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eastern youth、toe、SAKEROCKという、2008年のイヴェント"極東最前線"での共演でも話題を呼んだ3組が再び共演を果たす"New Audiogram ver.4 -1102east-"。その開催に先立って、吉野氏、山嵜氏、星野氏に集まってもらいスペシャル鼎談を実施した。世代も方向性も違うものの、どこか似たにおいを持つ3人による話は、その出会いからそれぞれの活動の話へ、そして音楽という表現の話へとさまざまに展開。充実の対談の模様を前編、後編の二部構成にてお届けする。

Interview & Text : Ayumi Tsuchizawa
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)
NATV : Special Talk Session コメント・ムーヴィー
Information
New Audiogram ver.4 -1102east-への意気込みを
吉野さん、山嵜さん、星野さんの3人に語っていただきました!!
New Audiogram ver.4 -1102east-

DATE :2010.11.2 (tue)
VENUE : Shibuya O-EAST, Tokyo
ACTs : eastern youth / toe / SAKEROCK
OPEN : 18:00 / START : 19:00
TICKET : 3,990yen (tax in / +1drink order)

11月2日、17時より当日券を若干枚販売いたします!!



New Audiogram ver.4
New Audiogram ver.4 -1102east- 特設ページ
New Audiogram ver.4 -1123coast- 特設ページ


<吉野寿(eastern youth)×山嵜廣和(toe)×星野源(SAKEROCK) Special Talk Session>

■前編 お互い出会い、またその活動や音楽性についてじっくり語っていただいた濃厚鼎談!
■後編 お互いへの質問コーナー! 3人が3人へのそれぞれ質問を持ちよっての質問合戦!!
<前編>
この3バンドというと"極東最前線"での顔合わせが印象に残っていますが、改めてそれぞれの出会いから伺えればと思います。toeとイースタンの出会いのきっかけって何ですか?
自分がバンド始めた当初から一方的にはライヴを観させてもらってましたが、直接お話ししたのは"極東最前線"に呼んでもらったときが最初かな? "極東"って3年前くらいでしたっけ?
もっと前じゃない?(正確には2008年6月開催)覚えてねえなあ……。年取ってくると1年も10年もわかんなくなっちゃうからね。toeって何年やってるの?
10年ですね。
そうか。俺らは22年。東京出てきてもう20年だからね。
僕も自分たちの経歴見たら10年も経っててびっくりして。ついこないだだと思ってたのに。
SAKEROCKとtoeはおつきあいありました?
ないんですよ。今日初めてお会いしたんです。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。でも一方的には音源聴いたりしてます。
ありがとうございます。僕も一方的にこないだDVD買って見てました(笑)。今日この対談の前に、せっかくだからtoeのことをちゃんと知ろうと思って調べてたんです。今までCDとかDVDは持ってたんですけど、きちんとは知らなかったので。そしたら2000年末結成って書いてあって、SAKEROCKも2000年11月結成なんで、同じくらいなんだと思って。
そうですね。
SAKEROCKとイースタンの出会いも、"極東最前線"に吉野さんが誘ったところからですか?
