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Borisの最新作にしてメジャーからの初アルバム『New Album』が大きな話題を呼んでいる。Borisの最高傑作だと拍手喝采をおくる人もいれば、大きな「?」を浮かべて茫然とする人、あるいは強烈な拒否反応を示す人もいる。まったく面白いぐらいの賛否両論の嵐を巻き起こしているのだ。ただひとつ言えるのは、本作は聴く者が無反応でいることだけは許さないということ。その猛烈な毒素のようなサウンドで、リスナーの感性の何かを激しく揺さぶりかける。いったい本作とは、Borisの思惑とは何なのか……、(本作がBorisの最高傑作であると信じて疑わない派の)ライター、TAXIMがその大いなるミステリーに挑む!!

Interview : TAXIM
Photo : Miki Matsushima
New Album / Boris
NFCD-27306 2,800yen (tax in)
2011.3.16 on sale
New Album - Boris iconicon
  1. Party Boy
  2. 希望 -Hope-
  3. フレア
  4. Black Original
  5. Pardon?
  6. Spoon
  7. ジャクソンヘッド
  8. 黒っぽいギター
  9. Tu, la la
  10. Looprider
<Boris 『New Album』 Interview>
まず、東北地方太平洋沖地震の犠牲者の方々には謹んでお悔やみを申し上げます。
また、被災者の方々には、心よりお見舞いを申し上げます。

Boris 一同

(このインタヴューは2011年3月に収録されたものです)
──新作『New Album』はいろいろと謎があって、聞きたいことも多いんですが、まずはエイベックスからリリースに至るまでの経緯をお聞きしたいんですが。とりあえず〝メジャーデビュー″ということになるわけですよね?
Atsuo:
そこまで心機一転とかそういったものはないし、こういう取材では質問として外せない様で、毎回聞かれます。メンバー内ではそこまで特筆すべき点ではないと思ってるんですが。でも、「メジャー行きたい」って宣言すればすぐに決まるとかいう話でもないですし、いろんなタイミングがあったりしますから。担当ディレクターに興味を持って頂いて、徐々にエイベックスに固まっていった感じですね。
──ということは、以前からメジャーでリリースしたいという意向はあったんですね?
Atsuo:
たくさんの人に聴いてもらいたいというのは、常々、思っていることでもあるし、このタイミングでメジャーから出すのはいいんじゃないかという感触もあったので。
──エイベックスって"Jポップ王道"っていうイメージが強いと思うんですが、実は連綿とアンダーグラウンドな音楽のリリースもしてるんですよね。巷では「Borisがエイベックス!?」って騒がれてもいますが、僕はそんなに違和感はなかったですね。
Atsuo:
知ってる人にとってはそうですよね。エイベックスのアナザーサイドをね。
──ヘンなの出してますよね。それで新作なんですが、これまでのBoris作品と『New Album』を比べると、かなり傾向が違うと思うんですが、これはメジャー向けのアイデアなんでしょうか? 
Atsuo:
いや、エイベックスのリリースが決まる前に、もう半分くらいの曲は上がってました。『Attention Please』と『Heavy Rocks』という2枚のアルバムが5月にアメリカのレーベルからリリースされるんですが、昨年の7月に作業が終わっていて、その2枚を作った後で日本のリリースを検討し始めたんです。でもその2枚をそのまま出してもらうというのは結構ムチャな話だから。
──それはメジャーから2枚ということですか?
Atsuo:
そうですね、それはメジャー/インディー問わず、どこのレーベルにとってもムチャな要求なんですよ。これは海外でもそうだから。
──Borisでもダメですか?
Atsuo:
ダメですね。「1枚づつリリースしたほうが売れるよ」って絶対に言われるし。でも、僕らからすると、2枚同時に出さないと意味がない。だから、昨年はそこの交渉を方々でずっとしていた。それで日本でリリースするにあたって、まずはその2枚のアルバムをいくつかのレーベル・ディレクターに聴いてもらうなかで、エイベックス担当ディレクターからも反応があった。でも、その音源は昨年の7月に完成させた音だし、日本でリリースするなら、もう1枚作ったほうが面白いものが出来ると思って勝手に作業は進行させてました。
──そこで作っちゃうのが凄いですよね。
Atsuo:
それで2枚のアルバムから今回の『New Album』に収録する曲をピックアップしつつ、新曲も追加して国内盤仕様を作ったんです。以前から成田(忍)さんと仕事をしたいと思っていたので、このタイミングでプロデュースをお願いできたら、凄いものになるんじゃないかという予感もあって。
──以前から成田さんとは面識があったんですか?
