コンピレーション『極東最前線2』スペシャル・トークセッション vol.1
吉野寿 (eastern youth) × 山田将司 (THE BACK HORN)
2枚組全29曲というボリュームを誇る『極東最前線2』。その発売を記念した吉野寿の対談シリーズ、続いてはTHE BACK HORNの山田将司(Vo)を迎えてお送りします。オルタナやパンクである以前に「歌うたい」として偽らざる「人間の心」を歌い続けてきた2人が、ヴォーカリストならではの視点を語る。
極東最前線での共演は、2003年の9月ですよね。
俺、栄純(菅波栄純、THE BACK HORNのG)とは結構前から知り合いで。俺がたまたま友達と焼鳥屋で飲んでたら、入り口んとこ何回も行ったり来たりして、ずっと店ん中見てる奴がいて (笑)。「そんなに見てんなら入れ」っつって入ってきたのが栄純で。そん時は俺、全然知らなかったの。でもバックホーンって名前聞いて「ふーん、そうなんだ」とか言ってるうちに、1年も経ったらすんげぇ有名になってきて
2000年とかですよね。じつはあん時、俺も栄純と一緒にいて。確かWATTSでライヴだったんですよ。その後に「あ、吉野さんがいる」つって2人でチョコチョコしてたんですけど、俺は勇気を出せずに(笑)
そこからまぁ普通に飲むようになったりして「じゃあ極東、なんかのタイミングで誘うわ」「絶対ですよ」とか言ってて。でもなかなか実現しなくて。そしたら電話かかってきて「そろそろどうですか?」って(笑)
……なんの「そろそろ」だったんですかね(笑)。でもイースタンとはずっとやりたかったんですよね。昔からほんと大好きで。初めて聴いたのが99年くらいなんですけど、「歌は夜空に消えていく」を栄純に聴かせてもらって、どんどん好きになっていきました
歌うたいとして似たところがありますよね。歌の心が近いというか。
そうですか? へぇー。でもスタイルはけっこう似てるのかな。俺はギターと歌だから、バランスはまた違うと思うんだけど。でもなんか、嬉しいですね
今回のコンピを聴くと特に思うけど、ちゃんと歌を前に出すバンドが意外と少ないんですよ。だから余計思うのかもしれない。
あー、歌が出てないのは、今の音楽シーンのユニークなとこっちゅうか。それこそ最前線みたいな場所にいる人たちの特性だと思う。世界的に見てもインストのバンドが多いし、ボーカルを音として扱う人たちがすごく多くて。歌ってもいいし歌わなくてもいいっていうのが当たり前になってる。そういうのに比べれば、まぁ俺たちはオーソドックスな手法なんだけど
でも、そこにこだわりたいという気持ちはやっぱりありますか。
だってヴォーカリストだもんね。そりゃ歌うさ。山田なんか歌がなかったらあと踊るしかねぇだろう(笑)
でも歌いたいって思いますよね。歌の力っていうか、なんか信じてるものはあって。それがなかったらたぶん歌ってはいないと思うし
一番シンプルでプリミティヴな表現方法じゃない。身体ひとつで表現できるから
ただ、歌って、自分から出す表現だから普通に考えれば自己表現であるはずなのに、自己表現だけで終わるのはすごく寂しいんですよ、俺は。単純にいいって言ってもらえると嬉しいって気持ちがあるし、ただ出して終わりじゃ寂しい。確かに出す行為なんだけど……
その先にあるものがあるからね。その、出した歌によって関係性を築くっちゅうか、それをもって人と関わる。自分から出したものが人に渡った時に、その歌を通して俺とその人の関係性ができて。そのことによって成立する何かひとつの温度、みたいなものはあるよね。それはすごい大事なことで。それは俺も考える。そうしなかったら野っ原でひとりで歌ってりゃいいだけでさ
でも、そのために何が必要なのか、明確な答えってありますか? 皆にわかりやすい共通言語を選べばいいのかって言えばそうじゃない。
わかりやすく噛み砕いてあげるなんて、逆に相手にとって失礼でしょ。そうじゃなくて、わかってもらいたい、っていう気持ち。「俺はあんたに向けて歌いたい!」っていう感覚だと思う。それが難解なものであったとしても、その気持ちひとつでいいと思うんだ
うん、伝わるものって伝わりますよね。俺が吉野さんの歌を最初に聴いた時、すごい優しいものを感じたんですよね。表現としては激しくて少し痛々しかったりもするんだけど、すごい優しいなぁって感じて。そこが好きになったところだから
もし優しさがあるんだとしたら、俺が負けてきたからだと思うよ。負けないとわかんなかったことは多いし、負けたから歌えることもある。結局は自分の視点をどこに置くかだよね。俺はつねに地べたに置いときたいと思うの。弱者と言ってもいいけど、ちっぽけでもどうにかこうにか生きてる、人間の一番弱いところに自分の視点を据えておきたいっていうのはある。ある程度お金持ってる人たちの歌であるとか、ある程度センスがあってそこから先がわかる人たちのための歌とか、そんなフワフワしたとこに視点は置きたくなくて。もっとドシーンと地べたに置いときたいの。そこに俺は愛着を感じるし、自分もそうありたいしね
わかりますね。たぶん、地べたに視点を置いておくほうが、高いところから見るよりでっかいものが見えるはずで
単純に優しくなれるよね。負けっぱなしで人間失格でも、本当の意味では大合格っちゅうかさ。そういう人のほうが魅力があるし人として愛おしい。それこそが人間の色気というもんさ
THE BACK HORN OFFICIAL WEBSITE
http://www.thebackhorn.com/
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  1. 世界を撃て
  2. フロイデ
  3. 覚醒
  4. さざめくハイウェイ
  5. 白夜
  6. グラディエーター
  7. 人間
  8. 生まれゆく光
   
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