2010.5.1 (sat) @ Shibuya CLUB QUATTRO, Tokyo
ACTs : FROM MONUMENT TO MASSES / WORRIER / LITE / MIRROR
今、"ポスト・ロック"という言葉は本来の意味合いにおいてその機能を果たしているか。かつてそう呼ばれていたものに関しては、もうポップスとして消化され、スタイル化したと言っていいと思う。だが、今回共同でショーケース・ツアーを組んだParabolicaとCATUNEの両レーベルからは、あくまでもサウンドの面で一歩先に進んだ、本来の意味での"ポスト・ロック"を提示しようという強い気概を感じる。その最新の経過報告を確認するため、この日のツアー・ファイナルに臨んだ。
MIRROR
最初に登場したのは、CATUNEから2年9か月ぶりとなるEP「RECOLLECTION」をリリースしたばかりのMIRROR。テクニカルでかなり構築性の高いインストゥルメンタル・ロックの中にキャッチーなフックが盛り込まれていて、いきなりのいい手応えだ。しなやかさと風通しの良さをもった彼らの演奏に、オーディエンスも早速ダイレクトな反応を返していた。
LITE
続いて登場したのはLITE。ここ1年の間で彼らのステージには何度か足を運んでいるが、何度見ても彼らの鉄壁のアンサンブルには唖然とさせられる。特に昨年末にリリースした「Turn Red EP」でシンセサイザーを導入して以降、サウンドの幅はさらに広がり続け、その進化のスピードは加速するばかりだ。常に新機軸を模索しながら、ステージで聴き手に提示してくる今の彼らからは、やはり目が離せない。
WORRIER
次はそのLITEの井澤惇らが主宰するParabolicaからリリースを果たしたアメリカのWORRIER。ミニマルなフレーズを重ねながら次々と転調を繰り返す構成から、彼らを昨年のUSツアーの前座に抜擢したFOALSに近い印象を持っていたのだが、実際はシークエンスを使いながら歌を前面に出したもので、音源で抱いていたイメージとはまた少し違って面白い。客を煽りながら会場の温度を上げていく様は、この日の出演者の中でも一際異彩を放っていた。
FROM MONUMENT TO MASSES
最後はFROM MONUMENT TO MASSES(以下、FMTM)。機材トラブルでスタートが遅れる中、会場には登場を待つ期待と何とも言えない緊張感が漂う。それもそのはず。彼らは今回のツアーの前に、バンドの解散を発表していたのだ。情感あふれるギターに柔らかいプログラミング音とリズム隊、そこにヴォイス・サンプルを重ねた彼らのサウンドは非常に耳なじみがよいのと同時に、ポリティカルなメッセージを持ったものだ。これだけストイックな表現を続けるのはやはりそれなりの苦労も多かっただろう。だが演奏中はそういった感傷的なムードもなく、オーディエンスは彼らの演奏に身を委ね、心地よく揺れていた。彼らからもその雰囲気を心から楽しんでいるように見えた。
総じて、それぞれ異なるサウンド・アプローチを取っていながらも"あくまでも音の強度で聴き手に訴えていこう"という頑なな意志がどのバンドからも感じられた。音楽に対してどうにも曲の意味合いばかりが求められるような日本の音楽シーンでは、ParabolicaとCATUNEが提示しているサウンドはやはりカウンターとして作用するものだ。残念ながらFMTMは解散してしまったが、両レーベルは今後も次々とリスナーの耳を大いに刺激する音楽を送り出してくれるだろうし、その支持基盤が着実に拡がっていることをフロアで身体を揺らしながら実感した。
Text : Yuya Watanabe
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)
Parabolica Records Official Website
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