2012.1.24 (tue) @ LIQUIDROOM ebisu, Tokyo
昨年5月の"FREAKS MUSIC FESTIVAL'11"、そしてフジロックのRED MARQUEEと、すでにWASHED OUTことErnest Greeneはここ1年以内に2度のライヴを日本で披露している。今回は3回目、これまでがすべて野外でのパフォーマンスだったので、今回の大阪、東京での公演が日本でのはじめての屋内パフォーマンスとなる。野外で聴くWASHED OUTも心地良いものだったが、屋内の、しかもLIQUIDROOMという屈指の音響設備を持つスペースで体験する彼のライヴをとても楽しみにしていた。
客電が落ち、ステージにメンバーが現れる。ステージの右側にErnest Greene、中央のシンセサイザーやサンプラーが設置されたスペースにBlaire Greene(彼女はErnest Greeneの奥さんであり、『Life Of Leisure』のジャケットに映っていたあの女性だ)、その背後にドラムス、左側にベーシストという4人編成。1曲目は2009年にMexican SummerからリリースしたデビューEP『Life Of Leisure』からの「HOLD OUT」。ベッドルームでひとり音楽制作をしていたジョージア州アトランタ在住の青年を世界と繋げた記念碑的な作品からの曲で、この夜のクルーズはゆるやかに幕を開ける。
その出音の良さにまずは驚かされた「HOLD OUT」に続き、昨年発表したアルバム『Within and Without』から美しいアルペジオではじまる「Far Away」、幻想的なコズミック・ディスコ「You and I」、流麗な「Before」と3曲続け、Toro Y Moiによる素晴らしいリミックスをカップリングした7インチ・シングルでリリースされた初期の名曲「Feel It All Around」へ。密室性の高い空間で聴くWASHED OUTのサウンドは、野外よりもグッと音の解像度や立体感が増し、より快楽的な響きを纏って聴こえてくる。最初は瞑想するようにその音に浸っていたオーディエンスたちも、じょじょに身体をゆらゆらと動かし、サウンドに体を委ねていく。
Ernest Greeneの書く曲には独特のメランコリアとロマンティシズムがある。それはとても清々しく、端正で、どこか上品な佇まいをしている。控えめなイーヴンキックに高揚感を刺激されながら、そのメランコリアとロマンティシズムに漂うのは、最高に心地よい。夕暮れのビーチに浮かんでサンセットを眺めているような、そんな至福の感覚がある。80年代テイストのディスコにレゲエっぽいリズムをブレンドした「Belong」(可愛いエアロビダンサーたちが珍妙な踊りを繰り広げるミュージック・ヴィデオも必見!)が中盤のいいスパイスになり、今年1月にリリースとなった日本独自企画盤『Amor Fati』に収録された「Olivia」、そして高揚感溢れるダンス・チューン「Soft」へと。「Soft」での盛り上がりは、この日のハイライトのひとつだった。
「New Theory」、「Amor Fati」、「You'll See It」の3曲で本編を終了し、鳴り止まないアンコールを受け、ステージにErnest Greeneがひとりで現れる。照明を少し暗くするようにと頼み、昨年のインタヴューで彼が『Within And Without』の中で最も気に入っている曲だと言っていた「A Dedication」を披露。続けて、最後の曲「Eyes Be Closed」を演奏し、この夜の素晴らしいクルーズは幕を閉じた。大きな歓声と拍手が鳴りやまない。なにかとても温かな余韻を残していたのが印象的だ。
Ernest Greeneはインタヴューでこう語っていた。「アルバム・タイトルの『Within And Without』というフレーズには深い意味があるんだ。これは聖書の古い言葉だったと思うんだけれど、大まかに言うと、人の内面的世界と外界の関係についての言葉なんだ。僕はそこから非物質的で本質的な考えやアイディアを描写しようとしてるんだ」と。アメリカの片田舎に住むある青年の内面旅行が、ここ数年の間に多くの外界と繋がり、そしてこうしていま海の向こう側の小さな国のリスナーたちと素晴らしい夜を共有してる。そのポジティヴな場にいれたことが、とても心地良かった。
Text : New Audiogram
Photo : Teppei
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