<LAGITAGIDA 『CartaMarina』 Interview>
──2011年はCDのリリースや隔月の自主イヴェントも行われましたが、ふりかえってどんな気持ちですか?
大竹:
やっていくにつれてバンドの一体感やグルーヴはどんどん増していっていますけど、精神的な変化はそれほどないですね。バンドのヴィジョンもそこまで大きく変わってないですが、じょじょに開けていっている感覚はあります。
河野:
バンド全体としては、考える暇もない1年でした。個人的には、前はとりあえずドーンとやってればいいでしょ、というのが、特にドラムのAちゃん(矢澤)との細かい絡みを意識し始めて。少しづつふたりでそうした作業を始めたら、バンド全体の演奏のクオリティも底上げできてきているような気がします。
──隔月開催の自主企画イヴェント"LAGITAGIDA presents キャタピリズム"の対バンのラインナップは、みなさんのリスナーとしての嗅覚の鋭さや幅広さが象徴されていたと思います。
大竹:
まず大前提として我々がすごく好きな音楽家というのが基準になっています。僕たちひねくれているので、流されていない、オリジナリティのあるバンドさんたちを呼ぶことだけはとにかく信念としてありました。
河野:
対バンから刺激をもらうことも多くて。企画をやるたびに得るものが大きかったですね。
大竹:
同時に反省点も見えてきたので、なんだかんだ言って最後のワンマンがいちばんいいバンドの状態でしたね。ライヴの出来も良かったのを実感できて、やっててよかった。
──今回リリースされるセカンド・ミニ・アルバム『CartaMarina』はファーストの後から曲作りをはじめたんですか?
大竹:
曲のできた時期としては混ざってます。セカンドにもバンドの最初の頃からやっている曲が入っていたりもしていますし、新しい曲も入っていて。
──それはファーストのカラー、セカンドのカラーに振り分けたんですか?
大竹:
「ファーストではこれを聴かせよう!」というジャッジに基づいて決めていった部分もありますが、それ以外にも新曲ができたので当然加えていきました。
──それほど時間が経っているわけではないですけど、ファースト『CaterpiRhythm』はみなさんにとってどんな作品ですか?
一同:
初期衝動!
大竹:
まんま見せます!みたいな感じ。それは録音スタイルもそうですし……。
──ではギミックやスタイル優先ではなく、その時のバンドの状態を記録したと。
大竹:
ファーストは特にそういう面が強いです。
──ではセカンドは、ファーストでの反省点やできなかったことを踏まえて制作に入った?
大竹:
実際音が完成してみて、次はこうしたい、ということが生まれてきた。僕だったらギターをもっと重ねていって、曲自体に厚みを持たせたり。ソロだったら最初から構築したものを録ったり、そうした変化はありました。
矢澤:
音質の面もそうですし、アレンジもリズム隊をもっとガッチリ合わせて、もっと構築されたものをやりたいというのがあった。自分けっこうメタルが好きなので、音質的にもうちょっとメタルっぽい感じを取り入れたり。だからより幅が広くなってきていると思います。
──『CaterpiRhythm』ってバンドの勢いがそのままパッケージされていて、重厚感でとにかく押していくタイプの作品でしたが、『CartaMarina』はより曲ごとの個性もはっきりしていますし、様々にベクトルが向いている楽曲が揃っていますよね。
大竹:
テーマ自体がはっきりしている曲が多かったんです。「Huntin'」だったらその名の通り原始人が狩りに行くような絵が最初から見えていて、まさにそんな感じに仕上がったし。それから『CartaMarina』というアルバム・タイトルを全体のテーマとして、〈海〉というテーマに沿って録音していった。例えば「METAL」だったら、どんどん沈んでいくようなイメージにしようと、最後は深みにはまっていくようにして、と個々のテーマをきちんと持って作ることができたのかな。
──普段のLAGITAGITAの曲作りというのは、3人の頭の中にあるアイディアをどのようにぶつけて形にしていくんですか?
