2008.3.30 (sun) @ TOKYO INTERNATIONAL FORUM HALL A
前作『POINT』のツアーで観せた、映像と音楽が同時進行で進んでいくパフォーマンスをまだありありと思い起こすことができる人も多いだろう。CORNELIUSが作り上げた新しい試みは、観客にとって体験として深く身体に残るものだったと思う。そして、最新アルバム『SENSUOUS』のレコ発として展開された"SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW"の国内ファイナル・東京国際フォーラム公演は、"ULTIMATE SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW"というタイトルどおり、その精度をよりいっそう高め、ライヴという枠を飛び越えた内容となった。
ジャム・セッションのようにさまざまな音が混じり合う音が徐々にメロディを作り上げ、ステージ上のメンバーを映し出す照明がビートと全くタイミングで動き、止まる。最上階まで埋め尽くされた会場からの、叫び声とも溜息ともつかない声が響き、この日のライヴがスタートした。
人差し指と中指が、雑然と小物が置かれたテーブルの上やピアノの鍵盤の上を旅するような映像の「TONE TWILLIGHT ZONE」、どこにでもありそうなダイニング・テーブルの上で、角砂糖が空中でダンスを踊り、コインが螺旋を描いて飛んでいく「Fit Song」、ステージ上に降りてきたミラーボールが、満ち欠けする月のような影を落とす「Star Fruits Surd Rider」、広場に置かれた鏡によって人物や風景がシンメトリーに映し出される「Music」。バンドによるタイトな演奏にピタリとシンクロしながら、じつにさまざまな風景、状況を映し出す映像や照明は徹底的に計算され、一分のスキもない。そのマッドさに相反するように映し出される、ごく日常的な風景や事象が、観客との接点を生み出していたと思う。
そんな映像の中でもひときわ印象的だったのが、TVのチャンネルを次々と変えていくようにCMやアニメ、ニュース映像が曲のタイミングと合いながら細切れに映し出される「Another View Point」。まるでリアルタイムでTVを見ているかのように、日曜の夕方に流れているだろうニュース番組の陰惨な場面や、人気アニメ、どうでもいいようなCM。それらすべてを並列に切り取った視点は、普段の私達の視点そのもののようにも思えて、CORNELIUSや映像スタッフが作り上げた圧倒的な世界も、自分自身が抱えた現実世界の延長線上に広がったものなのだと感じられた。
アンコールでは、小山田が1人で舞台に登場し、手元を映し出すパフォーマンスで「eyes」~「E」を演奏。理科の実験のように見た目に楽しい演出で会場を沸かせ、「Sleep warm」で終了すると、スタンディング・オベーションが沸き起こった。終わってみれば全25曲という曲数ながら、一つの作品のように大きな流れを持った今回のライヴ。どこかのインタビューで小山田自身もこのライヴのことを“ショウ”と表現していたけれど、インスタレーション=空間芸術とも呼びたいような、この上なく豊かな内容だった。そして、『SENSUOUS』のジャケットの色合いにブロックごとに分けられて客席に置かれたポスターも含めて、この日目撃した光景を、観客はまた何年も思い浮かべ続けることになるのだろう。
Text : Ayumi Tsuchizawa
Photo : Ryo Tanahashi (Rehearsal) / Shoichi Kajino (Performance)