そうだね。でもその前にライヴを観に行ったんだよ。
たぶん、M.A.G.O.と共演していたのをたまたま吉野さんが観てくださって、その次の次の日くらいに吉野さんから電話をもらったんです。
俺はその前にテレビかなんかでSAKEROCKを見て、オッと思ってたんだよ。「また来てね」(アルバム『LIFE CYCLE』収録曲)がかかってて、年寄りがやってるバンドなのかと思ってたら違ってたんだよ。
あのとき、21歳くらいですね。
ああいうオーセンティックなことをやってるバンドって俺の中で、スノッブな感じ、"俺らはほかとはちょっと違うんだぞ"っていうニュアンスを持ってるっていう先入観があったんだけど、そういうのとは違うような感じを受けたわけ。どっちかというと、若者がエレキ持って「イエーイ、ロックンロール!」ってやってるような素直な感じがしたの。それで、ライヴを観てみたいなと思ってて、ちょうどそのM.A.G.O.とのライヴがあったから観てみたら、やっぱりこういう感じなんだと思って。
僕にとって吉野さんは、SAKEROCKのことを初めてわかってくれた人で。それまでずっと"癒し系"と言われてたんです。
インストだと絶対一度は"癒し系"って言われるの(笑)。
そうなんですよね。でも僕は、高校生のときとかにハードコアとかオルタナティヴが大好きで、好きすぎて真似しちゃいけないと思ってしまったんですよ。だからとにかくギターを歪ませちゃいけないって思ってて。
大事だよね、そういうの。
しばりってね(笑)。
ワーッ! って衝撃を受けたときに、そのまま同じことをやるか、その衝撃だけを持って違うことをやろうとするかって全然違うんだよね。ほんとはそこで違うことをやらなきゃいけないんだよ。その衝撃だけ持って、自分で自分のやり方を探さなきゃオリジナルなものなんて作れないんだから。
そうっすね。
それで、当時はオーセンティックなスカ・バンドとか、ワールドミュージックなバンドもいっぱいいたからそっちにも行きたくなくて、そうすると行き場がなくて(笑)。どうしたらいいのかわからない中で試行錯誤しながらやってたら"癒し系"とか言われて。ちょうどそのころに"極東最前線"に呼んでもらったんです。その打ち上げで、吉野さんがベロベロの状態で、「SAKEROCKはな、オルタネイティヴなんだよ!」って言ってくれて、帰りにちょっと泣きました(笑)。やっとわかってくれる人がいた、って思って。
ぜんっぜん覚えてない(笑)。クアトロの前でハマケンを足払いして倒したことくらいしか。ハマケンおもしろいんだもん。
いい顔してますからね(笑)。でもほんとに、言い方が大げさですけど、すごく報われたって感じてます。
僕もSAKEROCKを知ったのは、"極東最前線"のチラシを見てなんですよ。"SAKEROCKって、イースタンと一緒にやるようなバンドなんだ"って初めて認識した感じで。その時はカクバリズム?
その時はコンペアノーツっていうところにいて、そのちょっと後くらいにカクバリズムに移ったんです。
そのときくらいにSAKEROCKがカクバリズムに入るって聞いたのかもしれないけど、YOUR SONG IS GOODは昔から知ってて、カクバリズムにいるバンドって、方向性というかなんとなく持ってる雰囲気が似てるなって思ってたんですよ。そこにSAKEROCKがいるっていうのはすごく美しい感じがしたんですよね。だから、今日ほんとやっと会えた感じがします。
今日はそんな3バンドの共通点を探るようなお話になればと思っていて、なんとなく、活動の仕方というか、それぞれ自分たちで事務所やレーベルを運営されてたりというようなところは似ていると思ったんですよね。イースタンは事務所(裸足の音楽社)を運営されてますし。
でもまあうちは仕方なくやってる感じですよ。自分たちでやるしかないからっていうか。
うち(MACHU PICCHUレーベル)もそうですよ。誰もやってくれないから(笑)。カクバリズムみたいにやってくれたらやってほしいですよ(笑)。
 
経営も自分でやってるんですか?
そうっすね。もう単純に自分たちがリリースするために立ち上げたんですよ。今はmouse on the keysもリリースしてますけど、最初から出そうと思ってたわけじゃなくて、ライヴを観て、すごくかっこよかったから出したいなと思ってお願いしただけで、基本的には自分たちが音源をリリースするためだけにやってるんですよね。
SAKEROCKは、カクバリズムに属しつつ、その中ですごく自分たちでやってる感があるんですよね。ジャケットを自分たちで作ったり。
最初は自主で出してて、その後にミュージシャンの皆さんが一度は通る、悪いレーベルの人っていうのに会ってしまって(笑)。そこでCDは出してないんですけど。それでめちゃくちゃ傷ついて、もう権利は全部自分たちで持つぞって思ってクサクサしているときに、角張さんっていう見た目一番怪しい人に出会って(笑)。「(へんな声で)7インチ出そうよ~」っていうような軽いノリだったんで最初はすごい警戒してたんですけど、徐々に打ち解けて、今はわりとお任せしてますね。いい出会いだったなと思ってます。今ジャケットは、昔から一緒にやってる大原大次郎さんにほぼ任せていて、僕が大雑把なアイディアを出して大原さんがものすごい熱量で答えてくれるという感じです。
あの人すごいですね。
すごいし、努力の人なんです。前にジャケットのことで打ち合わせしてた時に、CDの外箱には4人の写真が載ってて、それを取ったらCDのジャケットには全員木彫りになってる写真が載ってたらおもしろいねって言ったんです。僕としては本気のアイディアだったんですけど、どうせみんな本気に取ってくれないだろうなと思って笑い交じりに言ったんですよ。そしたら大原さんは次のジャケットの打ち合わせの時に、ちゃんと手で彫った木彫りの写真を印刷したものを準備してくれたんです。そうやって、こっちをちゃんと驚かせてくれる人なんです。もちろん才能もあるんですけど、一緒に切磋琢磨し合ってアイディア出し合いながらやってきたというか。それもほんと出会いだと思うんですけど。……あとジャケットっていうと、イースタンの『歩幅と太陽』でしたっけ? プラケースの下に入ってた、吉野さんのヒゲ面の写真にはびっくりしました。
ヒゲのときあったね(笑)。
レコーディング中の願掛けですよね?
