2009.2.11 (wed) @ LIQIDROOM ebisu, Tokyo
ACTs : ASPARAGUS / MO'SOME TONEBENDER / te'
ゲストに招かれたアスパラガスのシノッピーはもちろん、ホストであるte'のメンバーも覚えきれなかった長い長いタイトルのte'企画ライヴ。初の競演となった3バンドは、それぞれパンク、オルタナティヴ、ポストロックなどと呼ばれているが、若い観客はジャンルなど気にしない。ただ心と体を熱くしたいだけで、それを叶えてくれるものをロックと呼ぶだけ。そんな健全なムードを感じたのは、どの時間帯であっても冷静に様子見している人間をほとんど見かけなかったからだ。te'、いい客、付いてます。
最初に登場したのはアスパラガス。くだらない冗談を飛ばすシノッピーの舌鋒は本日も好調で、さらに絶好調なのは変化自在な3人のアンサンブル。どんな曲でも甘酸っぱいメロディが際立つアスパラガスだが、ただ純粋な歌モノと片付けてしまうには、3人のプレイは緻密で奥が深くそれぞれに個性を主張しまくっている。スリーピースが鋭くぶつかりあうバンド・サウンドのスリルを存分に見せながら、最終的にはメロの良さですべてをしなやかに包み込む。その手法はもはや円熟の域に達しているようだ。
続いてモーサム・トーンベンダー。最新作『SING!』はキラキラした明るさに満ちた会心の作だったが、同じトーンでそのまま進まないのがいかにも彼ららしい。最初こそノリのいいロックンロールで沸かせるものの、途中からどんどん不穏にねじれ、インストやら打ち込みやらハウスやらが乱れ打ちとなり、観客はワケのわからない興奮の中に叩き込まれていく。簡単に尻尾は掴めない。どうやっても掴ませない。ロックンロールのど真ん中を射貫きながら、同時に正反対の方向へ裏返ることもできる。とんちの効いた自由度と、何をやってもアリだと思わせてしまう説得力が彼らの真骨頂だろう。
そんなモーサムに比べると、te'はもっと単純明快で吹き出してしまうくらい豪快なバンドだ。インスト=インテリという昨今の風潮を笑い飛ばすように、最初からギターと頭と手足を振り回し、熱のカタマリとなった轟音をぶっ放す。もちろん冷静に聴けば、細やかなアルペジオで静寂を誘い、さざ波のようなリズムでタメを作る展開も多いのだが、結局のところ、4人の音がマキシマムのテンションで爆発した時の興奮がすべて。頭が真っ白になるその瞬間のカタルシスは、ただひと言、ロック、としか言いようのないものだ。だからこそ彼らのライヴでは客が前へ前へと押し寄せる。熱気の発信元であるメンバーの表情を見たいと思うし、その顔から飛び散る滝のような汗を直に感じたいと願ってしまう。物知り顔で腕を組み、目を閉じて鑑賞なんてしていられないのだ。この熱いパフォーマンスを見ていると、言葉なんて本当に不必要。力強いメッセージがなくても、ロックはそこにあって、観客とバンドをがっちりひとつに結びつけてしまうのだと痛感する。フロアを埋め尽くす観客が熱い拳を上げてoiコールを叫んだアンコールの熱気は、どんなメッセージよりも雄々しく爽快なものだった。
Text : Eriko Ishii
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)