雨の上がったホワイトを超アーバンな空間にしたてあげてしまったTORO Y MOI。 どこかギークっぽいルックスとキャラクターで、ダンスフロアとポップフィールドを絶妙に繋げていくチャズ・バンディックの才能は日本でも知られて久しい。 新作『エニシング・イン・リターン』はチルウェイヴのその先の、数年前だったら絶対アウトだったメロウなAORフィーリング(おっさんですみません)や、いなたいダンスクラシックのファンクネスをさらに推し進めた。彼のフュージョン感は、密室度高い音源よりも、ライヴで一番強く体験することができる。 やる気ゼロの脱力PVが忘れられないラストの「Say That」まで、 苗場の自然のなかで彼の緻密な妄想を解放しきったようなサウンドに浸っていると、やはりこの人はアリエル・ピンクやディアハンターのブラッドフォード・コックスと同じ相当な<奇才>であるのだと、その異質さが別の角度から感じられた。