<BOOM BOOM SATELLITES 『EXPERIENCED』 Interview>
──昨年10月にUSツアーを約1ヵ月に渡っておこないましたが、その感想から教えてもらえますか?
川島:
昨年、アメリカ用のベスト盤をリリースしたので、そのためのツアーでもあったんですけど。久しぶりにあれだけの都市を回って、何度行っても一筋縄ではいかないというか、ここにも音楽を伝える場所があるんだって実感しました。またツアーをやりたいという思いを新たにできましたし、ずっと待ってくれた人に会えたことも良かったですね。
──幕張のライヴを終えて、バンドとして自信を持ってまわれたところもあるんじゃないですか?
中野:
それは全然ありますよ。ただ、どこの国に行ってもやることは変わらないですけどね。
──そして、今作は幕張のライヴをCD&DVDの2枚組としてリリースしますよね。僕も現場でライヴを観させてもらい、本当に素晴らしいショウだったんですが。今回、最新作『TO THE LOVELESS』レコ発でライヴ・ハウス・ツアーを17ヶ所を終えた後、アリーナ・ツアー5ヶ所という流れでしたが、振り返ってみてどうでしたか?
中野:
すごく充実感があったし、まだまだ届けなきゃいけない場所があるんだって実感しながら回りました。ライヴ・ハウス・ツアーはステージと客席の距離が近いから、コミュニケーションが成立してるという幸福感を感じたし。ただ、そういう日々を過ごす中で、去年フジロックのGREEN STAGEに出ると、観客とのコミュニケーションの取り方が会場の規模ひとつだけで何もかも変わるんだなと思って。そういう難しさを味わいながら、アリーナ・ツアーに突入したんですよね。
──ツアーの合間にフェスを挟んだことは良かった?
中野:
そうですね。いろいろ考えるきっかけになりましたね。大きい会場だけど、ライヴ・ハウスでやってきたことが活きなかったわけじゃないし、ツアーで培わった経験を全部幕張のライヴに集約することができましたね。
──サポート・ドラマーの福田さんを含めたバンド・グルーヴを固める上でも大事なツアーでした?
中野:
昔のファンは前のドラムと比べるかもしれないけど、優劣はないし、バンドが新しくなって良かったなと思いますね。やっぱり、タイプの違うドラマーなので新鮮な気持ちでライヴに向かえてます。
川島:
ドラマーがチェンジして、バンド内部はまだ柔らかい状態だったと思うんですよ。今回のライヴ・ハウス・ツアーは、バンドを鍛え上げるチャンスだと思って。バンド・サウンド自体は揺るぎない、強固なものになっている気はしますね。あと、毎日音楽を伝えて、届けて、観客が喜ぶ姿を間近で体感することは、僕にとってすごく幸せなことだったから。だけど、その中でいろいろと考えさせられることもあって。一体、音楽を届けるとはどういうことなんだろ? と。フェスを終えた後、再び自分たちのツアーに戻ってみて、音楽を奏でる姿勢自体は何も変わらない、変えられないなと改めて感じたんですよね。そういう気持ちで幕張を迎えることができたから。すごく実りの多い時間を過ごせましたね。
──フェスでは何か戸惑いでもあったんですか?
川島:
戸惑いというか、ステージに出れば音楽を届けることに専念するんですけど……、誰が出ても喜ばれているような状況もあって。自分じゃなくてもいいんじゃないか、みたいにヘンな考えになってしまって。でも、そうじゃないなっていう気持ちの方がステージ上では勝っていたんですよ。だから、自分の中で確信できる何かを掴めたんじゃないかなって。
──具体的に言うと?
川島:
演奏するときの姿勢だったり、迷いがない自分を手に入れることができたんじゃないかなと思って。会場によって、狭い、広い、いろいろ条件が違うけど、そういう経験を経たことで精神的にも鍛え抜かれたんじゃないですかね。
──幕張では心にブレがなくやれたと?