Atsuo:
『Heavy Rocks』(5月リリース予定)でD-DAYの川喜多美子さんに1曲歌ってもらってるんですが、そのときに美子さんから紹介して頂いて、新作の構想を聞いてもらったんです。そうしたら、成田さんも興味を持ってくれて、スケジュール調整も問題なかったので……。まだリリース先が未定な状況ではあったんですが。
──成田さんに決めた理由とは何だったんですか?
Atsuo:
前作『SMILE』(08年)の作業をしていた頃かな。D-DAYの『HEAVENLY BLUE』(07年)というアルバムを聴いて、そのキレ具合がもの凄かった。気になってクレジットを確認したら、プロデュースとサウンドメイキングを手がけていたのが成田さんだった。はっきり意識したのはそのときかな。4-Dとかもちろん持ってましたが、ふと気づくと、僕の持ってるレコードやCDの至る所に"成田忍"というクレジットがあるわけですよ。
──例えば具体的にそのタイトルを教えてもらえますか?
Atsuo:
いちばん好きなアルバムだと、D'ERLANGERの『BASILISK』(90年)ですね。
──おおっ、アレは最高ですよね。
Atsuo:
うん、最高ですよね。アレはマジで凄い。それに、D'ERLANGERやDEAD ENDが復活して、その辺のムーブメントが個人的にキテたせいもあった。そうすると、いろんなポイントで"成田忍"の名前を目撃するようになって、さらに興味に拍車がかかった。そこから、成田さんが昔やってたURBAN DANCEや過去仕事をいろいろ掘ってみたんですが、何がやりたい人なのかが、全然わからなくて。でも、そこがとても共感できたんですよね。
──ハハハ、そこですか。
Atsuo:
なんかよく理解できないんだけど共感できるというか。
──いや、それはわかります(笑)。
Atsuo:
それで、中野腐女シスターズ/腐男塾なんかの、最近手がけられたアイドル仕事も聴いたんですが、4-Dからヴィジュアル系、そしてアイドルまでと、その振り幅のダイナミズムが興味深くて、成田さんにならBorisを受け止めてもらえそうだと思ったし、面白いことになる予感がしたんですよね。僕の見解を言えば、成田さんの仕事って、先々、大きな評価がされると思ってるんですよ。音楽とヴィジュアルの間を埋めた人、であったりだとか、ジャンルとジャンルを繋げていく、いろいろな隙間を埋める重要な仕事をたくさんされてきた人物。
──仰る通りだと思います。あらためて成田ワークスを聴いてみると、たしかに面白いことをやられてるんですよね。だってYMOとヴィジュアル系を繋げた人でもあるわけですから。
Atsuo:
そうですね、あの影響の仕方はすごい。『New Album』は、成田さんのスタンスがわかる人には、より楽しめる作品になってるんじゃないかな。成田さんも今回は徹底的にやってくれましたので。
──具体的な作業というのはどういった感じで進めていったんですか?
Atsuo:
『Attention Please』と『Heavy Rocks』の2枚の中から、成田さんと一緒に選曲しつつ、新曲も作るということになっていって……。選曲したものに関してはデータを渡して、成田さんに自由に広げていただきました。ほとんどが〝リアレンジ″というかたちですね。
──ああ、そうだったんですか。凄い。
Atsuo:
新しく作る曲に関しては、僕らで録音を進めつつ途中から成田さんにも参加してもらって、みんなで最終形まで仕上げていきました。
──今回はインプロヴィゼーションは抑えられて、コンポジション(作曲)に力を入れて制作されたように感じたんですが、実際はどうだったのでしょうか?
Atsuo:
そう聴こえるのは成田さんの手腕によるところで。
──うおっ、そうなんですか?
Atsuo:
新曲のレコーディングもいつもどうり作曲しない方向、気分で適当にインプロ、ジャムを録っていって、それをエディットしたりして作ってますね。
──ええっ、そうなんですか!?