大竹:
だいたい僕が家でネタを作って、あらかじめの設計図みたいなものを持ってきて、あとはそれぞれの解釈で味付けしていきます。だから最初に〈狩り〉だったり〈大海原〉だったりと曲のイメージを持って作ることが多いんです。けれど、あえてそのイメージを強要はしないし、デモの段階で聴いて感じた通りに好き勝手にやってもらったほうが、どんどん独特なものになると思っているんです。
河野:
最初に聴いたとき「むずいなー、こういうリズムか!」って思うこともあるんですけど、想像力を掻き立てられるデモが多くて。大竹は自分で作りこんじゃうこともできるんですけど、あえてそれをしないで僕らに投げてくれるんです。その面白さは常にあって、ただ、平気で「これはきついだろ」というベースを自分で弾いてたりする(笑)。だから鍛えられます。
矢澤:
ドラムも、えっ!?て思うリズムが多いんだけれど、やってみたらできないこともない。結局仕上がったときには他にはない感じになっているのが面白い。
──大竹さんは、河野さんと矢澤さんのリズム・セクションをどのように見ていますか。
大竹:
LAGITAGIDAのいちばんの核はリズムにあるので、Aちゃんはパワー型だから、叩くならあまり軽くせず、オラオラな曲をちゃんと意識して作っています。
河野:
作曲者っていろんなタイプがいると思うんですけど、大竹は自分の世界観をドンと提示するというよりは、既にそのなかにメンバーがちゃんといるデモという感じがあるので、入っていきやすいんです。
──ポストロック的な音やインストゥルメンタルを鳴らすアーティストって、ベッドルーム・ミュージック的なプロダクションからスタートする人も少なくなくて、えてして内省的なインドアなタイプが多いと思うんです。でもLAGITAGIDAの音はすごく開放的な印象があって、いまの曲作りのお話も納得しました。バンドとして外向きにコミュニケーションを取ろうという意識はあるんでしょうか?
大竹:
そこはかなり大きい。僕たちは、今のアンダーグラウンドなポストロックやインストのシーンにないものをやりたくて。そこになくて欲しているもの、ドカーンと突き抜けた明るい音像を持った、激しいロックだなと思えるインストバンドってなかなか見当たらなくて。それだったら、純粋に俺たちが見せてやろうじゃないかと思ったし、このメンバーだったらそれをやるべきだと。実現したらかっこいいし、今の時代オリジナリティを出せると思っています。
──インストのシーンって広がって層も厚くなっていますけど、そこへのフラストレーションもあったんですか?
大竹:
ギター・インストとなると、ポストロックなバンドが日本ではすごく多い。元気なギターインストとなると、ホーンセクションがいたりして派手な音が映えるバンドもいっぱいいるけど、でもロック!って感じでシンプルにドラム、ベース、ギターという編成はあまりいないですよね。内向的な音楽とは真逆の方向に行きたいという気持ちが常にあるので、これからはもっと開いていきたい。
──そこから、大竹さんのあの弾きまくるプレイ・スタイルも生まれたんですね。
大竹:
僕はほんとうにそういうのが見るにせよ弾くにせよ好きなんです(笑)。
──『CartaMarina』は明らかに、ライヴの疾走感だけではなく、音源としてクリエイティヴであろうとするバンドの意気込みを音の手触りからも感じました。ライヴと音源のバランスについては、考え方が変化してきたところはありますか?
矢澤:
そこまではないかな。セカンドを作ろうとなったときに「ファーストがこうだったから次はこういう風にしてみよう」という感じで。
──それでは、今度はむちゃくちゃ凝ったスタジオワークでアルバムを作ってみたい、という願望は?
大竹:
いまはまだないです。でも近い未来にはそういうこともやりたいし。『CartaMarina』に関しては、普段のライヴでの演奏と外れすぎないようにとは思っていました。ライヴは、目でもそれこそ匂いでも、体全体で楽しむものだけど、音源はそういうものがない分、迫力を増すためにギターを重ねたりといった味付けをすることで、音だけでも空気が伝わってくるようにする音作りをしています。
河野:
1枚目は音を出したそのままを詰めた感じでした。けれど2枚目は、ベースに関しても「自分はこういう音にしたい」と積極的にエンジニアさんとコミュニケーションを取って、勉強になりました。結果、音的にはファーストよりぜんぜん歪んでいるんですけど(笑)。ただ、ライヴでできないことを入れたいとはあまり思ってなくて、スパイス的なものはあった方がいいけど、仰々しい作品にしたい欲求はいまのところないですね。とにかくライヴの方がいい、って思ってもらいたいので、ステージでできないことをCDに入れるのもやりたくないし。今回テーマがタイトルの『CartaMarina』というので、イメージが湧きやすくて、曲ごとにでもアルバム全体としても、ファーストよりも自然とイメージの共有ができた気がします。
大竹:
言葉で共有するよりも、抽象的なことで共有することが多いかもしれないですね。
──ラストにそのまんまな「METAL」という曲もありますが、みなさんにとってメタルの要素って共通項なんですか?
