2008.3.1 (sat) @ Daikanyama UNIT
8年振りの再会
満員のフロアに目立つのは、ちょっと懐かしいバンドTシャツ(スプロケット・ウィールやAIR JAM’98、当然CHH印もたくさん!)。見た目はキッズだけど実年齢はたぶん30代という客層を動かすのは、WRESTLING CRIME MASTERとCOKEHEAD HIPSTERSの"BOLLOCKS BROS TOUR"。95年に行われた対バン・ツアーの再現は、同窓会というにはちょっと高すぎる熱気に包まれてスタートした。
まず先手は関西代表レスリング・クライム・マスター。ツービートをあまり使わないずっしりしたリズムや、重たいリフ中心のギターは今聴けばメタルの要素が強いし、リズムに乗って言葉を吐き捨てていくボーカルも、ラップと呼ぶにはフロウがなさすぎ、武骨すぎと感じられるかもしれない。しかしこのストロングな音こそが90年代にハードコアと呼ばれていたものであり、その空気をそのまま真空パックして転がっていくステージは笑ってしまうくらい熱くて楽しげだ。笑顔のメンバーに「かっこいー!」「おっとこまえー!」と声援(というかヤジ?)を飛ばす客席も同じこと。一触即発の緊張感ではなく、みんなでこの祭を楽しもうとする連帯感が、最後までいい空気を維持していた。
転換時はレイジやビースティやサブライムなど90年代ムード満点のDJがフロアを盛り上げ、いよいよ開始かという瞬間には難波章浩(ULTRA BRAiN)がステージに飛び入り。彼の呼びかけによって登場したのがKOMATSU、SANO、KOBA、MURAの4人である。KOMATSUが思わせぶりな声で「コークヘッド・ヒップスターズ、イズ・バ~ック」と囁いた瞬間、観客は文字どおり大爆発! ハチャメチャに飛ばしているようでじつは細やかなアレンジを練り込んだサウンドも、膝蹴りのようなジャンプを繰り返すKOMATSUの派手なパフォーマンスも、あきれるくらい昔のまんまだ。
もっとも解散してから今日までNIAGARA 33とLO-LITEで活動を続けていた4人だから、現役の勘が失われていないのは当然だが、それにしてもバンド全体から放たれるこのフレッシュな空気は何だろう。90年代の懐かしさというテーマで括りきれないのは、コークヘッドのサウンドが、アレンジのセンスが、時代に関係なく鮮烈であったことの証なのだろう。94年に発表されたファーストから97年のラスト・アルバムまでまんべんなく網羅したセット・リストだが、古さはまったく感じなかったし、今もなお圧倒的に自由で痛快。それは昔からのファンだけでなく、この日初めて彼らに接した若いリスナーも絶対に感じていたはずだ。
そして変わらないサウンドの一方で、変わったのは「優しくなったよね(笑)」というMCに象徴されるバンドの雰囲気。昔の彼らは、こっちは好き勝手やるから好き勝手に暴れてくれ、という放任主義でステージに立っていたが、今はお互いにアイコンタクトを取りながら、全員が心から楽しめるように、無理なく笑顔になれるように心を砕きながらライヴを進めていく。「もういいトシだから無理できない」と笑いつつ「これからも、こんなふうにコークヘッドやっていきます」と今後の活動についても前向きに語っていた彼ら。普段は「しょうがねぇなぁ」という感じの苦笑いを浮かべることが多いKOMATSUだが、この日最後に見せた彼の笑顔は、100パーセントピュアな少年のようだった。
Text : Eriko Ishii
Photo : Wataru Umeda