Atsuo:
曲構成ぐらいまでは自分たちで編集して、その音源データを成田さんに渡しました。成田さんに全体を作りこんでもらうと、所謂、一般的な認識での「音楽」に接近していく。でも、そこにリスナーは誤魔化されてしまう。曲を分解してみると、やっぱり設計・作曲されたものとは違いますからね。「ここなんか1回多くない?」みたいな。
──ハハハ、なるほど。
Atsuo:
そんなパーツがどうしても残ってしまうんですよ、Borisは。そこを成田さんがいかにつめていくかというのが『New Album』の重要なポイントになっていると思います。「ここ1回しかないけど、どう捉えたらいいの?」とか、そういう既成の文脈から外れる部分を成田さんが擦り合せしていってくれる。作曲する/しないという部分において、コンポジションがしっかりとあるような楽曲をBorisは持ち得てないので、成田さんが「音楽」に聴こえるようなテクスチャーを僕たちの楽曲に乗せてくれることで、何か面白いものができるんじゃないかという読みは最初からありましたね。
──たしかに音楽と非=音楽のせめぎ合いみたいな部分は、今回、さらに強調されてるのかもしれないですね。本作は前評判でアニソンとか言われたりもしてますよね。
Atsuo:
はい。
──アルバムを曲ごとに聴いていくと、ヴァラエティ豊富な内容で、統一感は感じないんですが、通して聴いた印象は「アニソン聴いた」とも言えちゃうような、妙な質感がありますね。
Atsuo:
(笑)。
──そこはやはり"成田マジック"なんでしょうか?
Atsuo:
そうですね。今回のレコーディングでいちばん振り切った部分というのは、すべてをデスクトップの中で完結させる、ということでした。最後のミックスまで、全部デジタルだけで完結させるという。
──ああ、納得ですね。
Atsuo:
成田さんの使用音源やアレンジ作業も、すべてパソコン内でやりましたね。そういうデジタル臭さとか構造が、アニソンと繋がる部分なのかもしれないですが、具体的にどこがそうとかは一概には言い切れないですね。
──本作はBorisの国内認知度を上げることに貢献できるアルバムだと思うんですが、その反面、自身の首も飛ばしかねない、諸刃の剣のような内容でもありますよね?
Atsuo:
いや、全然そんなことないですよ。表面的にはメジャー然としたことをやったように聴こえるかもしれないですが、それはリスナー次第ですから。例えば、Merzbowの作品を「音楽」として捉えてる人もいるわけだけど、そういう人たちにすれば、今回のBorisは逆説的に凄くノイジーに聴こえるかもしれない。そういう意味では、音楽にもなるし、ノイズとしても聴くことができる、相反する要素をひとつにした作品ができたという実感があった。だから『New Album』は最高傑作だと思ってるんですけど。
──おおおおっ! じゃ、これがBorisだという認識でオッケーだということですね?
Atsuo:
はい。
──とはいえ、近年、ジャームッシュ作品などの映画音楽も手掛けたりして、アート系のファンも増えたと思うんですよ。
Atsuo:
そうかもしれないですね。
──いや、ネットを見てると「BorisってSUNN O)))と一緒にやってるんだ」とか、今更なこと言ってる人たちもいるので、新たなファン層の開拓にも成功していると思うんですよね。それにも係わらず、こういう作品を出してしまうと、一気に人が離れていってしまうような気もして。
Atsuo:
とにかく、新しいことをやらないと意味がないと思いますよ、表現は。まあ、逆に気になると言うか…。ジャームッシュ(『リミッツ・オブ・コントロール』09年)に使われて、昨年は『告白』(中島哲也監督)に曲提供して……でも、それだけだと〝アーティスト″みたいじゃないですか?
──えっ、イヤなんですか?
Atsuo:
いや、僕らそんな仰々しいものじゃないし、ロックってもっと下世話なものだし。周りから押しつけられる"アーティスト観"というのは不本意というか。この間もATP(All Tomorrow's Parties/11年2月27日『I'll Be Your Mirror』@ 新木場STUDIO COAST)に出させてもらったんですけど、そういうのも〝アーティスト観″に拍車をかけてるところがあるからな、なんとなく……。
──居心地が悪い感じがあるんですか?
Atsuo:
いつもありますよ。でも、新しいことをやろうとすれば、それはやはり受け入れられ難いし、かと言って、いきなりわかるようなものは新しくはないから。
──現在、日本のバンドで、Borisがもっとも海外で活動してるといっても過言ではないと思うんですが、海外でこれだけやってるからこそ、本作のようなオタク/V系インスパイアのアプローチが取れたのではないでしょうか。アメリカには94年からOtakonなんかも開催されてたりするし、ヴィジュアル系も日本とは違う形で認知されてますからね。
Atsuo:
僕は"アーティスト観"というのは、ある種の制限だと思うんですよ。いまネット上で「売れ線に走ったか!?」って言われたりもしてるんですが、売れようと思ったらもっとアーティスティックでオシャレなモノのほうが全然売れる。
──本当にそうですよね。
Atsuo:
僕は同人音楽もアニソンもヴィジュアル系も聴くんですが、そういった人たちのほうが、アーティストやバンドというものよりも、伸び伸びと音楽に取り組んでるような気がしたんですよね。音楽を"ミュージシャン"という枠組みのなかで考えてなかったりするじゃないですか。例えばアニメの主題歌って、アニメという世界観のためにデザインされた音楽だったりするわけですよね。それってミュージシャンという枠組みを簡単に超えてたりもするし。もう「全然、修正オッケー」で、歌の長さをメチャクチャ縮めて早口にしたりだとか。『らき☆すた』の主題歌(「もってけ! セーラーふく」07年)なんて当時マジで衝撃でした。
──アハハ、なるほど。
Atsuo:
ヴィジュアル系も、まともに音楽として扱われてこなかった歴史がありますが、進化の仕方とか想像を絶する部分があって、ここ何年かは、僕にとってとても刺激的なジャンルのひとつですね。ただ、そういうシーンの音自体というよりは、マイノリティ・ミュージックとしてのスタンスに特に共鳴する。Borisも国内では散々除外されて来てる立場なので(笑)。
──D'ERLANGERは近年聴かれたんですか?