レコーディング中ずっと剃らなかったらどうなるんだろうって思ってやってみたの。そしたらすごいことになっちゃって。あれぐらいすぐ伸びるんだね。
伸びますね。
(山嵜さんのヒゲを指して)それ、何日くらい?
これは、今日写真撮られると思って手入れしてきたんです。
そうなんだ。そうだよね、デザインヒゲになってるもんね。シュシュッと。
ほっといたらもっとすごい、オルタネイティヴな感じなります(笑)。今日はちょっとBボーイ風に、プリンス的にしてきたんですけど。
そうだね。シャープだもん。
山嵜さん、こないだのtoeのDVD(『CUT_DVD-For Long Tomorrow Release Tour 2010-2010,02,15 @ Shibuya O-EAST』)の周りに付いてたゴムあったじゃないですか? あれ、すごくかっこいいなと思って気になってたんですけど、いくらかかるんですか?
あれね、、そんなにすごく高くはない。
toeのCDもDVDも、毎回高級感がありますよね。
高級感(笑)。
CD(『For Long Tomorrow』)には組み立てる家が付いてましたね。
あれ、デザイナーと一緒に一生懸命考えて作ったんですけど、じつは昔そっくりなもの作ってたバンドがいて。パクったと思われたら嫌だなと思って、リリースの前にブログで「知らなかったんです」ってことをアピールしてたんですよ(笑)。
  (現物登場)
かわいいね。これ、中に家具も描けば良かったのに。覗いたらちゃんと家具もあるねってなったのに。
やってるときはてんてこ舞いで、そんな余裕なかったんですよ(笑)! この仕組みを考えるだけでいっぱいいっぱいで。今度は作るときには一回吉野さんに相談します(笑)。
でもすごくいいよね。
最近はもうみんな、CDもDVDもモノとして見てるじゃないですか、音源としてというより。じゃあそのモノとして買ってもらうためにはどうすればいいのかって考えてて、どんどんグッズみたいになっていってるんですよね。それもいいんだか悪いんだかなんですけど。昔はレコード自体がグッズでもあり、それでしか音楽が聴けないものだったですよね。個人的にはレコードに戻っていってほしいんですけど、今はCDってフォーマットが作るうえで一番安いし、出回ってるからそれを使ってるっていうだけで。そんな感じだから、音源をコピーするとかっていうことはもう仕方ないなって思ってますけどね。
この家はコピーできないですもんね。これを見ると、モノをすごく大切にしてるなって思います。
星野さんもわりとそういう考え方ですか?
