<ジラフポット 『Last Man Standing』 Interview>
──今回の『Last Man Standing』はいつぐらいから作ろうという構想があったのですか?
中野:
夏の終わりくらいですかね。
関:
10月に1ヶ月半くらい制作期間に入っていました。
──この4曲についてはどんなイメージを持って制作に取り組んだのですか?
中野:
バンドの暗い部分と明るい部分、という二面性を出していきたくて選曲しました。最初のアルバムから、持っている部分を全部出していきたい、すでにそういう気持ちはあって、今回はそれをいつもより大げさに表現したかった。4曲選ぶというのは難しくて、バンドの全てを表現することができるか、と考えたときに、明るさと暗さに二極化させようというコンセプトになりました。
──確かに今作はジラフポットとしての振れ幅の広さが現れていると感じました。レコーディングにあたってはそうしたイメージを3人の間で言葉で共有したりするんですか?
原田:
しないですね。
関:
メロディや歌詞が最後になるので、出来上がるまでどういう歌詞になるか分からないんです。できあがってみて「そうなんや!」って。
──なるほど、普段のジラフポットの曲作りってどういう流れなんでしょう?
中野:
基本は僕が作ってスタジオに持っていくのですが、リズム隊はふたりに完全に任せています。歌詞が決まっていない部分は鼻歌で歌いながらバンドで合わせていきます。3人で合わせてある程度できたら、メロディと歌詞を固めていく、と3段階くらいのプロセスを経ています。最終的にできたものをパソコンにブッ込むという感じですね。
──そこで中野さんの予想しない化学変化があるんですよね?
中野:
毎回自分が考えていたのとまったく別の曲になります、良くも悪くも(一同笑)。今回は4曲揃っていた時点でその二面性というテーマは決まっていました。
──オープニングの「Black designer」は、これまで以上にアグレッシヴな部分が強調されナンバーですね。
中野:
僕としてはアグレッシヴさはないんですよ。逆に、虚無感を表現したかったというか。原田さんが好きそうな曲をイメージして作りました。他の3曲が決まった後にできた曲なんです。
原田:
暗めな、激しめな曲が好きなので。
関:
もともとは軽い曲調だったんですけれどね。
中野:
歌詞はホラー映画、スプラッター映画ですね。グロテスクな感じをイメージしました。
関:
3人それぞれ推しの曲が違うんです。
中野:
いい意味で言えば、いろんな人が「これがいい」と捉えられるバンドなんです(笑)。僕は「ラストソング」がよかったんですけれど、この曲でMVを撮りました。
──ジラフポットといえば疾走感溢れるパワフルな楽曲が特徴だ、とリスナーから支持されていることは感じていますか?
中野:
そうですね、幅が広すぎて30分のステージで、あまりいろんなタイプの楽曲をやると「訳わかんない」と言われたりするので、ライヴではある程度凝縮してます。だから、そういう見方をされてしまうのかもしれません。今後はその幅の広さはワンマンで出していければいいなと思っています。
──ジラフポットの歌詞は物語を明確に語るというよりは、言葉のイメージの連なりで表現していくというタイプの楽曲が多いですよね。
中野:
まったく意味のない言葉を使うこともあるし、自分自身の経験も描く。曲ごとに全く違うんです。
──途中の和モノっぽい、80's歌謡曲的なメロディが耳にこびりつきますね。
中野:
そこは意識していなかったんですが、原田さんがそういうメロディ好きなんです。
──2曲目の「Stone cold」は冒頭のギターリフも印象的な、また違ったタイプの激しさを持つ曲です。
中野:
途中すごい煮詰まっていて、1回聴くより10回聴いて良さが分かる、みたいな曲になりました。
関:
最初はライヴ映えする曲ということで、MVにもなる曲を作りたいというところから始まったんですが、途中で変わりましたね。
──MVになる曲、ということは、バンドの魅力をキャッチーに伝えられる曲、ということですか?
中野:
それも含みますね。もっとシンプルになる予定だったんですけどね(苦笑)。レコーディングも歌詞が当日まで決まらず、メロディも決まらず、悩みながらの作業でした。
原田:
だからこそ「スルメ」な曲になりましたね。
中野:
結果、聴けば聴くほどいい曲になりました。4曲中1曲こういうタイプの曲が入って、作品全体としてのバランスもよくなりました。
関:
一度選曲から外れそうになったんですけれど、僕がゴリ押ししました。この曲はいちばん洋楽っぽさはあるかもしれないですね。僕はこの曲推しです(笑)。
──今回のテーマである二面性ということでは、後半の2曲はまったく違う画を見せてくれていますよね。「スターチャイルド」はSF映画みたいなスケールの大きさがありますね。
中野:
まさにこれは『2001年宇宙の旅』をイメージしました。大好きな映画で、印象に残ったシーンを歌詞でも表現しました。
──これまで日常というか地に足の着いたリリックの印象が強かったですが、この曲はそれを飛び越えていますね。
関:
いつもは曲作りの途中でいろいろディスカッションをするんですが、この曲に関しては「中野の好きに作っていいよ」というところから始まっているので、詞もメロディも中野の世界ですね。
原田:
ギターとか全部音を重ねたときに、その宇宙っぽいところが見えてきましたね。
中野:
古い映画をイメージしたノイズを加えたり、モジュレーションの揺れを活かしたりしたので、ぜひヘッドフォンで聴いてもらいたいですね。
──ジラフポットとしては、音源で音を積み重ねていく作業と、ステージで鳴らす音の関係はどのように考えているのですか?
関:
アップテンポの曲はライヴを意識して作ったりしますが、こういうタイプの曲は音源だからできる曲という感じですね。
中野:
聴いてくれる人によってそれぞれ捉え方が違うと思うんですが、ライヴでは音数はどうしても減ってしまうので、「ぜひ音源も聴きこんで妄想してほしい」と思ってます。
──では最後の「ラストソング」については?
中野:
メロディが降りてきた瞬間に「これやりたい!」って。リリックに関しては「俺、バンド辞めます」というテーマの曲なんですが、自分自身のこと、自分の書きやすいテーマを素直に書きました。自分としては個人的な気持ちも、フィクションも、両方描いていきたいと思っています。
──「個人と社会」ということも描かれていますよね。
中野:
だいたい、もどかしい気持ちのときに曲が生まれるときが多いです。そういうときにギターで鼻歌を歌ったりして、でもノートに書き留めたりはせず、それを覚えていたら使ったり。今回は制作のタイミングで降りてきたので、そのまま書きました。
関:
僕は「明るくしたい」「勢いのあるやつ」とか漠然なことを伝えたりするんですが、そうしてできた曲ですね。
──『Hydro human』でも、最後に「ワンダーサワー」とミディアム・テンポのメロディアスなナンバーを置いていましたが、今回もこの「ラストソング」が置かれていることで、ジラフポットの懐の深さが明快になっていると感じました。
中野:
これはぜったい最後に入れたかった。いつもしっとりした曲で締めるようにしているんです。
──ではこのEPのリリースを経て、2015年の活動については?
中野:
攻めて攻めて攻め倒します。ギアをもう一段階、二段階入れて、去年の自分に勝ちたいですね。
関:
去年の年末から「2015年は攻める」と散々ライヴで言ってるので(笑)。
原田:
僕も個人的には「負けない」という目標を立てています。多くは語らないですが(笑)。