Atsuo:
いや、当時からですね。
 
──当時、D'ERLANGERのどこに反応したんですか?
Atsuo:
D'ERLANGERってダークでしたよね?
──ああ、そうですね。
Atsuo:
元々、トランスレコード(80年代にあった日本のインディーズ・レーベル)とかが好きだった。D'ERLANGERもダークなものとして捉えてたところはありましたね。
──Wataさんがソロ作でカヴァーしたCanis Lupusの「Angel」(「She's So Heavy」収録/07年)も凄かったですね、選曲が。
Atsuo:
当時からCanis LupusもYBO2も好きでしたからね。
──ことごとく音楽ジャーナリズムから黙殺されてるものばかり持ってきますよね?
Atsuo:
そうですね。でも、そういう部分は意識せざるを得ませんね。僕たちが取り上げないと誰もやらないとも思うし。そういえば、SODOMの復活ライヴも行きましたよ。
──あっ、そうなんですか。僕も観たかったんですが逃しました。
Atsuo:
僕は地方出身なんで、当時、好きなバンドのライヴが全然観れなかったんですよ。だからその分、妄想が肥大してる部分があると思う。あと、そういった当時のシーンがメディアから黙殺されなきゃならない理由にも実感が持てない。それに、YBO2とは00年の復活後に2回ぐらい対バンさせてもらったこともあって、そのときのYBO2のギターが栗原(ミチオ、現在Borisのサポート・ギタリスト)さんだったりもして、栗原さんとはそこから繋がっていった部分もあった……。 話が逸れましたが、所謂「音楽」というものより、アニソンやヴィジュアル系のような"デザインされてる音楽"のほうが、実際に動員力もあったりするし、もうすでに状況は裏返ってますよね。現代における音楽の自由な響き方というか、キャラクターという概念を通して音楽を消費していく日本の状況は、とても面白いと思う。間違いなく、日本がいちばんエッジーですよ。
──アニメやヴィジュアル系の話ができる海外のバンドっていたりするんですか?
Atsuo:
ツアーにサポートでついてくれるようなバンドには、初音ミクのライヴ映像とか観せますけどね。
──でもストーナー系のバンドとかには、やっぱりバカにされたりしませんか?
Atsuo:
そうでもないかな。わりと理解がありますよ。面白いことがあって、逆に「じゃ、これ観てよ」って薦められたんですが。「Double Rainbow」で検索すれば、YouTubeが出てくると思うんですけど(http://www.youtube.com/watch?v=OQSNhk5ICTI)、これがそのタグの通りに、二重の虹を目撃した人が、ただ「ダブルレインボー!? ダブルレインボー!?」って狂喜して叫んでるだけの動画なんですよ。それで、この動画を観た誰かがオートチューンでその叫び声にメロディをつけた動画が凄い話題になって(http://www.youtube.com/watch?v=MX0D4oZwCsA)、その音源がiTunesで売られるようにまでなったりして、ちょっと日本とは在り方が違う気がするんですよね。リアルな会話や文章にメロディをつけていくような、リアルな素材を創作に持ち込む発想がアメリカにはあるんですね。でも、日本だと真逆で、キャラクターのような器をまず用意してから、その中にリアリティをつめていく。創作物におけるリアリティの在り方が、アメリカとは全然違うんじゃないかなと思って。自分自身、日本で育ってるし、キャラクターにリアリティを充填するという日本的な手法のほうが、実感を持って理解できるんですよね。海外で自分たちの民族性を実感することは多々ある。今回、新しいことをやろうと思ったときに、自然とこういう内容になったところもあるんですよ。
──『New Album』の背景がとてもよく理解できる話ですね。たしかに、新作はこれまでのBoris作品とは傾向も文脈も異なるものだと思うんですが、これまでの人脈にいる人たち、例えばSUNN 0)))の2人に批判されたりすることを危惧したりはしませんでしたか?