そうですね。『ホニャララ』の時も、48ページのブックレット作ったんですよ。雑誌みたいにしたくて、漫画やインタヴュー入れたりして。自分の昔を思い返すと、狭い部屋で歌詞カード読んでたっていうのがその曲の記憶と重なっているところがあって。だから僕としてはちゃんとモノと一緒に曲を聴いたほうが楽しいのになーって思うんですけどね。
スペシャルサンクスとかは絶対見ますよね(笑)。この人とこの人つながってたんだ! とか、この人とこの人対バンしてたんだ! とか(笑)。関係萌えです。
見ます(笑)。ジャケットの中になんか知らないことが隠れてないかなって探してて、吉野さんのヒゲの写真とか見つけると嬉しいですよね。こないだ僕、ソロのアルバム(『ばかのうた』)を作ったんですよ。そのときもなんかおもしろいことをやりたいと思って考えてたんですけど、メジャーの会社で規制があってちょっとした工夫ですごいお金がかかったりして、なかなかいつもみたいにできないんです。でもやれる範囲でできるだけ飽きない工夫をねじ込みました。やっぱり、お金を払ってもらっているからには、できるだけ楽しんでもらいたいし喜んでもらいたいですよ。
俺は、データでいい人はデータでいいんだと思うよ。でも、データってポチッとデリート押せば消えちゃうものだから、それでいいならっていうか。要するにその発信者が一つのモノとして発信したものを受け取りたいなら、そこにはブックレットだったりいろんなものが付いてたり、まあ歌詞カードがなかったとしても、CDというモノとして受け取ればいいんじゃないかなって思う。でもそれがいらない人は、あるいはデータでいいって言う人はそれでいいんだと思う。ただ俺は、そうやってボタン一つで消えちゃうものって信用できないんだけど。
そうですね。俺は、音源ってただライヴに来てもらうための材料だと思ってるんです。どっちかというとライヴやりたくてバンドやってるんで、音源聴いてからじゃないとライヴには来てくれないじゃないですか。だから本当はデータでもCDでもテープでも、フォーマットはなんでもいいんです。聴いてくれていいなと思ってくれたらそれで良くて。そりゃ、一生懸命いい音で録音していろいろ工夫してミックスして作ってるけど、聴いてくれる人の環境なんてわからないから、結局データだろうがCDだろうが音質は変わらないかもしれないんだし。それに、音質がいいからライヴを観に来るってことはないと思うんですよ。曲がいいって思ったり、バンドの雰囲気を感じたくて来るんだと思うから。
音楽って、肉体を使ってギターやなんかの楽器をギャーって鳴らすもので、そこは変わらないんだよね。ただ、その音楽が形になったそのモノの形が変わるだけで。それで音楽がなくなるわけじゃなくて、商売の形が変わるだけで。
昔はレコード屋さんに試聴器もなかったから、わからないままに買うか、「YOU & I」でレンタルするかしかなかったですからね。知らずにへんなもの買っちゃって、でも何十回と聴くうちにかっこ良く聴こえたりして(笑)。
 
そうね(笑)。そういうへんなものも自分の血になったりとか。
そういう部分でいうと、今は無駄が足りないんじゃないかと思うんですけどね。
どんどん聴いて、どんどんデリートしていけばいいんだからね。
でも一方で、今の人たちが羨ましいなとも思うんですよ。昔はファンジンとかで紹介している7インチとか欲しくても500枚しか作ってなかったりして、手に入らないじゃん!って悔しい思いしてたから。そうなるとどんなバンドかわかんないから自分で想像するしかなかったし。今はそんなことってないじゃないですか。だいたいMySpaceで試聴できるし。
枠は広がったと思うよ。俺たちの時代なんて、アウトプットする場所が全くなかったんだから。今は、パソコンをポチッとやるだけで世界とつながれる。昔は、ひとつひとつ手でコピーして曲名も手書きで書いてってやってたことが、そこに音源をアップするだけで、誰でもあっという間にできるようになったんだから。ただ、誰でもできるし誰でも聴けるから、そのとき流行ってるものをみんなが一斉にやってるような感じがあって、みんな同じに聴こえるんだよな。
だから、5バンドしか聴いたことがない人がやるバンドと、今みたいにパパパッて何千というバンドの曲を聴いてる人がやるバンドと、どっちがいいんだろうって考えちゃいますよね。
一長一短だよね。俺が聴かないことに慣れてるから言うんじゃないけど、インプットしすぎると一つひとつの情報は薄まっていく気がするのね。本でも、新刊を次から次と読んであれもこれも知ってますっていうけどさ、本当にその本に書かれてることを理解してるかっていうと、違うんじゃないかと思うんだ。やっぱりもっと濃く関わらないとダメだと思うんだ。同じ本を何回も読んだり、同じ曲を何回も聴いたりしていくうちに自分の身になっていくんじゃねえかって。それがある日、何がどうなってそうなったかわかんないような感じで、全然違うところからモコモコとタケノコみたいに形になって出てくるんだと思うんだ。今の人たちがやってることは、創作じゃなくて選択になってるんじゃないかと思うんだよ。いっぱいある中からこれとこれとこれをって選んでコラージュしたものっていうか。うまくコラージュできてるものが同じようなセンスをした人により多く受け入れられてるっていうのが今の時代の流れなんだと思うのね。もちろんそうじゃない人もいっぱいいるんだろうけどさ。
