<Battles 『Gloss Drop』 Interview>
──前作の『Mirrored』からおよそ4年ですから、長らくあなたたちの新作を待ちわびていたファンも多くいると思います。ツアーもあったでしょうし、いろいろなことがあった4年間だったと思いますが、あなたは『Mirrored』以降の4年をどのように過ごされていたのですか?
John:
あの後は約2年間、ずーっとツアーに出ていたんだ。そのあとちょっと休みをとったりして、それからニュー・アルバムを作りはじめたから時間がかかったんだ。時間はかかったけれども、完成して本当にハッピーだよ。途中でアルバムは完成しないんじゃないかって本気で疑ってたからね(笑)。それがついに出来上がって嬉しい限りさ。
──『Mirrored』はあなたたちの存在を広く世に広めることになったアルバムでもあると思います。
John:
そうかもね。でもアメリカではそうでもないかもな。アメリカではファーストEPの時のほうがもっと積極的にツアーをやってたから。でも『Mirrored』は確かに俺たちの存在を世界に広めた作品だとは思うよ。
──その『Mirrored』以降、あなた自身を取り巻く環境、あるいはあなた自身の考え方や生活には何か変化はありましたか?
John:
うーん、どうだろう。変化というか、違いは感じたかな。『Mirrored』以前の作品に関しては、アンダーグラウンド・バンドとしてとにかく働いて働いて、働きまくって……って感じだったんだけど、『Mirrored』の時はもっとちゃんとした"バンド"になったって感じがしたんだ。もし『Mirrored』は何かを成し遂げた作品だと言ってくれるなら、(『Mirrored』リリース以前の)4年間のハードワークが報われたんだと思うよ。あの作品をリリースできるバンドになるために、ものすごい年月がかかったんだ。最初の頃の俺たちではあんな作品を作ることはできなかったはず。『Mirrored』はそれまでみたいに"いきなりできあがった作品"じゃないんだ。バンドとして、何かに特別な力を注いで作ろうとしてできた作品があのアルバム。あの作品をリリースしたことによって、それまでの努力や時間が報われたと思うし、よりしっかりしたバンドになれたと思うんだ。
──なるほど。過去のBattlesの"型"のようなものを見事に破壊し、新たなBattlesサウンドを切り開いたのが『Mirrored』だったとすれば、次の一手となるのがこのニュー・アルバム『Gloss Drop』だと思います。まず本作ではどういった作品を目指そうと考えておられたのですか?
John:
そうそう。このアルバムはまさに"次の一手"となる作品なんだ。だからこそ、自分たちの過去をリピートしたような作品にしたくはなかった。特に改まって何か目標を定めたわけではないけど、最初にあったアイディアはリピートせずに、今までとは違う新しいサウンドを作るということ。だからいろんな理由でこのレコードを作るのは最初すごく難しいだろうと思っていた。俺たち3人は3ピースとして新たな自分たちのサウンドを再構築して、エクストラの力を注がないといけなかったからね。でもいざ3人になってレコードを作りはじめると、思っていた以上に作業はスムーズに進んでかなり楽だったけど。
──実際に『Gloss Drop』の制作に取りかかったのは、いつ頃からだったのですか?
John:
多分1年くらい前じゃないかな。レコーディングをはじめたのが1年前だから……、曲を書き始めたのは覚えてないけど、1年半かもうちょい前だと思う。3人になってからは3~4ヶ月しかかからなかったよ。8月から初めて9、10、11月だから、4ヶ月だな。
──昨年の夏にTyondai Braxtonが脱退するというニュースが飛び込んできた時は本当に驚きましたが、彼は本作の制作にどの程度関わっていたのでしょうか?
John:
ほとんどゼロだと言っていいと思うよ。彼が脱退した後に、彼が関わっていたパートをすべて消したんだけど、それもほんの少しだったから、それほど大変な作業ではなかったんだ。
──その消したというTyondai Braxtonのパートはどんな部分だったのでしょう?
John:
ヴォーカルだけだよ。サウンド面では彼が手掛けた部分は本来あまりなかったからね。だから彼の脱退後も普通に曲を書き続けて作業し続けることが可能だった。3人になってからも作業が本当にスムーズに進み、結果的に3~4ヶ月でアルバムが出来上がった。彼の脱退は結果的にバンドにとってそれほどに大きな影響を生まなかったと思うよ。
──Tyondai Braxton在籍時の楽曲というのは本作には含まれているのでしょうか?