Atsuo:
全然ないです。
──そこも凄いと思うんですよね。一緒にやってきた人たちに怒られる可能性も十分にある作品だと思うんですよ。
Atsuo:
僕は身内には笑われるぐらいじゃないとダメだと思ってるんで(笑)。
──おおっ、それはすばらしいですよ、本当に。
マネージャー:
スティーヴン(オマリー)は気に入ったと言ってましたね。
──えっ、マジですか! でも、スティーヴンさんなら、そう言いそうな気もするな。グレッグ(アンダーソン)さんのほうはどうだったんでしょうか?
Atsuo:
あいつは別にどうだっていいですから。
一同:
(爆笑)
──外人だけじゃなくて、栗原さんや石原洋さんとかの感想も気になるんですが。
Atsuo:
いま、栗原さんとは"絶賛リハ中"です。「いやー、いちばんわからないところで……」って言われました(笑)。
──でも、そこで弾く栗原さんのギター・プレイというのは気になりますけどね。だって新領域じゃないですか。
Atsuo:
そうなんですよ。今回も栗原さんにはいろいろやってもらいたいので、結構、無理強いさせちゃってる部分もあります。でも、どんなギター・プレイが飛び出すか楽しみでしょ?
──それは楽しみですね、あと、曲単位の話なんですが、なんで「Party Boy」を試聴曲に選んだんですか?
Atsuo:
成田さんと実際に作業を始めて、いちばん最初に上がってきたのが「Party Boy」だった。最初に聴いたとき、僕自身が真っ白になった。「なんだコレは!?」って。かつて聴いたことがない、衝撃的な仕上がりだったので、その驚きをリスナーの方々にも同様に体験してもらいたかった。
──新作をすべて聴いた後だと「Party Boy」の新機軸感はバランスが取れていて、試聴には向いてたような気がしたんですよね。だって、最初に聴く曲が違う曲だったら、事態はまたすごく変わってくると思うんですよ。「ジャクソンヘッド」なんて、SOFT BALLETみたいだし、この曲は完全にEBM(エレクトロニック・ボディ・ミュージック)ですよね? 
Atsuo:
SOFT BALLETのDVD見たんですけど、ライヴ時に右側のキーボードの人(森岡賢)が、Tバック姿で踊ってるんです。それが凄いカッコいい。リズムもツインドラムでマシンビートを叩き出してるし。
──やはりチェックしてるんですね。
Atsuo:
はい。成田さんもSOFT BALLETの作品でギター弾いてたりしますし。でも、他の人からも指摘されましたよ、「ジャクソンヘッド」はSOFT BALLETみたいだって。
──ああ、やっぱり。
Atsuo:
成田さんは否定してましたけど(笑)。
──そして「Black Original」は再録ですね。
Atsuo:
はい。
──これがいちばん"URBAN DANCE感"に溢れてる曲だと思ったんですが、再録した理由もそこですか?
Atsuo:
うーん、なんで入れたんだろ? 一連のシングル・シリーズ(「Japanese Heavy Rock Hits」09年)の中で、僕は「Black Original」がいちばん気に入ってるんですよね。
──僕も大好きですよ。
Atsuo:
アリガトウゴザイマス。でも、この曲が収録されてる「Vol.2」って、いちばん評価が低いようで……。
──ああっ。
Atsuo:
僕がジャケットなんで(笑)。でもやっぱり曲のタイプによって、成田さんがアプローチしやすい曲調ってあるんですよね。それで言うと「Black Original」はうまくハマると思いましたね。たしか「Black Original」を作ってた頃は安全地帯ばかり聴いてたかな……。
──うわ、そうなんですか!?
Atsuo:
安全地帯のアルバム『Ⅱ』『Ⅲ』『Ⅳ』はヤバイですよ。
──マジですか! そういう情報ってバンド内でコンセンサス取れてるものなんですか?
Atsuo:
取れてますね。
──ウエー、凄いなぁ。
Atsuo:
車内で安全地帯を爆音でかけながらの移動。都心部に入ると絶対に窓を開けられないですから(笑)。
──スリリングですよね(笑)。でも「これはナシだろう」っていうやり取りもあるわけですよね?