もう究極は、音楽じゃなくてもいいんじゃないかと思いますよね(笑)。
というか、音楽じゃないものに影響されてできた音楽じゃないとダメなんじゃないかとか思うんだよな。全然違うものを見たりして、それを音楽に変換するっていうやり方。
さっきの話みたいに、そこから受けた衝撃だけを持って音楽を作るというか。
要するに、ギターが歪んでいるものを聴いて歪ませないぞって思ったっていうのと同じかもしれないけど、紙とかガラスとか(笑)全然音楽と関係ないもの、それを音楽にしてみました、みたいなね。そういうのじゃないともう新しい表現はできないんじゃないかとか思ったりしてて。
さっき言ってたみたいに、その音楽を知るには雑誌を読んで想像するしかないってことが、今はないからじゃないですか。YouTubeもあるし。でもその想像することっていうのがオリジナリティにつながっていくんじゃないかなって思うんですよ。
実際見てみるとそんなにかっこ良くなかったとかね(笑)。
はい(笑)。でもその時自分の中で膨らんでたものはオリジナルだと思うし、吉野さんが言う、全然違う場所からタケノコが生えてくるっていうのと同じことだと思うんですよ。
そうするにはたぶん、得た情報を上からどんどん貼り付けるんじゃなくて、そのひとつひとつをちゃんと温める時間が必要なんだと思うんだよ。あっためて発酵させるっていうかさ。その時間がオリジナルなものを生んでいくんだと思うんだ。
<後編>
ここからは、お互いに質問を投げかけていただくコーナーにしたいと思います。まずは、山嵜さんから吉野さんにお願いします。
じゃあ、遅くなりましたけど、この間のアルバム(『歩幅と太陽』)がすごい良かったです。
あ、ありがとうございます。今回励ましのお便りが少なくてね。悪い話ばっかり。
そうなんですか!? 音質も何もかも全部最高でしたよ。
ネットのレヴューとか見るとめちゃくちゃ書いてあってさ。まあいいやって思ってたんだけど、そんなことばっかり言われると意外と自信なくなるね(笑)。
できるだけほめてほしいです(笑)。
だけどさ、否定的な意見のほうが自分を鍛えてくれるって言うじゃん? だから俺はできるだけそういうのを聞こうと思ってるんだけど。
僕は、本人から直接なんらかの形で言われないと、意見や感想とは認めん! って思ってます。
そうだね。でも匿名でああやって書いてあるのこそ、ぶっちゃけた本音なんだと思う。いわゆる、飲み屋とかで交わされてる会話とか意見なんじゃないかって。
僕もそれについてすごく考えたときがあるんですけど、ネットで流れている評価って全体の意見のごく一部分だと思うんです。世間の評価ってもっといろいろあるんだけど、その中でも偏ったものが目立つのがネットっていうメディアなんだと思って。例えば、全然良くなかったライヴの後に楽屋に来てくれた人が「良かったですよ」って言ってくれた時の微妙な顔を見たら、"ああ、良くなかったんだな"って想像できるじゃないですか。それを考えると、言わないってことも評価のうちだと思うんですよね。でもネットにはその"言わない"部分は出てこない。好きだからこそけなしてるっていうこともあるかもしれないけど、ネットだとけなしてる部分だけが強調されて、その"好き"っていう部分は出てこないじゃないですか。
それはあるかもね。
そのコメントを書いた人の中にも、そのコメントに至る前に自分の中で処理した感想とか感情とかってあるはずなんだけど、それは表現されないんですよね。
たしかにそういう強烈な意見だとか偏ったものが目立ちやすいっていうところはあるよな。そういう人は全体のごく一部なんだけど、その意見だけを真に受けちゃうことはあるかもね。大多数の人はべつにそこで発言しないもんなんだよね。
そうですよね、本当に音楽を大事に思っている人は、ネットでわざわざ批評しようとは思わないですよ。
吉野さんに質問なんですけど(笑)、今までのアルバムと新しいアルバムの音がすごく違う気がしたんですよ。ギターの音とかが特に。あれはレコーディングの仕方が違うんですか?
同じです(きっぱり)。というか、毎回いっぱいいっぱいでやってるからそういうのわかんないんだよね。ただ、二宮くんがそういういろんなことを考えてる。キャプテンだから。
あ、二宮さんなんだ。
山嵜さんに前から聞きたかったんですけど、toeもインスト中心じゃないですか。タイトルはどうやって決めてるんですか?
 
SAKEROCKはどうやって決めてます?
