<WRENCH 『EDGE OF CHAOS reCONSTRUCTION LIVE & REMIXXX』 Interview>
──キャリア約20年の中で、ライヴ音源が発表されるは2000年の『Shinjuku,LIQUID,MEN,』以来ですよね。現場主義を公言しているだけあって、膨大な数のライヴを行ってきたと思いますが、なぜ『EDGE OF CHAOS』のライヴを音源化しようと?
SHIGE:
そもそもあのライヴでは、自分たちの卓(PAミキサー)を持ち込んで録ってみようという話になっていたんですよ。実際にいいライヴが出来たので、じゃあリリースしようかと。でも、ただのライヴ盤だと物足りないから、ライヴ音源の素材を使ったリミックス盤も作ろうということになって。まぁ、自然な流れでしたね。
松田:
自主イヴェントだったし、良いライヴになる予感はしてたから。
坂元:
新曲も溜まっていたので、ライヴで演奏して録音して、自分達で感触を確かめたかったというのもあって。
MUROCHIN:
ある意味、命を掛けたメモリアルなライヴだったしね(笑)。
──2007年に2度目のファースト・アルバムとも言える『nitro』、2008年に異色アーティストとのコラボ・アルバム『drub』と、バンドとしてはここ数年でいい流れが出来ていたと思います。そういうポジティヴな経緯も含め、良いライヴに繋がったのかなと。
松田:
確かに『nitro』は周囲からの評判も良かったし、バンドの活動自体も活発になったし、面白いギグも入るようになったかも。
SHIGE:
しばらく音源のリリースもなくて、フル・アルバムの話もあったけど、まだその段階でもなかったというのもあって。そういう状況の中で、来年の結成20年に向けて何か作品を出したいという野望があって、その弾みというか『nitro』以降の集大成を出したほうが次のアルバムも良いものになるんじゃないかなと。
──先程、新曲のお話も出ましたが、今回のライヴ盤で初音源化というのも何曲かあるわけですよね?
松田:
そうですね。オープニングの「shaci(decomposition ver.)」はリエディットで、7曲目の「extraterrestrial life(a receiving set edit)」はこの時のライヴ用のセッションというかインターヴァルとして作った曲ですが、8、9、10曲目は音源化という意味では新曲になりますね。
坂元:
8曲目の「sunrainsun(melton ver.)」、9曲目の「remain(silent ver.)」、10曲目の「kita」は去年から今年に掛けて作り込んだ曲で、ここ最近のWRENCHの傾向が出ていると思います。その他収録されている過去の曲も、ライヴ・アレンジになっているのでアルバムの音源とは別ものだったりして。11曲目の「drift(synthesis edit)」も、本来は浅野忠信君のヴォーカルが入っているけど、ライヴでまったく違うバージョンとして残せたのは良かったかなと。発表して約2年半経つけど、その間に色々といじって変化していった曲なので、改めて聞いて欲しいですよね。
──「去年から今年に掛けてのWRENCHの傾向」とは、具体的にどういうことですか?
SHIGE:
『nitro』の頃は、わりと高速ビートを主体に攻めまくる感じがあったんですが、少しギアを落としてどっしりした雰囲気のものを演りたくなってきて。その流れから「sunrainsun(melton ver.)」「remain(silent ver.)」「kita」の3曲がいい感じに仕上がって。そう思っていた時に、今回のライヴがあったのでタイミング的にも良かったなと。
──「remain(silent ver.)」あたりの流れは、神がかってると思ういうくらいかなり良いですよね。
SHIGE:
実は、ちょうどその曲の時に腰を骨折して……。
──そうだったんですか! ファンの間では、SHIGEさんが骨折した伝説のライヴと言われてますよね。
SHIGE:
マスター音源には自分の痛々しい声も入っていたから、その辺は編集してます。この部分はボツでしょ! って(笑)。でも、最初からライヴ音源をそのまま発売するわけじゃなく、自分達で再構築しようと思っていたからカットする部分があっても問題はないんですけど。
──腰の骨折はかなり危険ですよね。あの時、実際は何が起こったんですか?