Atsuo:
まあ、そうですね。基本、Wataは距離を置いてる感じですけどね、すべてに(笑)。大体、彼女は何にも動じないんで。
──たしかに動じなさそうですね(笑)。思ったんですが、Borisの凄いところって、まずは日本語詞ですよね。それと、ちゃんと歌メロが存在するところではないかと。だから、こういう楽曲を海外に持っていけたのは、実は偉業だと思うんですよ。
Atsuo:
そうですね。
──特殊なサウンドスケープを描くとかよりも、実は日本語で歌ってることのほうが凄かったりして。
Atsuo:
対日本人にはあまりにも普通のことすぎて偉業感全くないですね(笑)。
──そうそう、日本人が聴けば、当然のことですからね。でも、以前に何かのインタヴューで読んだのですが、海外公演だとうろ覚えの歌詞をデタラメな日本語でシンガロングする外人のお客さんも多いとのことで、これは凄い光景だと思うんですよ。だから、言い方は難しいんですが"J感覚"のようなものを、Borisは意識的にキープするようにしているのかなとも思ったんですが。
Atsuo:
一緒に歌えるという事は基本としてる部分があります。活動をしていくなかで、意味を持たない声から徐々に日本語に変わっていったんですが、当然、英語より日本語のほうが責任が持てるし、自分たちが感じたニュアンスを投影しやすいんですよね。いまはまた少しづつ変化があって、歌詞に〝カタカナ英語感″の盛り込みが強くなってきてる。
──そう、今回は歌詞も凄いですね。
Atsuo:
アリガトウゴザイマス。でも、歌詞って皆さんにどう受け止められてるかよくわからないんで。
──それは"イメージが横滑りしていくような感覚"ですかね。
Atsuo:
ハハハ、それいいですね。
──言語レベルにもヴィジュアル感がありますよね。
Atsuo:
歌詞の方法論もいつもアップデートさせようと考えてはいるんですが、最近は自分たちなりのカタカナ英語感を開拓してますね。カタカナ英語って、英語のような英語ではない日本語という面白さがあるから。そういう方向を取り込みつつ、その曲から見えてくる世界、映像、声を描写していくような感じですね。
 
──『Attention Please』と『Heavy Rocks』ですが、その2枚と『New Album』の住み分けやアイデアの分配というのはどうなってるんですか?
Atsuo:
『Attention Please』はWataが全曲ヴォーカルを取っていて、『Heavy Rocks』のほうは、再度、現代におけるへヴィロックを提示しよう、という感じです。でも、捉えようによれば『New Album』のほうがへヴィだとは思うんですけどね。『New Album』はアイデンティティやオリジナリティをもっとも排除して完成できた作品だし、それはバンドにとってもいちばんへヴィなことだとも思う。だから、へヴィネスを突き詰めた結果がこの『New Album』に帰結してるんです。
──身体/精神の両義的な意味でのへヴィネスがこの新作に極まっているということですね。
Atsuo:
例えば、ボカロ、初音ミクを取り巻く状況っていうのは凄いへヴィじゃないですか。人々の妄想というのは、すでに人間には担えない状態に、もはやなってるんですよ。キャラクターにしか妄想を投影できない状況から、日本独自のへヴィネスが見えてきているというか。決して否定してるわけでなく、文化として突出している。こんな国は他にはないですから。
──これまでのBorisも音楽性のレンジはとても広くて、この作品は好きだけどこっちは嫌いということが普通に成立してしまう活動内容だったと思うんですが、その振り幅が本作で更に拡張されたわけですよね。だから、同一バンドが持ち得る振り幅を超えた活動をすると、その要素がただのネタに思われたりもするのではないかと。例えば、今回のネタはドゥーム、次回はアニソン、みたいな風に。そこで、ネタとベタみたいなことは考えてたりもするんですか?
Atsuo:
いや、すべて全力投球ですよ。
──おおっ!
Atsuo:
"ネタ"とか"釣り"って言われたりもするけど「ふざけんな」って。こっちはいつでも本気ですからね。そんな冗談なんかやってられない。そこまで余裕もないです。でも、外側にはネタとして見えてしまう。そういう状況はとてもリスキーではあるんだけど、作り手としては自分が感動したものや、好きなものを自分の作品を媒介にして、リスナーと共有していきたい。それが作り手側の誠意だと思う。本当に面白いと思えるものしか出したくないし、ただマジメにやってる……いや、たぶん、マジメに。
──あと、Borisというバンドには「物語」がないと思うんですよ。例えば、海外のバンドだとウィード信仰だとか、ペイガニズム的な観点で文明批判をするだとか、バンドが何かしらの物語に接続されてることが多いと思うんです。でも、Borisにはそういう物語がないんです。だけど、そこが素直に日本人のメンタリティだとも思うし、これだけ海外で活動ができていながら、それらの物語に巻き込まれないでいるのにはシンパシーを感じます。
Atsuo:
ガンダムって、全シリーズ合わせて大きな"ガンダム物語"になってるんですけど、ひとつひとつは独立してたり、繋がってたりするじゃないですか?