僕らは作曲した人がなんとなく決めてるんですけど、毎回すごい悩むんです。
僕らは、っていっても僕が勝手に付けてるんですけど、すごいギリギリ、ジャケットの入稿の直前に決めてて、もう適当に好きな本のタイトルとかフレーズとかを付けちゃう。取材なんかでは皆さんいいように解釈してくれたりするんですけど、曲作ってるときは、とにかくかっこいい曲を作りたいと思ってるだけで、そこに何か感情とか思い入れとかはないんですよ。たまにタイトル付けた後で何か意味が付いてきたりする場合はありますけどね。だからほんと、付けるときは何にも考えてないですね。
次は吉野さんから星野さんにお願いします。
前にも何回も聞いたと思うけど、SAKEROCKはなんでこんな音楽になっちゃったの? 俺たちより全然若いしさ、そういう音楽の愛好者ばっかりってわけでもないわけでしょ? いろんなバックボーンの人たちが集まって始まったのにどうしてこうなったのかって、何回質問しても理解できないんだよ。
うーん……。僕は好きな音楽のジャンルがいろいろで、それこそJ-POPも好きだし、親がジャズ好きだったからモダン・ジャズも好きになったし、あとは元々オタクというか、中学生の頃はライト・ノベルが好きで、アニメも好きだったからアニソンも好きだし。そのいろんなジャンルの中に自分の琴線に触れるものがあるんです。で、自分で一番バンドやりたいと思ってた時期はハードコアを聴いてたから、本当はそれをやりたいんだけど、好きだからこそやれないっていうか、やっちゃいけないだろうって自分に課してしまったんですね。だからといって好きじゃないものをやりたいとも思わないから、一度は"何にもやれないな"と思ったんですよ。でも、とりあえずバンドを組んでやってみたんですけど、曲を作っててそれが何かに似てるなと思ったら「やっぱりやめよう」って言って、バンドのメンバーは「またかよ」って思うっていう、最初の2年間くらいはほんとにその繰り返しで。そうやってるうちにほんとにちょっとずつ、「これはほかにないかもね」とかっていう曲が出来てきて、ようやくCDが出せるようになって。で、最近は、それまで自分の中でやっちゃダメって思ってた枷をちょっとずつ外して、あれもやろうこれもやろうっていうモードになってきたんです。たぶん、何をやってもSAKEROCKになるだろうっていうふうに思えたからだと思うんですけど。
土台が出来上がったってことだよね。
そうですね。バンドのアイデンティティみたいなのが、言葉じゃなくなんとなくみんなの中で出来上がってきて、そうやって徐々に今のSAKEROCKになってきた感じです。だから説明が難しいんですけど。
でもごちゃ混ぜ感はないよね。意外とオーセンティックな、ベースはジャズでプラスアルファっていうかさ、それこそクレイジーキャッツみたいな感じがするなと思ってさ。
ひとつは親が趣味でジャズ・ピアノやってて、自分の中にもジャズが根っことしてあるんだっていうのが去年くらいにわかったんですよ。それと、とにかく笑いが好きなんですよね。ものすごく暗い人間なので、笑いがないと生きていけないって思ってるところがあって。だから、笑いのある音楽っていうものにものすごく憧れがあるんです。それはクレイジーキャッツとかシティボーイズにもつながってるかもしれないです。あとは、ブルース・ブラザーズとか。
前回のアルバム(『ホニャララ』)で言うと、日本的なムードがあるよね。
日本大好きなんです(笑)。あとはどうしても日本的な恥じらいが出ちゃうというか。本当は「イエーイ」って言いたいんだけど恥ずかしくて言えない、みたいな感じ。そういうところが出てるのかもしれないですね。
そうか~。
今度は僕から吉野さんに質問していいですか? あの、今までギブソンのフルアコのギターを使ってたんですけど、初めて薄いエレキギターを買って、今回のSAKEROCKの新しいアルバム(『MUDA』)で歪ませて録ったんです。高校生みたいな気持ちに戻ろうと思って。でも、全く録音の仕方がわからなくて(笑)。歪ませたもの録るのってやり方が独特じゃないですか。吉野さんはどうやってやってるんですか?
マイク立てて録ってるんだよ。
そりゃそうでしょうけど……アンプは何を使ってるんですか?
そのへんにあるアンプだよ。フェンダーとか。
何でもいいんですか?