SHIGE:
まぁ、詳しくは言えないけど(笑)。かなりのアクシデントでしたよ。
坂元:
足を滑らせたんだよね。最初はパフォーマンスかなって。だから、ある意味では事故というか(笑)。
SHIGE:
本当に痛くて、のたうち回ってた……。
松田:
俺は最初、気がつかなかったけどね。
MUROCHIN:
後ろから見ていたけど「これはヤバイ!」って思った。だから、次の曲が始まったんだけど、ヴォーカル入るのかな?って。でも、思ったよりもアッサリ立ったように見えたから平気かもって思った。
SHIGE:
前の方のお客さんは、ヤバいことが起こったんじゃないかって気づいてたね。だから、俺が立ち上がった時は「ウォー!!」って盛り上がっちゃって。プロレスラーみたいな扱いだった(笑)。ライヴ中ってテンションが上ってるから、少々の怪我だと気がつかないけど、あの時はさすがに痛くて。物が二重に見えるし、脂汗は出てくるし。終わった後、すぐに病院に行ったから。
MUROCHIN:
もちろん共演者とかスタッフはまさか骨折しているなんて思ってもいないから、終わった後に「お疲れ!」とか言いながらSHIGEちゃんのお尻を叩いてて。その度に「痛ーーっ!」って言ったよね(笑)。
SHIGE:
病院に行ったら「即入院です!」と。でも、途中で中止になっていたら、今回のライヴ盤の話も無かったはずだから。まぁ、結果的には良かったですけど。
MUROCHIN:
あのライヴ以降は、3本くらいSHIGEちゃん不在でライヴをやったしね。ゲストを呼んでセッション的なことをしてみたり。
坂元:
約20年の活動の中で、WRENCHがライヴをキャンセルしたのは一回だけだからね。
──まさにWRENCH史上に残るライヴでしたね。実際に音源を聞かれた感想は?
SHIGE:
基本的には俺と坂元で分担してエディットしたんですが、曲順通りに聞いてみると展開も良くていい流れのストーリーが出来ているなと。ライヴの様子をそのまま見るなら動画サイトでもいいわけだから、今回はより作品として仕上げることが出来て良かったと思いますよ。
MUROCHIN:
そういう意味では、新しい試みかなと。
坂元:
リミックス盤もライヴ音源を使ってもらっているので、2枚合わせて再構築するという狙いは上手くいったんじゃないかな。
──確かに、ライヴ音源を使ったリミックスというのは面白いアイデアですよね。
坂元:
各アーティストには、全曲投げてそれぞれ好きな曲を選んでもらう形で。だから、曲がダブッても構わないという考え方でしたね。
SHIGE:
唯一のルールは、原曲は使わずライヴ音源の素材を使うことだけ。だから、違う曲の素材を混ぜてもいいっていう。お願いした人達は友達だったりリスペクトしているアーティストなので、結果的に期待以上のものばかりでしたね。WRENCHのことをよく理解してくれているし、それでいて個々のテイストが十分に出ている。人づてに聞いたんですが、「shachi(DJ NOBU RMX)」をやってくれたDJ NOBU君も、WRENCHの良さをどう引き出すかという部分にフォーカスを当てて作ってくれたみたいで。俺たちはテンションの高い一面もあるけど、NOBU君がリミックスしてくれたようなダークネスな部分もある。自分たちでも、そのダークネスなところは好きだったりもするから。
──DJ NOBUさんとの付き合いは長いんですか?
SHIGE:
彼がバンドをやっていた頃からの知り合いで、DJとして活動するようになってもパーティに遊びに行ったりしていて。多分、90年代後半くらいから知っているけど、一緒にコラボしたのは今回が初めてで。
MUROCHIN:
自分が想像したものとぜんぜん違っていたので、キタな! とびっくりしましたね。
SHIGE:
サウンドシステムが入っている現場で聞いたんですが、ベースのローが凄くてね。現場で威力を発揮できるようなチューニングで作ってるなって関心しました。
MUROCHIN:
100madoが手掛けた「kita(100mado RMX)」も、本人がクラブで掛けている時に聞いたんだけど凄かったよ。お客さんも盛り上がっていたしね。
──100madoさんにお願いした経緯は?
MUROCHIN:
ダブステップのリミックスとか聞きたいと思って、それでパーティに遊びに行った時に話してお願いしたんですよ。
──坂元さんが気に入っているリミックス曲は?
坂元:
ライヴ盤のミックスもやってくれた三浦カオル君の「shachi(MIURA KAORU RMX)」が格好良かった。ミックス作業の時に、エディット画面を見せてもらったんですが、それが凄く細かくて驚きましたね。
──松田さんが印象に残ってるのはどのリミックス曲ですか?