川島:
そうですね。ただ、そういう迷いや葛藤はずっと続くと思うんですけど……。
──そして、幕張のライヴでは特別な演出がありましたよね。
中野:
何か特別に違うことをやろうとは思ってなくて。ただ、会場の規模が大きかったので、消防法の関係でステージから客席まで何メートル取らないといけないという規制があったから。もっと観客の近くでやる方法がないかなと思って、その気持ちから浮かんだアイデアだったんですよ。あれで消防法がクリアできるっていう(笑)。
──ええ、花道とステージがそのまま前にせり出すという演出にはビックリしました。
中野:
うん、スピーカーから客席の距離が決まるから、スピーカーよりステージが前に出る分には全然OKなんですよ。より一体感が味わえるようにしたいなと思って。まあ、それほど驚かせようという気持ちはなかったんですけどね。実際ステージの上に乗ると、小さくて狭くて(笑)、自分のスペースがないんですよ。あのステージ自体も実は2メートルぐらいあって、落ちると大変なことになるから。意外と演奏する方はストレスがいっぱいあったけど、観客が目の前にいて、ステージと一体になっていく様を見ていると、やって良かったですね。
──照明や巨大スクリーンなど、視覚的要素も凝ってましたよね。
中野:
そうですね。ものすごく力を注いだわけじゃないけど、一つひとつがちゃんと機能したから、そう思ってもらえたんじゃないかな。あの日のためだけに手書きでアニメーションを作ったり、丁寧に作られたステージだと思います。バンドが奏でるサウンドがあった上で、エンターテイメントの幅を広げたかったので。LEDのスクリーンだけを最初から最後まで観るライヴもあるけど、それとは本質的には違うことをやろうとしているし。極論を言えば、映像がなくてもその場にいる人たちをちゃんと感動させて帰すことができなきゃいけないと思うんですよ。そういう意味では、ライヴ・ハウスとそんなに大きくは変わらないんじゃないかな。
川島:
U2のように光と音のエンターテイメントみたいなすごいショウというより、曲に寄り添った展開を考えたんですよ。僕らが作ったPVとリンクしてる部分だったり、そこから広がる世界観だったり、楽曲やセット・リストに自然と呼ばれて作られたものだと思うから。仰々しさが目立つものではなく、ライヴ・ショウとしてアートも機能したので、うまくいったんじゃないですかね。リハーサルのときにちょっとステージを外側から見たんですけど、すごく感動的だったし、これならお客さんにも喜んでもらえたんじゃないかなって。
──特にライヴDVDの中盤「STAY」、「FOGBOUND」の辺りは演奏と映像が効果的にリンクしてて、ゾクゾクしました。
中野:
うん、ああいうセット・リストの流れは、ライヴ・ハウスで培ってきたものだし。それをさらに推し進めた形が、DVDに収まってると思うんですよ。
川島:
やっぱり楽曲の深みや、そこから受ける感動をよりスケール・アップして見せることができるアイディアを選んだから。それが成功したと思うので、やって良かったですね。
──ライヴ自体はトータル2時間ぐらいありましたよね? 収録時間の関係で編集されていますけど、気を配った点はありますか?
中野:
DVDは限られた容量の中で、音質と映像のクオリティをどこまで圧縮させずにやるかのせめぎ合いだったんですよ。CDも収録分数が限られているから、できるだけ楽しんでもらえるように目一杯入れようと思ったし。あと、「DIG THE NEW BREED」はずっとライヴだけでやってきた曲で、いままでリリースされたDVDには収録されていたけど、CDという形でライヴ音源を出すのは初めてなので、ファンは喜んでくれるんじゃないかって。
川島:
「DIG THE NEW BREED」は音源でリリースして欲しい、という声をすごくたくさんもらってましたからね。今回CDとDVDの2枚組だけど、音源と映像、どちらも楽しめるように丁寧に作りました。
中野:
映像、カメラ・ワーク、編集まで、ありきたりなものにならないように入念に打ち合わせをしたので。DVDでは編集にも全面的に関わったし、CDの制作に関してもこのバンドの音がちゃんと鳴るように心掛けました。通常、アーティストが自分のライヴ音源をミックスすることはあまりないと思うんですよ。レコーディングだったら差し替えすることができるけど、ライヴはあえて残さなきゃいけないところも出てくるじゃないですか。演奏した本人がその判断を下すのはなかなかしんどい作業だったけど、自分でやってみて良かったですね。
──わかりました。では、最後に今後の予定を聞かせてもらえますか?
中野:
ノー・プランです(笑)。全く予定はないですね。
川島:
ライヴ盤を出したことで、バンドはここで一つの区切りだと思ってるんですよ。今はほとんどスケジュールがない状態だから、次へ向けての準備段階なのかなと。
中野:
これからは今の音楽の聴かれ方を意識して、リスナーに食い込んでいける曲を作りたいですね。
──食い込んでいける曲?
中野:
今は音楽がさらさらとリリースされて、すぐ消化される世の中だと思うんですよ。便利に音楽が聴けるようになったことは全然悪いことじゃないんだけど、存在が軽くなったような気がして。前回出した僕らのアルバム(『TO THE LOVELESS』)がパッケージとして聴くことができる最後の作品かもしれない、という危機感を持って作ったものだったんですよ。配信とかいろいろ溢れる中で、どれだけ1曲に存在感を持たせられるか……、そこはシビアに考えていきたいですね。今、お年寄りから子供まで知ってる曲なんて、そうそうないと思うんですよ。音楽がどんどんニッチなマーケットになって、誰にも聴かれずになくなっていく曲も多いと思うんですね。そういう状況の中で、リスナーに深く刺さる曲が作れたら、音楽家として最高だなと思って。まあ、すごく難しいことを僕は言ってるし、もちろん1億人聴かなくてもいいんだけど、届いた人にはより深く刺さる曲を作りたいですね。
──なるほど。強烈な1曲、楽しみにしています。本日は本当にありがとうざいました!!
中野・川島:
こちらこそ、ありがとうございました。
