Interview & Text : Dai Onojima
Photo : Kazuma Horiguchi (Photo is K)

■Ken Yokoyama インタヴュー・中編
――横山さんがHi-STANDARDでやってきたことって、ひとつに楽しくやろうよっていう姿勢だと思うんです。パンク・ロックであっても。でも今回横山さんは怒りをぶつけている。その間に何があったんでしょう。

Ken Yokoyama :
そうですね。確かにHi-STANDARDではそういう姿勢はあったんですよ。それがお客さんに伝わってHi-STANDARD以降のバンドが、パンクってこうなんだっていうことで、いっぱい肯定のパンクが出てきたんですね。それでみんなのどかな風景のことを話して。みんな優しい気持ちの歌を歌って。みんな恋を歌って。そうじゃないバンドもいっぱいいますけど、それがメロディック・ハードコア、いわゆるメロコアの、日本のメロコアのデフォルトにほぼなっていて。で、作ったのは誰かというとHi-STANDARDじゃないかって言われたりするんですよ。じゃあそれをぶっ壊したいなっていうか(笑)。


――自分たちに影響を受けた人たちがたくさん出てきたけど、それは違うって思っちゃったと。なぜそう思ったんですか?

Ken Yokoyama :
だってパンクが手を手をとってどうするんですかって感じですね(笑)。パンク・バンドのライヴで目の前でね──そいつらがパンクかどうかも本当はわからないけど、パンクと語っているバンドの前で──みんなで肩組んでマイムマイムして、それなんだっていう。ずーっと思っていたんですよ、10年間。でもそれを10年間言えずにいたんですね。作ったの自分だしなっていう。なんだけど、やっと言えるようになった。そういった現象にちょっと一石投じたいなと思いまして。


――いままでの横山さんのアルバムというのは、そういうところとはもっと違う次元で個人的なモチベーションで作っているところもあったと思うんですよ。今回あえてKen Bandでレコーディングして、こういう強いアルバムを出してきたのは、何かを言いたいっていう気持ちが高まってきたんだろうなと。

Ken Yokoyama :
そうですね。そこで一番大きなきっかけになったのは、去年の夏の"ROCK IN JAPAN FESTIVAL"。


――ダイヴ禁止令。

Ken Yokoyama :
はい。それがやっぱりすごく。ちょっとまてよ、ロックっていうのはそもそもさあ、っていうところに自分を戻してくれましたよね。それまでなんとなく、まあいいかって流していたところを、ロックという名の下で楽しみ方に規制を敷かなきゃならないっていう、そういった事実とか現象に対して、ちょっとこのまま進めちゃったら、これがのちのち、ロックってこういうものなんだとか捉えられちゃったら、つまんないぞと思って。


――自分たちが責任の一端を負っているという自覚があったんですか。

Ken Yokoyama :
そのときはなかったんですよ。自分を棚に上げることになっちゃうかもしれないですけど、自分だけはカッコよくやっていたつもりだし、自分の言葉で話してきたつもりだし、自分のライヴでしか味わえない空気をぼくも味わってきたつもりだし、ライヴってそうだと思うんですよね。お客さんがいて、ぼくがいて。やっぱり化学反応だと思うんですよ、お客さんとの。その場にたまたま居合わせた数百人、数千人の人、ひとりひとり違ってもじつは着地点が違ったぐらいのほうが、ぼくは面白いと思うんですよね。それがぼくの望むライヴなんですよ。そういうところがカッコいいと思ってずっとやってきて、ぼくだけはロックの原風景を失ってないつもりだったけど、他方、フェスティヴァルという現場では、こんなことになってしまっているっていうのが、もう憎たらしくてしょうがなかった。


――極端な言い方をすると自分たちがここに出るべきじゃないんじゃないか、ぐらいに。

Ken Yokoyama :
はい。思いましたね。葛藤はありました。でも(フェスの)上の人と話をして、わかったちょっと落ち着いて一回出てみようっていって、出て、そこからまた再スタート。あとは感じたとおりにやろうと。終わってみたらそのことに対してステージ上から否定的な意見を言ったのはぼくしかいなかった。雑誌社がやっているフェスティヴァルだから、みんなそことの関係も崩したくないだろうし、大きい舞台だから。ぼくだって大きい舞台だし、知らない人に聴いてもらえるいいきっかけであることに間違いないから、貴重な場なんですよね。でもそれよりも、ロックとしてこんな不様な姿を見せるなんて、という気持ちのほうがでかくなっちゃたんですよ。


――戦い方っていろいろあるから、そこで出演を拒否してもいいし、あえて出て行って、その場でみんなにモノをいうという戦い方もある。横山さんは後者を選んだと。

Ken Yokoyama :
はい。実際ぼくの知っているバンドでもそういった規制に対して反発してる連中はいるけど、出ないとそこで止まっちゃうじゃないですか。だったら、ぼくは出ることを選ぶ。そっちのほうが自分の性に合っている。いまやりたいことなんでしょうね、それが。


――多分横山さんの苛立ちっていうのは、自分がやってきたことはひとつの提案というか、俺はこういう風にやっているんだよ、っていうある種の表明に過ぎなかったのが、みんな影響されて同じようなことをやり始めちゃったことに対する苛立ちなんじゃないかって気がします。パンクは楽しくやろうぜっていう考え方もあっていいし、パンクは反抗だぜっていう奴もいていい。自由にいろんな奴がいて、それがパンクなはずなのが、いつのまにか画一的なものになっちゃったのが、苛立ちの原因じゃないかという気がするんです。

Ken Yokoyama :
そうですね。そうなんですよ!