──そうみたいですね。ファースト・ガンダムを知らなくても楽しめるように作られてるみたいだし。
Atsuo:
うん、だからそういう感じ。
──ええっ、全然わかんないですよ!!
Atsuo:
だから、Boris内にはそういう平行世界的なものもあったりして……。
──ハハハ、無理ですよ。
Atsuo:
わかんないかなぁ(笑)。
──あと、ライヴも予定されてるんですよね?
Atsuo:
いま、ツアーの準備をしてるところで、同時期に3枚のアルバムが出るので、その中からと既発曲も含めてセットリストを考えてるところです。
──どのようにこれらの曲が再現されるのか楽しみですよ。
Atsuo:
全部カラオケでもいいんですけど。
──それ、やったら凄い! ミク化するBorisですか(笑)。
Atsuo:
早くCGになりたいですね。
──名言でましたね(笑)。
Atsuo:
機械の身体はいらないからCGにして欲しい。
──ハハハハ、先日のATPでは2曲目に新作から「フレア」をやられたみたいですが。
Atsuo:
はい。
──その「フレア」をやった2曲目で、フロアから人が一気にいなくなったという話を聞いたんですが、実際はどうだったのでしょうか?
Atsuo:
そうなってもいいとは思ってました。
──(笑)
Atsuo:
灰野(敬二)さんが始まった時間だからだよ、って逆に慰められたりもしました(笑)。
──新作の中でもある意味いちばんへヴィな曲が「フレア」ですよね。だって『仮面ライダーディケイド』で流れる、Gacktの曲(「Journey through the Decade」09年)みたいじゃないですか?
Atsuo:
(笑)
──ライヴで「フレア」を2曲目にやったというのは凄いと思いますよ。
Atsuo:
ATPのお客さんに共有されなくて引かれたなら"アーティスト"という部分からはみ出せたんじゃないですかね。常にリスナーには伝えたいし、共有もしたいと思ってやってますけど、でも同時に「絶対、誰にもわかるわけがない」という気持ちもあるんですよ。そんな簡単に理解されても困ってしまう。体はっていろいろな国を行き来して見えて来るイメージ、そういう視点とか簡単に共有できるものじゃないと思ってます。普通のバンドとして捉えられてしまうと誤解が誤解を生む側面もある。でも、ディケイドとは……。
──Gacktのミュージック・ヴィデオがまた最高なんですよ。
Atsuo:
もちろん知ってますよ。平成ライダーもずっと観てますし。
──おお、さすがだ。でも、Gacktとのツーマン・ライヴとかも期待させてくれるようなアルバムになってませんか?
Atsuo:
ないない(笑)。
──このアルバムはヴィジュアル系の人にも聴いてもらいたいですね。BUCK-TICKの今井寿さんとかなら理解ありそうな気がしますけど。
Atsuo:
成田さんが言うには、Borisに含まれる音楽的素養は、オールドロック成分らしいんですよ。でも、現在のヴィジュアル系バンドの人たちは、90年代以降の音楽にしか影響を受けてないみたいで。だから、決定的にバンドに入ってる情報の質と量が違うって、言われましたね。
──納得の見解ですね。ほかに気になってる日本のバンドってありますか?
Atsuo:
年末年始はずっと吉川晃司のDVD-BOXばかり観てましたね。
──いま、また吉川がアツイですよね。ダイノジが仕切りでファン投票によるベスト盤がリリースされたりするみたいだし。
Atsuo:
『仮面ライダーカブト』劇場版主題歌に続き、『仮面ライダーW』にも出演して、また盛り上がってますね。
──そういえば、歌詞におけるカタカナ日本語感って、吉川にもありますよね?
Atsuo:
ありますね。『MODERN TIME』(86年)というアルバムを聴いてみてください。後藤次利の編曲がもう凄すぎ。
──えっ、そんなよかったでしたっけ?
Atsuo:
当時、『BEAT CLUB』というテレビ番組でやった「PSYCHEDELIC HIP」という曲の動画がYouTubeに上がってるんで観てくださいよ。シンベ(シンセ・ベース)とチョッパーのダブルベースがメチャメチャかっこいい!
──わかりました、チェックします。今回、話を聞いて思ったんですが、『New Album』というのは、言うなれば"日本のロック"をテーマにした作品ということにもなるのではないですか?
