<HER SPACE HOLIDAY Special Interview>
──あなたがHER SPACE HOLIDAYでの活動に終止符を打つというニュースは、ここ日本でも話題となり、寂しく思っているファンもやはり多いです。まずはその経緯からお聞かせください。
Marc :
HER SPACE HOLIDAYをやめるっていう結論を避けられないってのはわかっていたんだ。大きなことであれ小さなことであれ、すべてのものに終わりはくるんだから。ただそのタイミングが実際いつになるかわからなかっただけなんだ。最終的な決断は、2年ぐらい前、日本にいたときに下したんだ。ヘネシーのパーティに出演したときにね。日本にいる間中、自分が自分でないような気がしたんだ。かつて存在した概念の面影のような感じだった。演奏するためにステージにあがったときに思ったんだ。これはもう僕のやることでもないし、僕自身ですらないってね。動揺したりショックを受けたりとかはなかったよ。ただ疑いようのない事実があっただけなんだ。空が青いとか地球は丸い、と同じようにね。
──HER SPACE HOLIDAYでの最後の作品『HER SPACE HOLIDAY』は、プロジェクト名を冠した表題からも伝わってきますが、HER SPACE HOLIDAYのすべてを詰め込んだ集大成的な作品になっていると感じました。あなたにとってもHER SPACE HOLIDAYとして作る最後の作品になるわけですが、このアルバムでどのようなことを表現しようと考えていましたか?
Marc :
このアルバムのレコーディングはとても奇妙で、濃い体験だった。ある部分はとても自然で穏やかだった。その一方で、焦点がぼやけてしまうこともあった。このアルバムを作ることで、自分自身について多くを学んだよ。特に、人生が導く方向に逆らわないようにするということについてね。このレコードで特になにか表現したかったことはないんだ。ただ自分が誇りに思える最後の作品を作りたかっただけなんだ。僕自身といいえるようなね。
──本作では、これまでのひとりきりでの制作スタイルを捨て、プロデューサーにStephen Ceresiaを起用し、彼のSunday house studioにて、多くのゲストを迎える形でレコーディングしたと聞いています。こうしたスタイルで制作しようと考えたのはなぜだったのでしょうか?
Marc :
このアルバムはスティーヴンとスタジオに入る前に完成してたんだ。実は全然違う作品だったんだ。とても生々しく、曲の半分は実際にリリースされたものとは違う曲だった。アルバムのリリースが近づくにつれて感じていたこととムードが合わないって思ったんだ。最初にこのアルバムをレコーディングしたときに比べて、全人生がひっくりかえったような気がしたよ。スティーヴンとは共通の友人を介して出会って話すようになって、彼がこのアルバムを手伝うって言ってくれたんだ。自分のレコードでずっとやってみたかったことがあって……、フル・ストリング・セクションや合唱団、管楽器とかね。だから、今、やれるうちにやるべきだと思ったんだ。それで友達に電話して参加してもらうために集まってもらったんだ。
──このNew Audiogramというメディアは90年代の日本のハードコア・シーンに端を発し、そこから広がっていたロック、エレクトロニック・ミュージックを主にフォローしているメディアでもあるので、ぜひ聞きたいのですが、あなたがかつてIndian SummerやCalmといったハードコア・パンク・バンドで活動していたことはファンには知られてるところですが、ハードコア・パンクを通してあなたが得たものとはどういったものでしょうか?
Marc :
僕の音楽人生は、ハードコア・シーンから学んだことのおかげで、一周して元に戻ったみたいだ。僕たちは自分たちのレコードをリリースし、メール・ディストリビューションして、すべてのことを自分や友だちだけでやってきた。日本では& recordsがリリースしているけど、その他の地域ではこの最後のアルバムは僕自身でリリースしたんだ。流通も確立して、レイアウト(日本以外のね。日本では北沢平祐 or PCPがやっていくれている)やウェブ・デザインのすべての段階を一緒にやって……とかね。レーベルの人間とやりとりしたり、レヴューやライヴの動員を気にしたりというようなことで、我を失うようなことがたくさんあったんだ。音楽がビジネスになると、すぐにモチベーションや期待といったものから、すべてを変えてしまう。気が付いたら、ここ数年いたシーンより、ハードコア・シーンにいた頃にやっていたやりかたに近づいていっていたんだ。自分のやりかたでやれば、自分以外誰も自分の未来をコントロールできないからね。
──いま改めて、HER SPACE HOLIDAYというプロジェクトのコンセプトを教えていただけないでしょうか。
Marc :
初期の頃、HER SPACE HOLIDAYの意味やコンセプトを聞かれたとき、特定の答えを言おうとしてたんだ。その方が、僕のことをよく理解してもらえるんじゃないかと思ってたんだろうね。でも落ち着いてくると、経験から得ているものが、期待していたものからほど遠いということに気づいたんだ。HER SPACE HOLIDAYをやっている間、純粋な気持ちから、ただひたすら音楽への愛のために創造していて、結果はどうでもいいっていう時がたくさんあった。それから、人間として、音楽家として、完全に道に迷ってしまうときもたくさんあった。自分自身の価値が、自分の努力の成果と分かちがたく結びついていると、とても大変なことになる。人生の主な目標は、自分のことばかり心配することから離れて、自分の周りにあるすべてのものの一部になることだと信じているんだ。“私、私、私”じゃなくて“私達、私達、私達”であるべきだと思う。この星は苦境に立たされている。僕たちは苦境に立たされている。僕にとっては、1日12時間、すべてを出世や売名のために費やすのは完全に間違っているように思えるんだ。今、HER SPACE HOLIDAYが終わって、僕の人生の次のフェイズが始まろうとしている。ものを作ることがもっと楽しくなるだろう。それはきっと人生のよりよい生き方といいバランスがとれると思う。世の中に出すか、日の目を見ないまま終わるかにかかわらず。いずれにせよ、僕はとても興奮しているよ。
──およそ15年におよぶHER SPACE HOLIDAYとしての活動を振り返ると、本当にいろいろなことがあったのではないかと思います。HER SPACE HOLIDAYとしての活動を通して得たもので、最も良かったと思えることは何でしょうか?
