2011.2.4 (fir) @ ZEPP TOKYO, Tokyo
ACTs : ストレイテナー / smorgas
そもそもセルフ・カヴァー・アルバムをリリースするなんて、曲の世界観は結成当初から一貫しつつも、バンドの変容(テナーの場合、メンバー"増殖")という必然がなければあまり意味はない。それぐらい『STOUT』というアルバムは、ストレイテナーというバンドの哲学と、現体制のバンド・サウンドという具体の両面がはっきり分かる、入門編にお薦めしたいぐらいのタイトルなのである。さて、そのレコ発ツアー。今回は全国8ヶ所、すべてバンドからのリクエストで異なるゲスト・バンドが登場するという豪華さ。そこには彼らが90年代後半から積み上げてきた時間を共にしてきた盟友たちの名前が並ぶワケで、単なる対バン・ツアーにはない熱を感じたファンも多かったはずだ。
ツアー初日の対バンは、ホリエの熱いリクエストにより実現した、オリジナル・メンバーによるsmorgasがゲスト。来門、アイニの2MC&ヴォーカルが、10年前となんら変わらない躍動感で場を盛り上げ、ゴリゴリのヘヴィ・リフからブルース・フィールまで、生々しい醍醐味をたたえるSENSHO1500のギター、よく歌う河辺真のベース、タイトでシュアなあらきゆうこのドラム……、数多のバンドがレッチリやレイジに感化され、大きなメッセージと自分たちなりのミクスチャーを模索していた90年代末。smorgasの強みはスタイルやメッセージの呪縛に囚われることなく、ある意味やんちゃに、ある意味、卓越した5人のミュージシャンがガチで勝負していたからこそ、この日、アイニが「今やってる曲は12、3年前からやってんだよ。今、ちょうどいいぐらいだろ?」と、自信満々に言い放ったのもまんざら大げさじゃないと思えたのだろう。ラストの「ゴンドワナへの道」のトライヴァルとスペイシーを同時にうねらせるオリジナリティに、コンスタントな活動を期待してしまう。
約1時間のsmorgasのアクトが終了。それに触発された感で、テナーの4人が登場。ツアー初日なので、まだセット・リストは明かすことができないのが残念だが、冒頭からペース配分を無視してぶっちぎる、ぶっちぎる。さしずめ2006年のフジロックWHITE STAGE時のような、挑戦者のテンションというべきか。間髪入れず、アッパー・チューンを連続投下し、イントロの一音が鳴るたびに起こる怒号のような歓声は、これまでのツアーの中でも最もタフな印象だ。そう、バンドはもちろん、ファンの何が起ころうが120%楽しんでやる! という気概が尋常じゃない。『STOUT』のレコ発ライヴということの意味が、本作収録曲を披露するだけのライヴじゃないことは、このアルバムが今のストレイテナーのライヴへの招待という意味を持っていたことから、ファンも予感していたのだろう。少々意外なレパートリーが演奏されようが、むしろメンバーを煽る勢いだ。
具体的にはいえないが、ここ最近のテナーの作品、『STOUT』『CREATURES』でバンドの自由度を体感した今、その自由度の2011年版を真っ先に体感できる幸運と興奮に満ちたツアーだ、ということは明言しておこう。そして楽曲のふり幅で言えば、『STOUT』でも原曲の骨だけ残して、トランシーなアレンジにアップデートされた「BERSERKER TUNE」に見る肉体性から、歌メロのよさと、現在のギター・アンサンブルを活かしたアレンジで、さらなるスケール感を表現した「TODAY」の爽快感といった音楽的・精神的レンジの広さを実感することができた。そして! なんといっても瞠目したのは2曲の新曲。まだツアー中なので、ここでは詳しい記述を控えるが、期待値を軽々と越えていく素晴らしさ。ぜひ楽しみにしていただきたい。特にアンコールに演奏されたその曲には、笑うという反応しかできない、前代未聞のストレイテナーがいた。世代の縦糸と横糸を繋ぎながら、責任なんてしゃらくさいものは感じさせずに、でも現状のシーンに結果的に風穴を開けそうな、そんな勢いを今年の彼らには感じずにいられない。
Text : Yuka Ishizumi
Photo : Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER)
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