John:
そうだね。2、3曲はあると思う。でも曲の大部分は彼が脱退した後に書かれた曲だよ。彼がいたときに書かれた曲も、そもそも俺たち3人が書いたものだからね。
──レコーディング前に思い描いていた作品のイメージとレコーディング後の作品を比べると、イメージ通りの作品になったと思いますか?
John:
いや、それに関してはぜんっぜん違うものが出来上がったと思ってる(笑)。想像してたよりもはるかに満足のいく作品に仕上がった。Tyondai Braxtonが離れる前の時点でもかなりハッピーな仕上りだったけど、今ほどじゃなかった。心の底から満足はできなかったんだよね。でも、彼がいなくなってから俺たちはそれぞれがよりクリエイティヴになならくてはいけなかったし、そうやって生まれた新しい要素を実際に作品に注入することができた。作りたいと思っていたものを形にすることができてすごく嬉しいよ。
──本作は『Mirrored』以上に、踊れる感じのアルバムだと思いました(もちろんわかりやすい四つ打ちとかではないですが)。早速ライヴがめちゃくちゃ楽しみなんですが、Battlesの音楽において"踊らせる"、あるいはライヴでの機能性のようなものってどの程度意識されているのですか?
John:
そういうのは特に意識はしてないかもな……。人を踊らせるとまでは。多分、このアルバムがよりダンサブルに仕上がったワケは今回のアルバムを作るのがとても大変だったっていうのと、バンドにとって結構ダークな時期にできた作品だからだと思うよ。本当に色んな出来事があったんだ、バンド内でも、個人的にもね。だからこそ、レコードのサウンドがハッピーに、というかポジティヴになったんだと思う。結果的にライヴでも機能するものになったと思うし、良かったんじゃないかな。
──『Mirrored』と本作が大きく異なる点のひとつとして、本作ではGary Numan、BLONDE REDHEADのKazu Makino、BOREDOMSのEYE(作品でのクレジットはYamantaka Eye)、Matias Aguayoといったゲストたちを迎えています。ゲストを迎えるというのは、今回のアルバムのコンセプトのひとつでもあったのでしょうか?
John:
いや、べつにコンセプトってわけじゃない。でもアルバムに収録されてる曲のうち、4曲は確実にヴォーカルが必要だったから、誰かに頼もうってことになったんだ。で、ひとりだけじゃなくて、4曲あるんだし、自分たちが歌って欲しいと思うアーティストのリストを作って、それぞれの曲に全部違うヴォーカルを取入れた方が面白いんじゃないかって話になってね。それが実現し、結果として最高のアイディアだった! と実感したよ。
──それぞれのゲストにコメントをお願いいたします。彼らのどのような部分を評価していて、彼らが作品になにをもたらしてくれたのか、教えていただけないでしょうか。まずはGary Numanから。
John:
俺は彼の音楽を聴いて育ったから、彼は俺にとってファンタジーみたいな存在で、一緒にレコーディングができるなんて全く思ってなかった。何か一緒に作れたらいいなぁと思ってはいたけど、まさか実現するとはね! あの曲には彼のヴォーカルが本当にパーフェクトだったんだ! ギリギリ急ぎで頼んだからどうなることかと思ったけど出来は最高! これが実現したなんていまだに信じられないね。
──「Sweetie & Shag」で素晴らしいヴォーカルを披露してくれているBLONDE REDHEADのKazu Makinoについて。
John:
まず、俺たちは3人ともBLONDE REDHEADの大ファンだったていうのがひとつ。で、彼らはニューヨークのバンドだから頼むのも難しくなかったし、Kazuを周りで見かけることもよくあったから、彼女に頼むことにした。頼んだらすんなり受け入れてくれて、そのあと俺たちがマンハッタンで彼女をピックアップしてスタジオに連れていったんだ。で、その日の内にレコーディングも終了。かなりスムーズだったよ。
──「Sundome」に参加しているBOREDOMSのEYEについて。
John:
まずBOREDOMSの誰かに歌ってもらうのがいいんじゃないかって話になって、最終的にEYEに頼むことにしたんだ。俺たちに一番最初に音をくれたのが彼。依頼したら、2日後には東京のどこかにあるナイスなスタジオでヴォーカルを録ってすぐに俺たちに送ってくれたんだ。これもめちゃくちゃスムーズだったね。
──「Ice Cream」に参加しているドイツのテクノ・プロデューサー、Matias Aguayoについて。
John:
彼はケルンにあるKOMPAKTっていうレーベルのアーティストなんだ。俺も昔ケルンに住んでたことがあったから、彼とは知り合いでね。彼も他のヴォーカリストと同じ様に頼んだら快諾してくれて、ベルリンで録ったヴォーカルをすぐに送ってくれたんだ。俺たちは、本当にラッキーだったと思うよ。4人も別々のアーティストに頼めば、こんなにうまくいかないのが普通だと思うけど、ありがたいことに全員がすんなり依頼を受けてくれて、問題なく作業が進めることができたんだ。
──結果として、この4人の参加は本作にどのようなものをもたらしたと思いますか?
