2009.3.1 (sun) @ Shibuya AX, Tokyo
SAKEROCKにしか生み出せなかっただろう、誰の日常にも寄り添える音楽を詰め込んだアルバム『ホニャララ』のツアー最終日。この数年は過去最高のキャパシティーを更新している彼らが、今回は年末のキネマ倶楽部2デイズに続く東京公演として選んだのは、渋谷AX。開演前にはお馴染み“生活純子”のナレーションによる同ツアーのオフ映像が流れ、超満員の会場は、1階も2階も爆笑&失笑のいつものムード。そんな、“べつに大きい会場だからって特別なことはしません”的になにげなくライヴがスタートした(その後あっさりとお祭りムードへと変わったのだが)。
新旧含めたセットリストながら、全国を回ることでいっそうグルーヴを増して(曲によっては激烈にテンポアップして)勢いよくほとばしる楽曲たち。その、感情の高ぶりそのままのように演奏される曲と、MC中に前触れなく発射されるキャノン砲(結果的に3発)の衝撃がなんだか同調しているようにも思われるほどのテンションだ。
前回から引き続き、キーボードに野村卓史(グッドラックヘイワ)をサポートに迎え、星野源がギターをマリンバに持ち替えたり、チェロとヴァイオリンを加えての演奏があったりとアルバムさながらの編成で、幅広い楽曲を、時に壮大に、時に繊細に表現していく。特に、ベース・田中馨が野村の結婚のはなむけに作ったという「餞」以降、「老夫婦」~「灰空」の流れは、会場ごと飲み込まれるようなグルーヴがあった。彼らの歌詞のない曲たちは、そのうねりの隙間に聴き手の思いや感情を滑り込ませる懐の深さも持ち合わせているのだ。
本編のラストは、アルバムのラストを飾る「エブリデイ・モーニン」。非日常から日常へと戻っていく時間を温かく飾ってくれるこの曲は、彼らのライヴの最後にはぴったり。とはいえ、いつもよりは演出少なめだったかな?と思った瞬間始まったアンコールでは、トロンボーン・浜野謙太が、ピーターパンよろしくフライングで登場。その宙吊りのまま、これもお決まりパターンのドラムとスキャット対決から、「生活」へ。空中でのトロンボーン演奏は、それはそれは日常からかけ離れた光景だったけれど、そんな非日常の映像を目に焼き付けて会場を後にしたオーディエンスたちは、じつに幸せそうな顔をしていた。
Text : Ayumi Tsuchizawa