2011.2.2 (fri) @ LIQUIDROOM ebisu, Tokyo
ACTs : MOGWAI / にせんねんもんだい
スコットランドはグラスゴー発の5人組、MOGWAIは95年に結成され、"ポスト・ロックの雄"として多くのフォロワーを生み、他の追随を許さないオリジネーターとして君臨し続けてきた偉大なるバンドだ。その彼らが約2年半ぶりに7thアルバム『Hardcore Will Never Die, But You Will』を日本先行リリース(2月2日)し、今回はその発売日ジャストに「一夜限り、全世界エクスクルーシヴのライヴ・セット」という呼び文句で、最新作をどの国よりも先に全曲再現する企画色の強いライヴをおこなった。しかも、CD+チケット+オリジナルTシャツ=9990円をHMVオンライン独占販売で手に入れ、ライヴ観戦できるユニークな仕組みも話題になっていた。会場には会社帰りの20代~40代のサラリーマンが目立ち、女性率も意外と高く、逃げ場もないほど大混雑のソールド・アウト状態だった。それにしても、観客の全てが耳馴染みの薄い最新作メインのライヴに大挙して詰め掛けるとは、MOGWAIに対するある種の盲目的愛情、絶対的信頼の表れだろう。
オープニングは3人組ガールズ・バンド、にせんねんもんだいが務めた。ベースとドラムが反復フレーズでダンサブルな熱気を生み出し、そこに弦を引っ掻きながら超音波のごときギター音が乗る。最後は激しい轟音の嵐を吹かせ、聴き手の意識を吹き飛ばす熱演を披露した。フロアが十分に温まった頃、やっとMOGWAIの面々がステージに立つ。全員ほぼ坊主頭というルックスは、"音の求道者"のワラジを履いた修行僧に見えなくもない。枯れた味わい深いギターが聴こえると、最新作の冒頭曲「White Noise」でショウは始まった。告知通り、アルバムを曲順通りに忠実に再現していく。3曲目「Rano Pano」ではイントロのフレーズを何度かやり直す場面があり、すかさず「しっかり頑張れよー!」と冗談交じりの声援が飛び、会場は和やかな笑いに包まれる。
個人的に好きな5曲目「San Pedro」は、歌川広重の浮世絵が脳裏をかすめるオリエンタル調のメロディが実にかっこ良く、聴き入ってしまった。後半になるにつれ、演奏も安定感が増し、深淵な音を奏でながら、天空へ広がっていくような壮大な世界観を描き出す。まるですべてのジャンルを繋ぎ合せた美しさと、ロックの凄まじき緊張感が溶け合ったサウンドは、まさにワン&オンリーの輝きに満ちていた。
全曲再現を終えると、バンドはきっちりアンコールにも応えてくれた。ウォール・オブ・サウンド的轟音ギターから静寂へ向かい、一気に核爆発を引き起こす急展開に震えが止まらない初期の名曲「Mogwai Fear Satan」、ヘヴィに攻め立てる音圧がたまらない「Batcat」など数曲プレイし、会場も最高潮の盛り上がりを見せた。この日のライヴを境に、僕は最新作を貪るように聴いている。もちろん、次にライヴで聴くときは全曲再現は不可能だろうし、曲の表情やタッチも変わっているかもしれないが。とにかくロック好きのすべての人、ロックとは普段無縁の人にこそ、最新作を是非とも聴いてほしい。改めて、貴重かつ贅沢すぎるライヴだった。当分、この余韻は抜けそうにない。
Text : Ryosuke Arakane
Photo : Tadamasa Iguchi
MOGWAI JAPAN OFFICIAL WEBSITE
MOGWAI OFFICIAL WEBSITE
MOGWAI OFFICIAL MySpace
Hardcore Will Never Die, But You Will MOGWAI | Mr.Beast MOGWAI |