松田:
「dynamite music(MERZBOW RMX)」ですね。MERZBOWはずっとリスペクトしていたアーティストだったので、実際やってくれるかどう分からなかったけどとにかく頼んでみようと。以前、イベントに出演してもらったことはあったんですが、今回リミックスに参加してもらえて嬉しかったですよ。この曲も予想外の仕上がりでしたね。当初は原型を止めていないものになると思っていたんですが、実際は原型を止めて返ってきましたから。
──本国のSonarやデンマークのRoskikle Festivalの出演実績もあるMARUOSAも参加していますが。
MUROCHIN:
最近ツイッターで本人と話していたら、ちょうどヨーロッパ・ツアー中で、ライヴでも「lights give out all freedom(MARUOSA RMX)を演っていると言ってましたね。このリミックスは彼らしいノイジーなグラインドではなく、聞きやすくてキャッチーに仕上がっていたので意外性がありましたね。
SHIGE:
このリミックスは「lights give out all freedom」意外の曲素材もたくさん入れながら作られていますよ。
MUROCHIN:
リミックスって予想外のことも起きるし、やっぱりな! って思うことの両方がありますよね。DJ BAKUちゃんの「dynamite music(DJ BAKU RMX)」のポップな感じは、聞いた瞬間にやっぱりな! と思った。当初はスクラッチが多めかなと予想していたけど、今現在の彼らしいキャラクターが凄く出ていますよね。
──SHIGEさんによるセルフ・リミックス「kita(WADA SHIGEFUMI RMX)も収録されていますが。
SHIGE:
最初は自分のバンドのリミックスに抵抗があったんですが、前作『drub』の時にやってみたら意外と抵抗なく出来て。自分自身DJとしても活動していますが、今回はその世界観が上手い具合に出せたかなと。
──OORUTAICHIさんとWRENCHの組み合わせは、すごく新鮮だと思ったんですが。
坂元:
もちろん本人のことは知っていたんですが、レーベルの人がお願いしたら面白いんじゃないって。でも、本人は最初「feel more」のリミックスをやりたいと言っていたんですが、スタッフが間違えて「dynamite music」を送ったらしくて。それに関して特に何も返事がなくて、本人から“何か違う気がするんですが、とにかく出来ました”って(笑)。それはそれでメチャメチャよくて。
一同:
ははははは!(爆笑)
──『EDGE OF CHAOS reCONSTRUCTION LIVE & REMIXXX』は、ここ数年におけるWRENCHの集大成的な作品ということですが、今現在のWRENCHはどんな状態にありますか?
SHIGE:
来年の4月に結成20周年を迎えるので、今までの集大成という空気を感じつつ、曲作りも進めている状態ですね。
坂元:
次期アルバムを見据えて、曲作りやライヴなど色々と活動していく感じですね。今回収録されている新曲もありつつ、それ以降の曲も固めつつというか。
──20年も活動しているとお客さんの層も入れ替わったりしますが、WRENCHの場合は自ら新しいお客さんやフィールドを求めて流動的に活動している部分も面白いですよね。
MUROCHIN:
やっぱり常に面白いバンドと一緒にライヴしたいし、面白いシーンを知りたいから。そういう意味では、昔からずっとつるんでいるバンドもいないですしね。
──曲に関していえば、先程どっしりした雰囲気の曲、というお話がありましたが、それが今現在のWRENCHのモードになるんでしょうか。
SHIGE:
そうですね。そういう一面も見せつつ、WRENCHらしいスピード感や爆発する要素を含んだ対極な曲も作っています。音楽的な遊びは相変わらずやっていて、色々と試してアクションして、そこで手応えがあればバンドのものにしていくというか。今後も実験的なライヴをどんどんやっていくことで、それが次のアルバムの基礎にもなっていくのかなと思っていますね。
MUROCHIN:
最近、SHIGEちゃんがライヴにMacを導入したので、色々な可能性を試しているというか。
SHIGE:
どうなるか分からないけど、とにかくやってみてグッとくる格好いいものになれば成立するからね。
──今作はもちろん、20周年を迎える来年以降の動向にも期待しています。
SHIGE:
20年間活動してきて、俺達はその経緯を知っているけど、断片的にしか知らないお客さんもいますよね。だから、来年20周年を迎えるにあたって、WRENCHが今まで何をやってきたのかということもある程度は意識して形にしたほうが面白いかなとも思っています。でも、そのことを考え過ぎて斬新なものが出来ないのもつまらないので、いいバランスでやっていきたいですね。