Atsuo:
日本のロック……。自分の中では日本のロックが面白いと、全肯定もできないし、それは世界の音楽と照らし合わせて聴いたときに、面白く響いてくるものだったりする……。一概に何が面白くて、何がつまらないなんて言うことは、不可能な時代ではありますよね。そんな状況下で、何を新しいとするかってことは更に困難になってきてる。
──でも、そんな状況の中でも、ちゃんと葛藤しながら、作品を作ってる感じは受けます。簡単に海外には巻き込まれない感じというのもあるし。
Atsuo:
その時々で自分がアツくなれる音や、心底楽しめるものから受けた実感を"ギュッ"と濃縮して作品を作っていくしかない。作品というのは、そのバンドのドキュメンタリー的な要素を、どうしても孕んでしまうものなので、作り手としてはただ正直にやってるつもりではあるんですけどね。
──その辺の誠実な姿勢も面白いところですよね。だって、普通にハッパのジャケットのアルバムとか出しても、Borisなら成立したりもすると思うんですよ。
Atsuo:
そんなのやらないですよ(笑)。
──そう、絶対やらないという感じがありますよね。ジャケットにしてもハートマークだったりするし(『SMILE』)。そういう部分は裏切らないってリスナーの方々も感じてると思います。
Atsuo:
そこまで見てくれてるのは、本当にありがたいですね。そこの誠実さみたいな部分は、なかなか伝わり難いところなので。とはいえ、こんな小難しい話はどうでもよくて、もう楽しんで頂ければそれで十分です。本当に。新作は面白いと思うので、ぜひ聴いてみてもらいたいですね。
Boris
92年より活動開始、96年にTakeshi(Vocal / Bass / Guitar)、Wata(Guitar / Vocal)、Atsuo(Vocal / Drums)という現在のメンバー編制へ。活動当初よりワールドワイドなスタンスを志し、96年からはじめた海外ツアーも03年以降はほぼ毎年行う。現在はサポート・ギターに栗原ミチオを迎え、繊細かつ流麗な静寂パートから、眼球を揺らす正に‘体感’する轟音パートまでのダイナミクスをもって他に類を見ないライヴを展開。08年中はNINE INCH NAILSのUSアリーナ・ツアー・サポートをはじめ、ライヴハウスから大規模なフェスまで、21カ国で100本のライヴを敢行した。音源制作ではヘヴィロック/パワー・アンビエントの殿堂Southern Lord(US)とDaymare Recordings(日本)を拠点に世界中で数々のレーベルと交流を持ち無数の作品を発表、様々な音像と徹底的にこだわったアートワークを提示してきた。代表作の『Pink』(06)、『Smile』(08)、SUNN O)))との共作『Altar』(07)はいずれも全世界で10万枚に迫るセールスを記録、世界の先鋭的音楽シーンの最前線で圧倒的な存在感を示している。09年には2枚のスプリット盤と3枚の連作シングルをリリース、鬼才映画監督Jim Jarmuschの最新作『The Limits Of Control』にメイン・アーティストとして楽曲を提供。さらに10年には全国東宝系にて公開される松たか子主演映画『告白』に書き下ろし新曲を含む楽曲6曲を提供し、国内外で話題を呼んだ。同年6月にヘヴィロック・サイドに焦点を絞ったベスト盤的選曲のCD『Variations』と、約2時間に及ぶ代官山Unitでのライヴを収録したDVD『Live in Japan』の2枚組を、8月には東京でレコーディングを行ったIan Astbury (THE CULT)との新バンドBXIのデビュー作をリリース。同年のライヴ活動では5月にATP (キュレイター: PAVEMENT)、Vivid Live (キュレイター: Laurie Anderson & Lou Reed)という2本のフェスに招聘され、前後にイギリス/オーストラリアでの単独公演も敢行。7月からは5週間に及ぶUSヘッドライン・ツアーを行い、9月のATP NY(キュレイター: Jim Jarmusch)では盟友SUNN O)))と『Altar』を北米で初めてプレイした。音楽活動以外にも活発に動き、Helmut Langの秋冬コレクションにデザインを提供したBorisの別名義fangsanalsatanでは、アートワーク/マーチャンダイズのデザイン、レコーディング、映像制作、及び周辺アーティストのプロデュースを手掛けるなど、その活動範囲は広がるばかりだ。2011年は3月にメジャー初リリースとなる日本での最新作『New Album』を発表、さらに『Attention Please』『Heavy Rocks』という2作の最新フル・アルバムを全世界でリリース予定、夏からは大規模なワールド・ツアーを行うことになっている。
Boris OFFICIAL WEBSITE
http://www.borisheavyrocks.com/