基本的に何でもいいんじゃないかな? とりあえず歪むエフェクター使えばさ。あと、録音するときにマイク立てて録ると意外と耳で聴いてるのと違うじゃん。だから、それは録り方なんじゃないのかな。いろいろつまみがあるじゃん。あれをいじったりさ。答えはないんじゃないのかな。そのときそのときで。
みんな思ってることなんですね。
うん、マイクすごい離して立ててみたりさ、何本も立ててみたり、立てなかったりさ。前回うまくいったからって同じようにセッティングしても違ったりしてさ。
違うんですよね。
だから毎回いろいろやるしかない。回答はない。
イースタンのCD聴いてると、音に爆発力があるんですよ。それをなんとか出せないものかと思ってたんですけど。
あれ、コンプ(コンプレッサー)上げればいいんじゃないの? ボーンって。
(笑)。
でもコンプって音がつぶれちゃうじゃないですか、全部。
わかった、レコーディングのことは吉野さんに聴いちゃダメなんだよ。
なるほど(笑)。
うん(笑)。それ、二宮くんに聞いてくれる? 電話番号教えるから。
俺もそうだけど、ほかの人がいろいろやってくれてるんだよ(笑)。
基本的なセッティングはもちろんあるんだと思うんだけど、そこから先は全然わかんない。いい機械使ってみてもうまくいかなかったりさ。
奇跡的な音が録れるときもあるじゃないですか。自分が思ってたのとは全然違うんだけど、それがすごいかっこいいとか。
あるある。
それがレコーディングのおもしろいところでもあるんですよね。
 
そう。じゃあ俺から山ちゃんに質問ね。中学に入って一番最初に買ったアルバムは? もしくは中学のときに一番聴いたアルバム。
あ~中学はね、BOOWYですね。
BOOWY? 今何歳?
35です。だから中2くらいでもう<LAST GIGS>ですよ。
そうか、俺と7つ違うんだね。中学の同級生で聴いてる人いた?
いましたよ。
完全に周りから浮いてたなって思うような音楽は聴いてなかったの? “もう、これを聴くことで俺は完全に周りから浮いたな、もうダメだ”って思うやつ。
それはないっすよ(笑)。というか、札幌はそりゃ全然違いますよ。パンクとかの音楽シーンがどこよりも最先端だったじゃないですか。
最後尾だったよ。俺たちのときは北海道はロック不毛の土地って言われてたんだぜ。
だって個性的なバンドがいっぱい出てるじゃないですか。
それは後々よ。俺らがいた当時はもうひどいもんだったよ。
アメコアが東京で流行りだす全然前からみんなちゃんと海外のディストリビューターから買ってたって、そういうシーンがあるっていうのを聞いて、すごいなって思ってたんですよ。
たぶん、モッシュピットが日本で一番早く出来たところだね。BAD BRAINS のヴィデオ観たらフロアで客がぐるぐる回ってたっていうんで、「おいやるべ」って言ってやってた。ステージから飛んだほうがいいぞ、とかね。……いや、そういう質問じゃないんだ。音楽以外でもいいんだけど、なんか周りからはみだしちゃってたっていう、はみ出しチャンピオンみたいなことってなかった?
はみだしチャンピオン(笑)。僕、運動も全然できなかったし、勉強も、中学くらいまではなんとなく適当にやってれば真ん中より上っていうくらいで、いろんなことが全部中途半端だったんですよ。その劣等感がずっとあって。あと、地元ではサーフィンとかスケボーとかが流行ってて、女の子にもてたいからそういうのも一応やるんだけど、でも自分がやりたいのは本当は違うんだよなってずっと思ってたんですよ。バンドはその頃からやってたんだけど、まだカヴァー・バンドって感じで。それでやっと高校の後半くらいからいわゆるバンド・シーンっていうのがあるってわかって、そのへんから、自分がこれがやりたいんだってわかって徐々にシフトしていった感じなんですよ。
ギターは最初からエレキ?
最初からエレキ。
何エレキ?
フェルナンデスのテレキャスター。布袋モデルがあってほんとはそれが欲しかったんだけど高くて買えなかったんで、同じ形ので3万円のやつを買って。
へえ~布袋の影響なんだ~(ニヤニヤ)。
この話やめませんか(笑)? 僕もちゃんと、初期パンクのBIG BOYSが好きで、とか言いたいんですけど、正直言うとそうなっちゃうんですよ(笑)。『大きなビートの木の下で』(BOOWYのヒストリー・ブック)を読んだりして。
いや、世代的にBOOWYがラインかもしれないなと思ってさ。俺らの世代はどっちかというとめんたいビートで、ルースターズとかモッズとかが流行ってたから。世代の線としてBOOWYがあるかもしれないな。
では最後の質問は、山嵜さんから星野さんにお願いします。
僕、今まで演劇をライヴで観たことがないんですけど、やっぱり音楽のライヴとは雰囲気違いますか?
