2011.2.13 (sun) @ Shibuya CLUB QUATTRO, Tokyo
ACTs : THE REIGN OF KINDO / TLKY (Opening Act)
THIS DAY & AGEというバンドをご存じだろうか? インディー・ロック/エモ界の期待の新人として、JIMMY EAT WORLD、COPELAND、MAEと比肩する美メロを奏で、06年にRUFIO、OVER ITと共に来日も果たした。が、惜しくもフロントマンのJeff Martin(Vocal & Guitar)の脱退に伴い解散し、残りのメンバーで立ち上げたバンドがTHE REIGN OF KINDO(ザ・レイン・オブ・カインド)である。この新バンドを聴いて驚いたのは、前身バンド時代を裏切らない良質のメロディ、さらにベースだったJoseph Secchiaroli(Vocal & Guitar)はヴォーカルに転向するも美声の持ち主だったことが判明したことだ。いやはや、彼らはタダで転ぶやわなバンドではなかった。その新バンドを率いて09年に朝霧JAMで初来日し、僕はその前日の新宿MARZ公演を目撃して打ちのめされたひとりだった。そして、今回セカンド・アルバム『this is what happens』発表後、一夜限りの再来日が決まり、胸が高鳴ったのは言うまでもない。オープニングは女性2人によるダブル鍵盤にドラムを加えた3ピース・バンド、TLKY(テラコヤ)が務めた。キュートな歌を入り口に、心地いい浮遊感とアヴァンギャルドな演奏が混ざり合い、クセになるポップ感を解き放った。
早めに転換を終え、20時前にはシックな装いでREIGN~のメンバー5人が現れる。ただし、今作の録音後にKelly(Keyboad)が抜けてしまい、新しい鍵盤奏者にDanny Pizarro.Jrを加えた新体制で臨むことになり、冒頭曲「Thrill of the Fall」の流麗なイントロを優れた鍵盤捌きで弾きこなす彼を見て、一抹の不安は瞬時に吹き飛んでしまった。Josephはギター兼シェイカーを右手で振りながら甘くメロウな歌声で観客の耳を奪い去り、ステージ右奥ではギター、パーカッション、シェイカーと曲ごとに楽器を使い分け、八面六臂の活躍を見せるMichael Carroll(Guitar)の姿を目に入る。ライヴでも楽曲の仔細なニュアンスを伝えていこう、とするバンド側の誠実な姿勢を感じた。かといって、小さくまとまってるわけじゃない。繊細なアンサンブルを響かせる反面、多彩なビートで骨太のダイナミズムを叩きつけてくる。特にジャジーに駆け抜けていく鍵盤と複雑なドラミングが見事重なり合い、バンド・サウンドの核を成していることがよくわかった。高度なテクニックに裏付けられた演奏で聴き手を翻弄しながらも、そこに息苦しさはなく、むしろ風通しの良さが際立っていた。
後半にはMichael Jacksonの「Rock With You」のカヴァーをやり、王道アメリカン・ポップスにも慣れ親しんできた彼らのルーツが垣間見え、思わず頬が緩んでしまった。その盤石のメロディはMAROON5(*以前メンバーに取材した際、ちゃんと聴いたことがないと笑っていたが)に通じる求心力の高いポップ性が秘め、また、後ろ髪を引かれる湿り気を帯びた哀愁は、我々日本人の感性にも激しく訴えてくる。
アンコールではデビューEP収録の「One Man Parade」をJosephがアコギ弾き語りにより、一服の清涼剤に似た爽やかな歌声で引き付けた。最終曲「The Moments In Between」の重厚な鍵盤が場内に染み渡ると、待ってました! と言わんばかりに歓声が沸く。まるで幽閑な森へと誘ってくれるメロディは、手放しで絶賛したくなる美しさだった。二度目の来日で、早くも渋谷クアトロを深い感動に巻き込んだ彼らのネクスト・ステップを今から期待せずにはいられない。メロディ、演奏力、その両方に心底ウットリさせられた極上の一夜だった。
Text : Ryosuke Arakane
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