今年のPLANET GROOVEはトランスカルチュラルなアクトが目白押し。
一番手を務めたEYE(BOREDOMS / V∞REDOMS)は、トライバルなサウンドを中心に、意外なほどキャッチーで下世話さえ感じさせるセレクト。
GANG GANG DANCE
続く活況を呈するブルックリン・シーンの至宝GANG GANG DANCEは妖術的なムードでフロアを包んでいく。ヴォーカルLIZZIE BOUGATSOSのカリスマティックな存在感と、めまぐるしく表情を変えるヴォーカリゼーションのそこかしこにうかがえるメロディアスなポップ観も、強烈に焼きついた。
そして昼間にはMAJOR RAZORとしてWHITE STAGEでそのぶっといベースで大地を揺らしたDIPLOがどこまでもアッパーにラテン、ゲットーベース、ダンスホール、バイレ・ファンキと抜群の編集センスで盛り上げる。
DIPLO
さらにBURAKA SOM SISTEMAとCRAZE & KLEVERもフジロックの折衷主義代表とばかりに深夜の苗場にオプティミスティックなグルーヴをまきちらし、残念ながら中止となってしまったオールナイトフジを楽しみにしていたパーティーピープルを熱狂させた。
終日降雨というタフなコンディションの初日トリを堂々飾るワーキングクラス・ヒーローを観ようと、ふくれあがったGREEN STAGE。「ROCK 'N' ROLL STAR」「LYLA」「THE SHOCK OF THE LIGHTNHNG」という流れで幕を開けた。
NOELが「THE MASTERPLAN」の前に新たなドラマー、CHRIS SHARROCKを紹介する。彼の参加はバンドのレパートリーを活性化させている。例えば「SLIDE AWAY」のようなレイジーなスタイルがさらに引き立ち、また「WONDERWALL」「SUPERSONIC」あたりのアンセムの新鮮な感覚も貢献の結果なのではないだろうか。
NOELが再びアコースティックギターで歌いはじめたのは「DON'T LOOK BACK IN ANGER」。レイドバックしたバージョンだが当然サビは大合唱状態。「CHAMPAGNE SUPERNOVA」がパーティーの終わりのようだ。ラストは「I AM THE WALRUS」。原曲のサイケデリアを力業でねじふせるような解釈、そして最後までふてぶてしいLIAMのパフォーマンスには、やはりTHE BEATLESと肩を並べるバンドとしての衿持があった。
硬質かつ都市の印象の強い"亀たち"だが、野外もまた格別。刻一刻と闇が迫り、照明が幻想的になるこの時間のFIELD OF HEAVENにフィットしている。
2台のドラムスを中央に、向かいあって配置された独特のセッティング。JOHN McENTIREはJOHN HERNDONとときにツインドラムでポリリズミックなグルーヴを生み出す。あらためて生で体感してみると、楽器を持ち替え、複雑なリズムが芳醇な川の流れのように溢れ出てくる、その創意に驚かざるをえない。ステージ上でなにが起こっているか、本来の意味でライヴの目撃者となることができる。卓越したプレイヤビリティが乱反射し、繊細でミニマルなフレーズが重なりあい、エクスペリメンタルなうねりになっていく。
マスターピース『TNT』からの曲などを交えつつも、やはり『BEACONS OF ANCESTORSHIP』で貫かれているシンプルでロック的文法が、現在のパフォーマンスにおいても強調されているようだ。そしてアンコールではオーディエンスにハンドクラップを求めるまで、新作と共通のリスナーとの親和の高いライヴでもあったと思う。
自身も思い入れが強いという苗場に現れた彼女に、いきなり驚いた。07年のRED MARQUEEで観た時は、まだオキャンな女の子という印象が抜けていなかったのが正直なところだったけど(失礼!)、いまGREEN STAGEの空気を支配しているのは、紛れもないアーティストとしての輝くオーラ。それは決してシックにイメージチェンジしたファッションやヘアスタイルのせいだけではないはずだ。
『IT'S NOT ME, IT'S YOU』からのシックスティーズな「22」の説得力。そのアルバムにあったジャズのエレメントを伝えるパートで、キーボードのトラブル中におもむろに胸に下げたライターでタバコに火をつける姿は、文句なくかっこいい。さらにチャーム全開で会場とシンガロングする「SMILE」、「F**K YOU」でのステージ全体で出されたあのサインも壮観だった。そしてラストの「NOT FAIR」まで堪能してみると、ガールネクストドアな親しみ易さと反骨精神も決して欠かさないことまで確認できた。
ヒットプロデューサーとしての地位を確固たるものとするDIPLO、そしてSANTOGOLDなど先鋭的なプロダクションでならすSWITCHという当代のきってのサウンドメーカーがタッグを組んだら? 注目度は随一のユニットが日本でのお披露目として選んだのが、このWHITE STAGEの舞台。
アーバンなスーツ姿できめ、セクシーで挑発的なダンサーを従え「ハジメマシテ!」。そっけないブースに向かいながらも、リリース間もないファースト『GUNS DON'T KILL PEOPLE,LAZERS DO』と同様のタフな肉体性を放出。ラスタの色彩感を基調にした映像や絶えず鳴らされるホーンも相まって苗場の気温をたちまち上昇させていく。
うなりをあげるベースに合わせ、DICK DALE「MISERLOU」のフレーズをまで飲み込むキャパシティ。バイレ・ファンキ、フィジットといった猥雑でエクレクティックなビート感覚を特徴としする両者のケミストリーは、多様な文化が交錯するフジの空間にぴったりのパーティ・ヴァイブだった。
なんともらしいとしかいいようのない天候のもと、いよいよ2009年のフジロックがスタート。そのGREEN STAGEのオープニングを飾るのは、どこまでも粋で情熱的なスカ集団。ピンクのスーツもまぶしい9人のシルエットが、緑に囲まれたこのシチュエーションに鮮やかに映える。
雨のなか、しかも一番目という早い時間帯に集まってくれたオーディエンスへの感謝を語る谷中敦は、「ヨーロッパツアー直後だけど、やっぱりフジロックは世界一だね」と賛辞を惜しまない。そして「戦うように楽しんでくれよ!」という彼の言葉の通り、演奏が進むにつれ強まっていく雨足に挑んでいくような、元気と勇気を与えてくれるプレイが続く。
縦横無尽におおきなステージを駆け回るメンバー、とりわけギターの加藤のパフォーマンスがいつにも増してアグレッシヴすぎ。ロックなギターソロからシャープなカッティングまでのギターワークはもちろん、ときに拳を振り上げジャンプを繰り返し煽り、世界に誇るトーキョースカを体言する。
欣ちゃんのヴォーカルによるブルージーな「SHOTGUN」になると、もう殴られるような雨粒だが、ぬかるんだエリアでもスカダンスに興じる、カラフルなレインウェアに身を包んだ観衆の足は止まらない。デビュー20周年という風格、そしてスカ愛たっぷりなキラー・チューン満載のセットリストだったけれど、個人的には男気とロマンティシズムに満ちた谷中&加藤の歌をメインに据えた「Pride Of Lions」が聴けたことが嬉しかった。
おはようございます。
ご覧の通り、苗場は大雨です。
(って、写真じゃわかりにくいすね)
11時のスタート時には
なんとかやんでくれることを祈りつつ
今から会場へ移動です!