――それがフェスみたいなでかい場だと余計に感じられちゃう。

Ken Yokoyama :
そうです。本当に。どうやって踊りなさいっていうことまで画一的に規制される。それがそのままデフォルトになっちゃうのが嫌だったんですよね。


――今回の歌詞を読んでいると、ある種のロックに対する怒りがある。たとえば"せいぜいお前も安全なロックで、ガキを勇気づけてやれよ"とか、"カッコ悪い同類だと思われたくない、お前がロックだと? それならオレはロックじゃない"とか、かなり激しい言葉が並んでる。やはりいまのロックって違うじゃないかって思いがあるわけですよね。

Ken Yokoyama :
ありますね。よくロックやっている人って、近所のおじさんよりも他国のほうに住んでいる同じマインドを持った人のほうが近いっていうような言い方をするじゃないですか。いまはもしかしたら、同じロックっていって近所に住んでいる奴よりも、他国に住んでいるおじさんのほうがぼくと近いかもしれないです。そんくらいロックってもう、ただの記号になってしまったって気がするんですよ。


――ロックが好きですと素直にいえない感じになってしまった。

Ken Yokoyama :
いまの若い子がロックって言ったって、そこにもともとは精神性があったなんて思わないですもんね。時代が変われば言葉の意味も変わっていくのも分かるんですけど、そこがすごい悔しかったんですよ。ぼくはパンクとかロックに育てられて、ここまで来たと思うんです。いろんなことを教わって、40歳まで育ててもらったんですよ。それがなんか、どんどん捉え方が落ちていくのは、悔しいんですよね。


――ソロ・アコースティック・ツアーでサンハウスの曲をやったけど全然ウケなかったって、Twitterで呟いてましたよね。サンハウスこそ親に隠れて聴くような、ヤバいロックの匂いがプンプンするじゃないですか。そういうアピールも横山さんにはあったのかと。

Ken Yokoyama :
あの晩は健が歌った日本語曲のなかで一番暗い曲にしか響かなかったと思うんですよ(笑)。そう、確かにロックっていうのは聴いているだけで不良だったわけですよね。演者にしても、ロック以外できない、社会になじめない人たちがやっていたわけですよ。そういった人たちがやるのがロック……とはちょっとあまりにも浅い言い方になってしまいますけど、いまはなんか、就職しようかロックやろうか、なんて。本当ふざけんのもいいかげんにしなさいっていう気がするんですね。


――社会と接続するための唯一の手立てがロックだったっていう人たちですよね。それがなかったらもう完全なアウトローになるしかないという。

Ken Yokoyama :
もう本当、何して生きているんでしょうねっていう。少なくてもぼくが知っている先輩はそうですね。柴山俊之さん(サンハウス)も、たとえば内田勘太郎さん(憂歌団)とかSIONさんとか、あの人たち、本当音楽やっていなかったら何やってたんでしょうね。そういう人たちが、言葉が汚いキレイだとか、格好が汚いとかキレイとか、表現がユニークだとかそうじゃないだとか、そういうところじゃなく、そういった境遇にいる人たちが鳴らしたのがロックだったと、ぼくは思うんですね。ぼくが音楽を志したときに日本のロックのシステムっていうのはだいぶ出来上がってきていたから、当時の先輩たちのところにぼくは入りやすかった。それでも腹くくりましたからね、やっぱり。もうこれで俺はもう普通の……。


――堅気には戻れない。

Ken Yokoyama :
本当、それくらいな感じです。


――そういう覚悟を持ったのは、横山さんが最後の世代かもしれないですね。

Ken Yokoyama :
もしかしたら。


――Hi-STANDARDの打ち出したメッセージで一番大きかったのって、そういう特殊な人たちだけがロックじゃないんだよって、ことだったと思うんです。もっとカジュアルな生き方もロックなんだよって。でも全部が全部そうなっちゃったら、ちょっと抵抗があると。

Ken Yokoyama :
それで今のロックを否定して音楽市場が冷え込んだらまた問題なんですよね(笑)。


――そんなことまで考えるの?

Ken Yokoyama :
そんなことないです! どうせぼくが言ったって止まりはしないんです。ロックっていうものの失墜が。でもぼく一人ぐらいはそんなこと言ってもいいかなって気はするんです。


――言わずにいられないわけでしょ?

Ken Yokoyama :
はい。そうですね。


後編に続く!


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