John:
そうだなぁ、彼らが持つそれぞれのユニークさかな。このレコード全体じゃなくて、4曲だけ特別にヴォーカルが必要だったから、レコードというよりは各曲にそれをもたらしてくれたと思う。Gary Numanはさっきもいったように俺がずっと聴いてきたヴォーカルだから、彼の特徴はよくわかってた。だからこそ彼がいいと思ったし、彼の書いた歌詞も素晴らしい。Kazuはファンだったし、彼女のヴォーカルのこともよくわかってた。EYEはBOREDOMSとフジロックか何かで一緒になったことがあって、彼のヴォーカルも素晴らしいとずっと思ってたんだ。Matias Aguayoも同じ。だから、何て言うかな……、彼らの何が良いとか、そういうのは言葉では説明できないんだけど、それぞれの曲にとにかく“マッチする”ヴォーカルを考えて、自分たちが知ってるヴォーカルの中から、それに値するアーティストを選んだって感じかな。直感というか、雰囲気というか。それぞれのヴォーカルがそれぞれの曲にパーフェクトにマッチしてるんだ。
──僕は「Africastle」、「Futura」、「My Machines」、「Rolls Bayce」といった曲がすごく好きだったのですが、本作の中であなたのオススメ曲はどれですか?
John:
選ぶのは無理(笑)! アルバム全体が好きだし、この作品はシングルが集まって出来たものじゃないしね。このアルバムは全ての人のための作品で、リスナーはひとつの塊をゲットするんだ。で、そのひとつの塊の中に色々なものが詰まってる。その全てが集まって、初めて"ひとつ"が出来上がるんだ。それってBattlesの魅力のひとつだと思うんだよね。
──非常にいろいろな音楽から刺激を受け続けておられると思いますが、特に本作の制作過程であなたが影響を受けて、その要素を作品に取りこんだ音楽などがあれば教えてください。
John:
さっき言った通り、俺たちはスタジオに閉じ込められてたから、出かけて他のバンドをチェックしに行くこともできなければ、クラブにも行かなかった。だから、作品を作る上で他のバンドに影響を受けたって感じはしないんだよね。今回のアルバムにコンセプトがあるとすれば、"自分たちがやりたいことは何でもやる"。誰々みたいに、とか、このジャンルみたいに、っていうよりは、自分達が○○をやりたいっていう方が強かったんだ。だから特に影響はないよ。イエスともノーとも言えないな……。俺たちの音楽スタイルは、当然自分たちが今まで聴いてきた音楽に影響されてはいるし……。だから、影響されてるとすればそういった全ての音楽。俺たちは、ラテンしか聴かない、とかじゃなくて色んな音楽を聴くから。答えるとすれば、自分たちが演奏してきた音楽とか、聴いてきた音楽すべてだな。
──単純に最近刺激を受けた音楽などありましたら教えてください。
John:
わからないなぁ……。他のふたりは毎日新しい音楽を聴いてるけど。俺は個人的には特にない。
──刺激といかないまでも最近注目している若いバンド、アーティストはいますか?
John:
これも難しい質問だね。常に変わるから。敢えて言うなら……、FLYING LOTUS 。あとは思いつかないね。俺はテクノやワールド・ミュージックを聴くんだけど、テクノは特に新しいものがしょっちゅう出てくるジャンルだから……。たくさんいすぎて選べないよ。
──では、あなたがドラマーとして最も影響を受けた作品、アーティストを教えてください。
John:
LED ZEPPELINとLUSH。とにかくこのふたつバンドを聴いて育ったから、一番影響を受けたと思う。
──あなたはHELMETやTOMAHAWKいった素晴らしいバンドでも活躍されてきましたが、Battlesでのプレイは他のバンドでやるときとはまた違ったものではないかと思います。Battlesでのプレイは他のバンドでのプレイとどのような部分が最も違いますか? またそうした視点からBattlesというバンドの魅力をあなた自身はどのように感じていらっしゃいますか?
