<The Psychic Paramount 『Ⅱ』 Interview>
The Psychic Paramountとは、Ben Armstrong(ベン・アームストロング / Bass)、Jeff Conaway(ジェフ・コナウェイ/Drums)、Drew St. Ivany(ドリュー・セント・イヴァニー / Guitar)に3人組。現在はニューヨークを拠点に活動している。バンドの結成は2002年で、もともとBen ArmstrongとDrew St. Ivanyが在籍していたバンド、Laddio Bolockoが2001年に解散したことをきっかけに、Drew St. Ivanyが当時住んでいたフランスにて結成される。が、ものの3週間ほどで、バンドは散開に。その後、しばらくの活動休止時期を経て、2004年にサーベルズ(※ニューロシスのメンバーが主宰する「Neurot」からリリースするインダストリアル~ノイズ・ロック・バンド)のJeff Conawayを新たなドラマーに迎えてバンドを再編。地元ニューヨークを拠点に活動をリスタートさせて、現在に至っている(このあたりの詳細については、日本盤に封入された天井潤之介氏によるライナーノーツが素晴らしく詳しいので、ぜひご覧になっていただきたい)。Drew St. Ivanyはそのあたりのいきさつについて、以下のように語っている。
「ベースのBen ArmstrongとオレはLaddio Bolockoというバンドのメンバーだった。2000年にバンドが解散して、2002年の11月にこのThe Psychic Paramountを結成し、ドラマーのナカタニ・タツヤとフランスやイタリアをツアーしたが、そのバンドは2、3週間しかもたなかった。その後2004年にバンドを甦らせようと、オレたちはニューヨークでリハーサルを開始したんだ。SabersのメンバーだったドラマーのJeff Conawayを共通の友人が紹介してくれた。一緒にスタジオへ入ってすぐに『Gamelan Into The Mink Supernatural』(ファースト・アルバム/2005年)ができあがった。新作に取り掛かろうと決めたのは2007年の頃だ。とはいえ翌年スタジオへ入ってベーシックなトラックを録音したが捨ててしまった。そして2、3年があっという間に過ぎ、別のスタジオを使ってやっと全部レコーディングできたのが2009年で、その翌年にミキシングを完成させたんだ。その間、オレたちはときどきヨーロッパやアメリカをツアーしていた。おれたちがスタジオでいろんなアイデアを考えたりやってみたりしていたことに極端に時間をかけ過ぎた、なんていうのは相当控えめな言い方だよ。廃棄したマテリアルが山ほどあるからな」
Drew St. Ivany
それにしても10年で2枚のアルバム……。いったいどうやって食っているんだという素朴な疑問も沸いてくるが、「現代のめまぐるしく変化するカルチャーのなかでは、2、30年前と違って、The Psychic Paramountのようなグループはあまり居場所がないと感じますか? 一貫した流れの音楽をリリースし続けるならば、そういったバンドは忘れられて行ってしまうようにも思えます。そんなことを考えたことがありますか? 気になりますか?」という興味深い質問に対して、Drew St. Ivanyは以下のように回答している。
「気になるさ。でもそれって人生の心配事のリストをみているようなものだよね。新作をリリースするまでに5年かそこら待たせるのは、たしかに人々の関心から遠ざかってしまう。でもだからって『Gamelan Into The Mink Supernatural』と同じようなアルバムを2枚も3枚も作ってたらビルボード100に名前が載ることは絶対にない。おれたちのオーディエンスは少ないけど、たぶんおれたちと似て高い水準のものを求める。だから繋がっていられるんだ。満足できないものをリリースするよりも、きちんとした形にするために時間をかけるほうをオレたちは選ぶよ」
Drew St. Ivany
さらに「The Psychic Paramountのような音楽は商業的とはとてもいえない。そういう観点から、このバンドのミッションとはなんだと思いますか?」という質問に対しては、以下のように答えている。
「中毒ってものを正当化する良い方法はない、ってこと」
Drew St. Ivany
「己が聴きたいと思うものを作るってことをいつも考えている。おれたちの音楽はへヴィってだけじゃなく、ヴォーカルもない。おれはインストゥルメンタルを作曲するっていうチャレンジが気に入っているし、それにヴォーカルとか歌詞とかが良い音楽の妨げになっていることも多い」
Ben Armstrong
そう、彼らの音楽には言葉がない。しかしその理由を敢えて問うのは、まさしく野暮だと思えるほどに、彼らのサウンドには言葉の入る理由も、隙間もない。その言葉を持たないThe Psychic Paramountのサウンドについて、Drew St. Ivanyは以下のように語っている。
「言葉から逃げることは解放にもなる。レコーディングでおれたちはサウンドだけを扱い、意味合いとかストーリーテリングといったことはイマジネーションに任せている。オレたちの音楽がリスナーにどんな心象を喚起させるのかってことには興味もあるけど。ダークで怖いものだと思われているって言われたことはあるよ。オレには明るくて希望にあふれてるように感じられる。そういう意味では、オレたちの場合、歌詞がないことがマイナスに働いているとは思えない。みんながロックに必要不可欠だと思っているヴォーカルの不在を埋め合わせる何か面白いものを考え出すっていうチャレンジができるし」
Drew St. Ivany
The Psychic Paramountのサウンドについて、天井潤之介氏のライナーノーツによれば、「The Psychic Paramountの評価について、海外のレヴュー等ではBATTLESと比較されるケースが多い。同じくニューヨークを拠点とし、ヘルメットやドン・キャバレロの元メンバーで結成されたポスト・ハードコア~マス・ロックに出自を持ちながら、ジャンルを脱構築した先鋭的なアプローチを披露するインストゥルメンタル・ロックという――BATTLESとThe Psychic Paramountは共通点を挙げることができる。しかし、実際に音源を聴けば明白なように、両者はバックグラウンドの部分でスタイルを異にする」と説明しつつ、「ダンス・ミュージック~DJカルチャーを通過したエディット感覚やミニマリズムがアンサンブルを通奏するBATTLESに対して、The Psychic Paramountは前身からサイケデリックやノイズ~メタルの文脈を色濃く受け継いだジャムを主体とし、同じミニマリズムでもクラウト・ロック的な重厚感を帯びたそれに近い」と指摘している。たしかに、The Psychic Paramountのサウンドは、ある意味、メタルとも言えるような、独特のへヴィネスが特徴的だ。The Psychic Paramountのサウンドを自身たちはどのように分析しているんどあろうか? Drew St. Ivanyは次のように語っている。
「いつもラウド・ロックとだけ言う。知らない人にわかりやすい説明をするのは難しいよ。この前、18歳とか20歳くらいの子におれたちの音楽について訊かれたとき、オレはJimi Hendrixが40分間ギターのフィードバックをやってる感じって説明した。そしたらこう返されたよ。Jimi Hendrix? その人のこと知らなきゃだめなのかな? って」
Drew St. Ivany
さあ、The Psychic Paramountというバンドについて、なんとなくだがイメージが沸いていただろうか? ともかく彼らのサウンドにゴタゴタとした面倒くさい説明は不要だ。聴いて、ぶっ飛ばされるのみ! 絶対に損はさせないので、まずは音を聴いてみていただきたい。そして近い将来、彼らのライヴが日本で体験できることを心から楽しみにしたいと思う。
