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前作『alfred and cavity』から1年半ぶり、4作目のアルバム『Adze of penguin』を完成させたthe band apart。新作は、これまで以上に明るく爽快な楽曲が並ぶ作品だ。しかし、そのサウンドとは対照的に製作現場は、「毎回極限状態だけど、今回は最たる極限だった」と、今回インタビューに答えてくれた原昌和(B)は語る。

「猛烈に曲を書いたけど、全然できないし、出来てもクソばっかで。最終的には、においからインスピレーション受けようとかいって、アロマオイルをドンキで大量に買ってみたり。それくらい限界だった。ちなみに、においからできた曲はない! ほんとは、デスメタルみたいなものが出来る環境だったのに、音は逆ベクトルに出ちゃった。爽やかな状態ではいっさいなかったね。ある意味、地獄の一生を送った長谷川町子が、ほのぼのとした『サザエさん』描いた、みたいな感じかも(笑)」

そんなギリギリの状態のなかから出来上がったアルバムは、冒頭の「Falling」からファンキーでフュージョン的なサウンドが飛び出し、疾走感タップリの「I love you Wasted junks & Greens」、80sフレイヴァーのポップな「Cosmic Shoes」、アコースティック・ギターのゆったりとした「bacon & eggs」、70sウェストコースト・サウンドを彷彿させる「Malibu」、温かいメロディの響く「pieces of yesterday」、パーカッシヴで爽快なミッド・チューン「Waiting」など、ヴァリエーションに富んだ楽曲ばかり。それは、楽曲の元ネタを出したメンバーが、その曲を監修するという制作スタイルからくるものだった。

「全員が個別に曲に向かってたのね。それもレコーディング中のスタジオで(笑)。だからほとんどの曲が、4人全員で合わせたことが1回もない曲ばっか。ほとんどのフレーズが、アドリブや意図してないものになってる。だから、メッセージなんかあるわけないよ(笑)。音楽ってよりも、その時の記録って感じ。08年上半期のオレらの集合写真みたいなもんですよ」と言いながら、これまで培ってきたものを昇華し、バンドの新たな可能性を披露する作品を作り上げた彼ら。現在、“the band apart以降”と呼ばれる、テンション・コードを多用するバンドも多々いるが、他とは確実に違う、格上感すら感じてしまうほどだ。「ロンギヌスの槍の次に強い北欧神話の武器“ペンギンの手斧”」という意味のタイトルが付けられた新作『Adze of penguin』は、まさに彼らの底力が存分に発揮されたアルバムなのである。
Text : Keisuke Tsuchiya
 
