2011.3.4 (fri) @ Shibuya CLUB QUATTRO, Tokyo
すべての歯車が噛み合うと、こうなるのか! と心の中で何度叫んだことだろう。会場内には狂気乱舞の花火がドカンドカン打ち上げられる、最高のパンクロック・ショウが繰り広げられた。いや、マジですごかった。
難波章浩のソロ第2弾作『PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT』は、真正面から"パンク・ロック解禁"を堂々謳った内容だった。そのレコ発ファイナルは、難波の嗜好を反映させた対照的な実力派2バンドを迎え、盤石の態勢を敷く。「16、17歳の頃は寝ても覚めてもHi-STANDARDを聴いてた。俺はヴォーカル兼ベースだから、難波さんを意識してて……、でも難波さんに対抗していきたい」と負けん気の強さをむき出しにした木下(Vocal & Bass)率いるlocofrankの演奏は半端じゃなく気合いが入っており、鋭利かつ硬派な純潔パンクを思う存分叩きつけていた。ミラーボールが放つ煌びやな高揚感をそのままサウンドに落とし込んだThe Telephonesは、フロアを瞬時にダンスホールに変えるアグレッシヴさが際立っていた。いい意味でオシャレにお上品にまとめよう、という意識はゼロだ。どこまで汗臭い熱狂を運べるかにベクトルが一致したサウンドは、ロックのダイナミズムに溢れていた。
両バンドの作り上げた熱が、遂に主役の難波章浩に渡される。昨年フジロックで3ピースのバンド編成を初お披露目したが、今年新たなメンバーを加えK5(Guitar)、Akila(Guitar)、SAMBU(Drums)の4ピースの新体制を整えた。「難波章浩、行きます!」と自ら宣言し、「MY WAY」で勢いよくスタートを切る。パンク・ロックならではのシンプルな疾走感、口ずさみやすいキャッチーなサビが交差すると、魔法でもかけられたように観客は大合唱する。この曲だけではない。前半に最新作の楽曲を固めた流れで、表題曲「PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT」を含むほかの新曲でも途轍もない求心力を見せつける。それら直球のパンク・チューンにハイスタの影絵を重ねた人も多かったに違いない。だが、難波章浩の生気に満ち溢れた笑顔とどこまでも突き抜けていく伸びやかな歌声は、喜怒哀楽のあらゆる表情を包み込んでいた点において、さらなる説得力を加えていた。
その説得力を援護する意味でも、ツイン・ギター編成(Akilaのコーラス・ワークも絶品!)になったことは大きいだろう。音が重厚になったのは言うまでもなく、下半身の安定感は数段アップされている。図太く素早い抜群の駆動力を手に入れたことで、向かうところ敵なし状態の豪放さに拍車がかかっていた。中盤、「輝く日々」の後に「もっと輝いちゃおうぜっ!」と呼び掛け、ハイスタの「STAY GOLD」がプレイされるや、モッシュやクラウドサーファーの数が一気に増え、場内の温度はいきなり10度ぐらい上昇したんじゃないかと思うほどの沸騰ぶりだった。
それから初の1stフル作『GROWING UP』収録の「NEW LIFE」を演奏し、あの人懐こいベース・ラインが響いたときの悲鳴交じりの歓声もいまだ忘れられない。本編最後は最新作の中で個人的に大好きな曲「未来へ~It's your future」で締め括った。英語詞メインの中で「未来へ」の部分のみ日本語にしたリリックはライヴで予想以上に映え、まさに明日へ向かうポジティヴなエネルギーに充溢していた。そして、ここで難波章浩の口からサプライズが突如投げ込まれる。今年9月に横浜スタジアムにてAIR JAM級の特大フェスを開催することを告げ、これには地鳴りに似た歓喜の声が沸き起こった。その余韻を引きずったまま、アンコールではカヴァー曲「TAKE ME HOME,COUNTRY ROAD」に続き、なんと「California Dreamin'」、「TURNING BACK」と連発し、ハイスタ世代の涙腺を根こそぎ奪っていく。さらにWアンコールでは弾き語りヴァージョンで「BRAND NEW SUNSET」をプレイし、多くの観客が噛みしめるように歌詞を歌い上げていく様がなにより印象的だった。
パンク・ロックの疾走感に、難波章浩の歌声が乗る……、それを待っていた人たちがどれだけ多かったことか。送り手と受け手が激しく衝突しながら、相思相愛となって溶け合うライヴを久しぶりに観た気がした。
Text : Ryosuke Arakane
Photo : Terumi Fukano
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