大竹:
今はほとんど聴かなくなっちゃいましたけど、ギターの出発点、中学生の頃はほんとにメタルばっか聴いていて。僕はごった煮になっている音楽が好きで、サルサだったりジャズだったりにメタルのスパイスを入れてくるような音楽が気持ちいい。音楽ってほんとになんでもありだと思うので。
矢澤:
たまたまそれがメタルだったっていう。全員がメタル大好き!ってというのではなくて、ただ俺が個人的に昔そっちだったというのもあるし。
大竹:
Aちゃんはメタル・ドラマーだと思う。だからLAGITAGIDAをやる上では重要な要素ですよね。
矢澤:
オーヴァーグラウンドに行けば行くほど、ツーバスをバタバタ踏む人っていないじゃないですか。でもそういうところにメタル的な要素を忍ばせていけば、メタル好きな人も食いついてもらえるんじゃないかなと思って。それでいて、河野はぜんぜんメタルなのを弾かない、それが面白くて。
河野:
僕、メタルは髪型だけなんですよ(笑)。ぜんぜん通ってないんです。
大竹:
でもコウちゃん(河野)が好きだったヴィジュアル系はメタルを源流に持っているから、完全に離れているわけではないよ。
河野:
楽器を持ったきっかけはヴィジュアル系だったんです。そういう人たちはだいたいメタルに流れるんですけど、なぜか僕はそこで、坂本龍一が好きになって。ただ、メタルとプログレがバックにあるバンドたちを聴いてきたので、「わかる」んです。
──大竹さんは、お手本としてきたギタリストというのはいたんですか?
大竹:
LAGITAGIDAをやるうえでイメージしていたのは、意気込みみたいなものですけど(フランク・)ザッパのプレイですね。あとはめちゃくちゃ弾きまくるという意味では琴桃川凛という変態ギタリストとか。とにかくギタープレイに関して言うと雑なのが好きなんですよね。日本人はカッチリしたプレイヤーはほんとうに多いから技術的なレベルが上がっているのは感じるけど、そうではなくて、ほんとうにはじけたプレイヤーはなかなかいない。それって面白くないですよね。クリックに近づいているようなものなので。そういうのから真逆になりたいと僕は思います。
──最後に、2012年はSXSWへの参加も決定していますけれど、バンドの姿勢として、聴いてもらいたいリスナーは最初から日本に限定してなかったんでしょうか?
大竹:
もちろん、前提としてインストで言葉がない分、世界中で聴いてもらえると思うので。それから、今はもっと幅広い意味でのワールド・ミュージックが好きなんですけど、やっぱり聴いてきたのがほぼ洋楽で、そこが基本にあるので、だったらその自分の気持ちに応えたい。そうやって広いところから影響を受けたものを、日本のなかでなんとかしようというのは窮屈なことだと思うんです今までリスナーとして聴いてきた経験から、これだったら世界を満足させられるという音楽を作って、世界へ発信していく方が素直なことで、可能性があると思うし、それが実現できると信じている。今年のSXSWから、機会があればどんどん世界で演奏してきたいと思います。
河野:
僕は歌ものも好きですけど、このバンドには、大竹のギターだったり、鍵盤のフレーズだったり、インストなんだけれど歌に代わるものがちゃんとあると思っていて。そして、さらにこれからもっと肉体的なことをやろうと思っているので、そういう意味でもインストは言葉が伝わらない外国の人にも伝わりやすいんじゃないかな。
大竹:
ネットが柱になってどんどん世界のボーダーがなくなっていっているんだから、それに乗っていくべきだし、僕たちみたいな音楽ならなおさらやりやすい状況下にある。だから、日本人のことだけを考えて戦略を考えてちまちまやっている理由なんてないんですよ。
河野:
外に向かって聴いてくれる人を探して、その人たちのところに行きたいんです。今年は楽しみですね。