Adze of penguin /
the band apart
【初回限定盤 紙ジャケット仕様】
ASG-011S 2,835yen (tax in)
【通常盤】
ASG-011 2,835yen (tax in)
2008.5.14 on sale
  1. enter
  2. Falling
  3. I love you Wasted Junks & Greens
    PVをCHECK!
  4. Cosmic Shoes
  5. bacon & eggs
  6. Malibu
  7. Moonlight Stepper
  8. pieces of yesterday
  9. July
  10. Waiting
Track03: I love you Wasted Junks & Greens のPVを
NATVでCHECK!
<ベーシスト原昌和による全曲解説>
01. enter
「アルバムのイントロは、外からスタジオに入って来るまでを録ったもの。都会の喧騒からビルの階段降りて、スタジオの扉をガチャッと開けると、オレらがアンプを通さず生音だけで演奏してる音が聞こえる。これが一番嫌な音なのよ。3時間しか寝ないで朝起きて、1日があの音から始まるわけじゃない。ほんと扉開けると空気感が変わるよ。「あ、今日はもう終わったな。これから外に出ることはないんだ」って(笑)。これを入れたのは、ある意味、自分たちの戒めのためでもある。たぶん、次のアルバム作るころにはこの苦しみを忘れてるからさ。また、性懲りもないことをしかねないから、これ聴くたびに、オレらがうなされろって感じ(笑)」
02. Falling
「これはオレのネタの曲だけど、できなくて大変だった。エセ、エルメート・パスコワール(ブラジリアン・フュージョンのアーティスト)みたいなムードも入れたいし、なるべくファンキーな感じにしたいってイメージだったな。荒井(岳史、G&Vo)のボーカルは、最初優しい感じだったんだけど、サビをもうちょっと強めに歌ってほしくて、録り直してる。だから今までとはちょっと違う雰囲気になってる。あと、後半に(チューブをくわえて、ボコーダーのような音を出す)トーク・ボックスを入れたんだけど、これはおもしい話があるよ。未知のものだからとにかくチューブを試そうと思って、ホームセンターでいろんなホースを買いまくった。で、一番良かったのが、東京ガスの白い分厚い層になってるヤツ。苦みが強烈なんだけど、外径は太くて内径が細いほうが良いってことがわかって。やってみたらこれが案外難しくて、川崎(亘一、G)がすごい練習した。トーク・ボックスって、振動がすごくてオレは車酔いみたくなったけど、川崎は何時間やっても気持ち悪くならない。一つ特技ができたね(笑)。歌詞は、インスピレーションになる言葉をオレが言って、(木暮)栄一(Dr)にまかせた。音がポジティヴな印象だったから、暗いものになってるよ」
03. I love you Wasted junks & Greens 【PVをCHECK!
「これは、栄一がドラムとサイド・ギターのネタを持ってきて、他はインプロ。歌メロも、乗せてる音に対して栄一が考えたのね。栄一のネタはシンプルだからどうにでもできるんだけど、それが逆に難しかった。サイド・ギターだけだと音の間口が広いけど、ベースを乗せると相当変わるんです。単にユニゾンで弾いてもつまらないから、音の引っ掛かりを作りたかった。解釈としては、フュージョンの速い曲みたいになるようにってベースは考えた。作っていくうちに最初のイメージと変わったから、栄一もまとめるのが大変だったと思う。歌メロを付けようと思ってたとこに、付かなくなったりしてね。それも、録りながらリアルタイムで考えてたし。でも、比較的早く出来たな」
04. Cosmic Shoes
「これは、荒井がほとんど作った曲。まあ、オレのベースは全曲インプロだから、ベース以外は、アレンジも含めて荒井が初めて全部手がけた総合プロデュース曲。他のメンバーも口出さずに、オレがベースつける時も、荒井の思ってるイメージが変わっちゃ悪いから、「こんなで良い? 歌は乗る?」って聞きながら作っていったんだ。荒井にとっても良い経験だったんじゃないかな。シンセみたいな音は、鍵盤じゃなくギター・シンセの音。今回使わなかったけど元々は、荒井に「オートワウ使おうよ」って言ったとこから、オクターバーとフィルターとか全部付いてるエフェクターが来たのね。じゃあ、あるから使っちゃおうぜって感じだった。アナログ・シンセみたいな音は、川崎が弾いてるタッチワウの音。矢野顕子のダサい曲みたいな音を入れようかなと思ってさ(笑)」
05. bacon & eggs
「栄一が、サイド・ギターとドラムと歌を持ってきた曲。ウチらのネタって、基本的に、サイド・ギターとドラムと歌、というのが定番なのね。ギターはコードも表現してるから、その形で誰もが提示してくる。そこに、オレがベース・ラインをインプロで乗せて、さらにギターのラインを、オレと川崎が一緒に考えて乗せていくのが王道パターン。これも、シンプルな構成だったから悩んだけど、時間もないしこれでいこうと(笑)。きれいな曲だから、汚したいなと思って、多分に不協和音を入れたんです。アコギでゆったりした曲も今までなかったかもね。ただ、「bacon & eggs」って印象は、曲からは微塵も感じないね(笑)。もしかしたら栄一なりに、音とのギャップを効かせたのかな」
06. Malibu
「マリブといっても、ギャル男が飲んでる甘いお酒のマリブじゃないからね(笑)。70年代のLA風? それは、荒井なりに、ジェフ・ローバー(70年代後半から80年代に活躍したフュージョンのアーティスト)みたいなことがやりたかったみたい。仮タイトルが、“荒ローバー”だった(笑)。ちょうどオレがジェフ・ローバーを聴いてたら、アイツも気に入って、こういうのやりたいと。最初は、そこが発信点だった。ベースはどう付けていいかわからないから、バカバカバカって、パーカッションっぽいベースを乗せたんだ。カッティング・ギターは荒井っぽい感じだね。ほんと、誰が監督になるかで、曲のタイプが全然変わってくるんだよ」
07. Moonlight Stepper
「シングルにも入ってた、荒井が持ってきた曲。モロ80sみたいなことがやりたかったっぽい。オレは、映画の『ドラえもん』のエンディングで、ドラえもんがワイヤーメッシュの上を歩いてサーッと上がってく映像の後ろでかかってそうな音だなと思いながら、ベースを弾いてた。ちょっと、変なよどんだ感じがあるでしょ、せつな明るいっていうか。何だか引っ掛かる明るさが欲しいなと。あと、NHKの『化学2』とかの最初にかかる音楽みたいなイメージ。下世話に言うと、ゴルフ・ゲームのキャラ選択画面、スーパーの総菜コーナーでかかってるカシオペアみたいな(笑)。生活感のあるせつなさみたいな感じ。ギターの音色は、そのころ荒井がよくポリスを聴いてたから、コーラスが効いてる。後半がインストっぽくなって、しかも、フェイドアウトして終わる。そういう、音の消え際にすごいカッコいいことやるのを、オレらは“ゴダイゴ現象”って呼んでるんだ(笑)」
08. pieces of yesterday
「アコースティック・ギターは、単に荒井がアコギを買って使いたかったのね。この曲は、荒井が弾き語りしてたものがそのまま曲になった。静かでゆったりしたとこから、後半はギターとか上モノが速くなる展開になってる。オレは歌のことを考えずにベース弾いちゃったから、荒井も歌うのが大変だったみたい。ウチのバンドはそういうことするから、あとでライヴで苦しむんだよ(笑)。オレも、ベース弾きながらなかなか歌えないよ(笑)」
09. July
「これは、栄一が持って来た曲。シンプルだったから、最初どうしていいのかわからなかったなぁ。オレの付けたベース・ラインは、マイケル・ジャクソンみたいに始まるんだけど、ダセーと思って、そのままに活かしにした(笑)。しかも、そのフレーズは一瞬で、もう出てこない。ムーンウォークしたまま舞台からはけちゃったマイケルみたいな感じ(笑)。あと、このサビのボーカル・ラインは、「Eric.W」の一番最初に付いてたヤツなんだ。当時、ヤバいダンス・クラシックみたいなメロディにしようと思ったんだけど、あまりにいなたすぎるってことでやめたのね。それを今回、荒井が蔵から引っ張り出してきて乗っけたらハマったんだ」
10. Waiting
「これも、原監督曲です。イメージは、変な山下達郎というか、大病を患った感じでやろうと(笑)。メロディもなかなか大変だったなぁ。この明るさは、たぶん、スタジオの空気がほんとに嫌で、鳥になって飛んでいきたいな〜って気持ちがどこかにあったのかも(笑)。サビでは、クラップも入ってる。それと、アコギも混ざってるね。16ビートな感じを出したいから、シャカシャカ言わせて、アコギをパーカッシヴに使ったんだ」






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