アルバム『Right Thoughts, Right Words, Right Action』はその前の『TONIGHT』でのダンスミュージックへの傾倒と比べると明快なロック、ガレージ色に回帰というか吹っ切れた印象があったけれど、1日目GREENのヘッドライナーを務めた今夜のパフォーマンスにもそれは表れていたように思う。その「ふっきれ感」に引き寄せられるようにオーディエンスも盛り上がりが頂点に達していた。「フジロック気分はいいかい?今夜はこんな気分なんだ…」という導入から歌詞もフジロック・パーティーに変えて 「Do You Want To」。 幾何学的模様が浮かび上がる整然とミニマルな演出、シンガロング必須のナンバーによる構成は何をしでかすかわからない偶発ではなく、さすがの安定の魅力があった。アンコールに応えたアレックスは「フジロックは4回目なんだ、アメイジング!!」と語った。 どこまでも彼らの「フジロック愛」に満ちたパフォーマンスだった。
申し訳ないがここまで彼らのライヴが素晴らしいとは予測していなかった。00年代UKインディを牽引してきた彼らが、他の多くのバンドが停滞するなかで活動を続け、『So Long, See You Tomorrow』という傑作を発表したことにも驚いたが、いきなり「It's Alright Now」でオーディエンスとのクラップが起こる一体感を作るバンドの説得力におそれいった。ジャック・ステッドマンのイノセントなヴォーカルそして楽曲にあわせスクリーンに映されるアニメーションといったファンタジックな世界とUK的憂いに、アップリフティングな「Overdone」そして 「Luna」「Feel」で強調されたポリリズミックなリズムの導入などにより生まれたオプティミズムが加わる。90年代のそれとも異なる楽天性が、彼らのオリジナリティになっている。「フジロックニコラレテウレシイデス」というジャックのMCも微笑ましかった。
夕暮れ迫るGREENに現れたメンバーのオーラがまず並みではなかった。フロントマンのマーク・フォスターのいい意味でのスター性とステージをところ狭しと動き回り歌うショーマンシップ、オープニングからいきなりツインドラムで一心不乱に叩くマーク・ポンティアス、バンドの多様なビートを支えるベースのカビー・フィンク。役者が揃ったパフォーマンスは、ハリウッド映画を観ているようなカタルシスがある。新作『Supermodel』は前作『Torches』の乱暴なまでの雑食性がいくらか整理されることで、本来持っていたロック、ダンス、ソウルなど持ち味がさらに突き詰められているといったら言い過ぎだろうか。アルバム冒頭を飾る「Are You What You Want to Be?」をセット中盤に配し、エンターテイメント性にこだわった どこまでもキラキラとした世界を描く 彼らのビジョンは世界へ拡大していくことだろう。
WHITEのステージにはアルバム『Stay Gold』の通りゴールドのバックドロップが掲げられている。衣装もゴールドで統一した二人が現れると「可愛い!」と声があがる。ヨアンナによるめちゃくちゃ流暢な日本語によるMCをはさみながら、オールドタイムかつ新しいスペシャルなフォークソングがつむがれていく。アメリカの土着的なものとも距離をおいた、スウェーデンならではの明快で洗練された歌は、苗場の緑に映える。途中「大きなインスピレーションをもらったというボブ・ディランのカヴァー「One More Cup Of Coffee」も披露。エモーショナルなヨアンナと、クールだけれどひとたび歌うとその存在感に圧倒されるクララという姉妹のキャラクターの違いを知ることができたのも収穫だった。アコースティックかつあらゆる時代のポップスの滋養を吸収した旋律、そして親しみやすさで日本でさらにファンを増やしていくことは間違いない。
My Bloody Valentineらとともに90年代シューゲイズ・ムーヴメントの代表格として人気を博し、2014年再始動を発表のニュースがメディアを騒がせた彼らが早くも苗場に来てくれた。紅一点のレイチェルの透明感溢れる歌声は健在で、「ここに来られて嬉しい」と笑顔でオーディエンスの歓声に応える姿はチャーミング。セットは代表曲、人気曲が続きレイチェルがギターを持ちトリプルギターとなっての「Catch the Breeze」をはじめ 「Alison」そして「Machine Gun」の分厚いギターのレイヤーは圧巻だった。今なおフォロワーを生み続ける重厚な音響とゆったりとしたリズムのうねりは的確にメランコリーを伝え、静かな情熱を空気中に発散する。終始フレンドリーなムードのなか、トレードマークである甘美なノイズに気が遠くなりながら、新しい音源を楽しみにせずにはいられないライヴだった。
晴天で迎えた初日、うだるような暑さとなったRED MARQUEEに初来日となるブルックリンのPARQUET COURTSが登場。ニューヨークのバンドらしいアーティーな雰囲気、どこかフリーキーなアンサンブル、そしてポストパンク的なグルーヴが昨今のギターバンドとは異なる無骨な魅力を感じる。最新アルバム『Sunbathing Animal』にあったソングクラフトの秀逸さに加えて今回のライヴではパンクなアチチュードも感じることができた。疾走感溢れるフォーピースのタイトな音の塊にやれていると、ふとそれをどこかで客観視しているような醒めた視点が挿入され、ストイック張りつめた空気のなかでもユーモアを忘れないような、絶妙なバランスがREDの密室感にぴったりだった。 ほとんどMCもなく駆け抜け、そのセンスを見せつけた4人。気鋭として注目を集め、彼らがもっと大きなステージで観られる日は遠くないだろう。