Marc :
それは間違いなく旅を通してできた友人たちだね。世界を見ることができて、とんでもなく幸運だったと思い続けるだろうね。これまでに会った人たちの温かさや思いやりを通して、人間に対する新たな希望を感じることができるんだ。絶対に違う国に旅するべきだよ。かけがえのない経験だからね。
──11月からは、ここ日本でファイナル・ツアー開催されます。このツアーでのライヴがどのようなものになるのか、予告編的に教えていただけないでしょうか。
Marc :
この最後のツアーは、新しいアルバムをプロモートするといったものというより、この15年間を祝うようなものなんだ。曲目はほとんど古い曲から選曲して、新しいものを少し織り交ぜようと思う。これだけ長くHER SPACE HOLIDAYをやってきたのに、自分ひとりでラップトップだけで演奏するのは初めてなんだ。おかしいよね。4 bonjour's partiesやCarolineが1、2曲飛び入りするかもしれないけど、基本的には僕とラップトップだね。
──このツアーでは4 bonjour's partiesとCarolineがすべての公演に帯同するということですが、最後のツアーを彼らと一緒にやろうと思ったのは?
Marc :
4 bonjour's partiesもCarolineも、この新しいアルバムでとても大きな役割を果たしてくれたんだ。いろんなものを詰め込んでくれた。彼らはとても素晴らしい、才能のある人達だよ。Carolineとは、さっき話に出たヘネシーのショウで初めて会ったんだ。彼女の作品には詳しくなかったんだけど、その声と曲にぶっ飛ばされたね。パワフルであると同時にピースフルで。だから彼女とツアーできるのはとても光栄だよ。4 bonjour's partiesは……、この地球上で一番大好きな人たちだよ! 彼らのそばにいるととても癒されるんだ。HER SPACE HOLIDAYをやめて、もっとも寂しいのは、彼らとツアーできなくなることだね。
──追加公演ではスウェーデンのThe Deer Tracksとの2マンが予定されています。あなた自身、彼らと一緒にやることを楽しみにしちるのではないかと思いますが、彼らのライヴのどういうところを楽しみにしていますか?
Marc :
うん、とても興奮してるよ! 彼らは驚くほど魅力的な音楽を作っているね。彼らの美しいサウンドを聴いた後では、僕がちゃんと歌えるわけがないって皆はっきりわかるだろうね(笑)。素晴らしい音楽の夜になることを期待しているよ!
──HER SPACE HOLIDAYとしての活動を終えられた後のあなたの活動について教えてください。すでに新たな活動の予定などはあったりするのでしょうか?
Marc :
映画のサウンドトラック制作に集中していこうと思ってる。でもその前に、1年か2年ぐらい休みをとって、執筆活動に専念したい。外に出したくてたまらないいろんなフィクションのアイディアがあるんだ。
──xoxo, pandaのほうは引き続き活動を続けていくのですよね?
Marc :
いや、まずやらないだろうね。xoxo, pandaはある時代の一定の期間のものだったんだ。もう一枚アルバムを作ったとしても、きっとまた違ったものになると思うよ。
──最後にこれまでのあなたの作品、活動に感謝をしつつ、ファイナル・ツアーを楽しみに待っている日本のファンにメッセージをお願いいたします。
Marc :
ありがとう! 何年も聴いてくれた皆に感謝したい。ファンの方達から受けたサポートや友情こそが、なによりのご褒美だったよ。あなた達と僕の音楽を共有できて嬉しく、そして光栄に思うよ。あなた達のために最後のツアーをやるのが本当に楽しみ!
──本当にありがとうございました!! ツアー、楽しみにしています!!