John:
まず音楽が違うし、それから人も違うし、あと、Battlesは結成当初、他のバンドと違って“どこからともなく現れた”って感じのバンドだったのが違いかな。Battlesはバンドをはじめよう! という意気込みのもとスタートしたバンドではなかったんだ。最初は計画も何もなくてね。ツアーをやろうとか、レコードをだそうとか、そういうのは全部後からきたんだ。最初の頃はコンセプトもアイディアもなかったから、進行がかなりスローだった。でもTOMAHAWKのメンバーなんかは、すでに他のバンドに在籍してて、何か違う目的をやるためのセカンド・プロジェクトとしてバンドをやってたんだ。だから、その目的意識が機能してたんだよね。どんなレコードを出したいとかさ。Battlesはツアーよりも何よりも、とにかく何か新しいものを作る! ってのが一番だったんだ。バンドにとって最優先すべきものは、超クリエイティヴであること、そして完全に新しいものを作ること。それが他との違いかな。
──Battlesというバンドの魅力は、やはりそこでしょうか?
John:
そうだね。皆がその俺たちの努力を作品の中に見て、作品から聴き取れると嬉しいけど。俺たちは楽しみながら新しいものを作ろうとかなり努力してるから。それがリスナーに伝われってくれたらいいな。それって大切だと思うんだよね。ポピュラーになろうとするだけじゃなくて、新しいものを作ろうとすることって大事だと思うんだ。ビッグになろうとしないのは、ロックンロールっぽくないかもしれないけど。
──ちなみにニュー・アルバムのタイトル『Gloss Drop』にはどのような意味が込められているのでしょうか?
John:
コンセプトは特にないんだ。アルバムのタイトルは、アートワークからきてるんだよ。イメージからわかるのは、それがグロッシー(艶やか)なことと、ドロップ(しずく)のようだってことだから、それをそのままタイトルにしたのさ。短い言葉で、かつ見た目もいいし、クールに聴こえるからそう名付けたんだ。アートワークを明確に表現しててキャッチーでもあるしね。俺たちがタイトルをつける時は、意味とかよりもタイトルの印象というか、そのタイトルがどう見えるか、どう聴こえるかで決めることが多いんだ。
──ちなみにアートワークを手掛けたのは?
John:
Dave (Konopka)だよ。100%彼の作品。
──楽曲名は「Africastle」や「Rolls Bayce」のようにユニークな造語のようなものから、「My Machines」や「White Electric」といったズバリそのもの的なストレートなものまでいろいろありますが、どのようにして決めているのですか?
John:
正直、曲のタイトルは一番最後の作業なんだ。これも同じで、聴こえや見た目重視で決める。その曲が持つヴァイヴに合う言葉を考えるんだ。歌詞からとったりするっていうよりは、そっちが多いよ。格好良く見えるもの、聴こえるものをタイトルにするんだ。
──タイトルが決まるのは早いんですか?
John:
かなりね。自分たちでも驚きだけど。
──もうすぐ日本であなたたちのライヴが披露されますね。多くのファンが楽しみにしているます。あなたたちを待っている日本のファンにライヴの見どころ(新曲はがっちりセットに組み込まれているんですよね?)、そしてメッセージをお願いいたします。
John:
見どころって、でっかい動物のぬいぐるみをステージに置くとか(笑)? 今回のステージは今までと違うってことだけ言っとくよ。どう違うかは見てからのお楽しみ。サプライズにしたいから今は言わない。新曲はもちろん披露するよ! あとメッセージは……、まず地震のこと。俺たちは日本の皆のことを心から想っている。辛いよね。悔しいけれど、こういう事は誰にもコントロールできないから。それが世界っていう事実がこれまたもどかしいし、今回起こったことは本当に最悪だけど、俺たちは日本が再び立ち上がって、大復活するって確信してる。俺たちは、日本の皆を本当にリスペクトしてるんだ。あと、何故か自分でもわからないんだけど、日本のファンが俺たちの一番のファンだっていう感覚が俺の中にはあるんだ。リスペクトも、日本のファンに対する気持ちが一番大きいんだよな。他のバンドではわからないけど、Battlesとしては確実にそう。デビューして、初めてライヴをしたのはアメリカだったんだけど、2回ギグをやったあと、俺たちが3回目のギグをやったのは日本だったんだ。国外はもちろんのこと、バンドとして初めてに近いギグを日本でやったあの日のことは今でも忘れられないし、あの時日本のオーディエンスが見せてくれた愛は、俺たちにとって本当に意味のあるものだったんだ。自分たちが日本人っていう感覚さえあるよ。天災に負けず、頑張って欲しい。