違いはいろいろあるんですけど、演劇は必ず椅子席なんで客席からのレスポンスがそんなにないんです。笑いのあるお芝居だったら笑いがあるくらいで。あと、普通ライヴだったら演奏するほうは正面向いてますけど、演劇の場合は基本的にステージ上でこっちが作り上げたものやって、それを観察してもらう感じですね。SAKEROCKはライヴのときメンバーが半円になってやってて、toeもそうだと思うんですけど、そういう意味では演劇とちょっと似てるなって思います。それと……僕、舞台だと大体全裸とか半裸とかになることが多くて。
コスチュームが裸って言うこと(笑)?
はい(笑)。大人計画とかだと大体そうで。だから、服を着てるか着てないかっていうので気持ちは全然違います。
服は着れますもんね(笑)。
自分で選べますし(笑)。あと一番でかいのは、バンドは自分がリーダーですけど、演劇とかドラマの場合はいかに演出家さんの駒になるかなので、そこは全然違うと思います。でも面白いのは、演奏していて一番いいとき、一体感があるときって自分のエゴがなくなっている状態のときだと思うんですよ。自意識がないっていうか。適当に弾いてるのにすごくいい感じにギターを弾けてるとか。演劇の場合も、すごく盛り上がってるときっていうのはそういう、自分がまったくなくなって次の台詞もどんどん出てくるし、お客さんもすごく物語に入ってくれてる状態なんですよね。だから、やり方は全然違うんだけど、気持ちいいところの本質的なところは演劇も音楽も似てるのかなと思います。
観に行きたいですね~。
しばらくないんですけど、僕の裸をぜひ(笑)。あ、最後裸の話で終わってすいません(笑)。
eastern youth
1988年に北海道で結成。吉野寿(Guitar & Voice)、二宮友和(Bass & Chorus)、田森篤哉(Drums)の3ピース。インディーズで自らのレーベル坂本商店を立ち上げ、その活動の狼煙を上げる。1994年からは自ら主催するイヴェント"極東最前線"をオーガナイズし、国内外の新進気鋭のバンドらとも積極的に交流、共演をおこなっている。1997年に『青すぎる空』でメジャー・デビューを果たし、日本のエモーショナル・ハードコアの先駆けとして第一線で活躍を続けている。その影響力は計り知れない。漢詩などを用いた独特の歌詞世界と、"ヴォーカル"ではなく"ヴォイス"と呼ばれるフロントマン吉野寿の声が特徴。2005年には新たに音楽レーベルとなる裸足の音楽社を立ち上げ活動の拠点に。2009年8月には通算13枚目となる『歩幅と太陽』をリリースしている。
http://www.hadashino-ongakusha.jp/
http://myspace.com/easternyouth
toe
2000年の結成。山嵜廣和(Guitar)、美濃隆章(Guitar)、山根さとし(Bass)、柏倉隆史(Drums)の4人編成からなる至高のインストゥルメンタル・ロック・バンド。幻想的な響きと生々しい情動が同時に吐き出されるようなその美しくも荘厳な楽曲、そしてその圧倒的なライヴ・パフォーマンスは、多くの音楽ファンたちを魅了してやまない。2009年12月に最新アルバム『For Long Tomorrow』を発表、そして2010年7月にはDVD作品『CUT_DVD』もリリースしている。
http://www.toe.st/
http://www.myspace.com/toemusic
SAKEROCK
星野源(Guitar)、田中馨(Bass)、伊藤大地(Drums)、浜野謙太(Trombone)の個性溢れる4人編成からなるストレンジ・インストゥルメンタル・グループ。リーダーである星野源が同じ自由の森学園高等学校出身のメンバーを集め2000年に結成したのがはじまり。バンド名はマーティン・デニーの同名曲に由来してる。メンバーそれぞれが他バンドや役者や文筆活動など、多彩なジャンルで活躍中。彼らの金字塔となった2008年の『ホニャララ』などバンドとしてのオリジナル・アルバムのほか、お笑いや演劇、映画などのサントラなども数多く手がけている。まだ彼らのことを知らなければ、 2009年12月にリリースされたDVD『ぐうぜんの記録』をチェックすべし!!
http://sakerock.com/