感じたんだよね。今はもう友人だし、彼らは親切だし大好きだよ。フジロックで初めてライヴを観たんだけど、生のギターも入っていて、それがすごくロックっぽくもありエレクトロぽくもあった。ダンスとインディ・ロックの融合が彼らなりの解釈でうまくできていると思うよ。


──「BABY BABY」のようにレゲエへのアプローチが見られるのは、アルバムの幅が広がってとてもいいと思います。

Guillaume :
もちろん昔から好きだったんだけど、正統派ではないよね。レゲエをエレクトロニックなアプローチで作った。デジタルだし、新しい感覚だと思うよ。


──「SEVEN AM」はシューゲイザーからの影響がうかがえる仕上がりになっていますね。

Guillaume :
古い曲で本来はFILM用だったんだ。でも、聴き直してみたら、アルバムに合うなと思って入れてみた。アルバムはスピード感があるから、ちょっとソフトなタッチでクールダウンしてもらって、次のビッグ・チューンにつなげたかったんだ。美しい歌だよね。


──そのように『SCANDAL!』はバラエティに富んだ内容となっていますが、コンセプトありきの作品だったのでしょうか? それともこれまでのトラックを集めた作品のどちらでしょうか?

Guillaume :
う〜ん、難しいな。コンセプチュアルではないし、大きなストーリーがあるわけでもない。ただ、1曲1曲集中して作ったものを並べていった結果、ストーリーができたと言えるね。


──デビュー・アルバムも完成して、ツアーなどこれからますます精力的に活動を展開していくと思いますが、そんな中でもこれだけはぶれないポリシーはありますか?

Guillaume :
ライヴで演奏できるトラックを作っていくことかな。今さらサラリーマン的な仕事はできないしね(笑)。ほかのアーティストの曲を聴いてインスピレーションを受けながら、これからも音楽を作り続けていく。でも俺たちはなまけものなところもあるから、すぐにはできないけどね(笑)。




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