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LIVE REVIEW

"MAXIMUM SOUND STYLE Vol.1"

2009.4.29 (wed) @ Shinkiba STUDIO COAST, Tokyo
ACTs : BACK DROP BOMB / ACIDMAN / LOW IQ & THE BEAT BREAKER / BRAHMAN/ FRONTIER BACKYARD / 凛として時雨 / MARS EURYTHMICS / fam

"毎回ひとつのテーマ、アーティストをピックアップしていく"というテーマのもとスタートしたイベント"MAXIMUM SOUND STYLE"。その第1回目は、BACK DROP BOMBと、彼らが 1997年から2000年まで企画した伝説のイベント"BAD FOOD STUFF"をフィーチャーしたものとなった。参加メンバーは、BDBをはじめ、BRAHMAN、FRONTIER BACKYARD、MARS EURYTHMICSら超豪華な顔ぶれだ。


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fam


そんな、日本のバンド・シーンを創り上げてきた錚々たるメンツを前にオープニング・アクトを務めたのはfam。今年でキャリア4年目というニュー・カマーは、今日の出演バンドたちにも少なからぬ影響を受けて現在の音楽性を開拓したに違いないだけに、緊張するなというほうが無理というものだが……。ステージを勢いよく躍動し、さらには床を転げまわりながらベースを操る宮田祐貴のパフォーマンスは、緊張を微塵も感じさせない。そんなアグレッシヴなムードから放つ、ハードコアのスピード感やオルタナティヴ・ロックの独創性など、さまざまな音楽要素を感じさせるサウンド。そして、センチメンタルなムードをそこはかとなく漂わせるメロディで、聴き手をグッと惹きつける。感情をたっぷり込めた激しくも劇的な音世界は、インパクト十分!


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MARS EURYTHMICS


「MARS EURYTHMICS、始めますーー」。幕開けの合図は、磯部正文の飾りっ気ないひと言。しかし、飾りっ気はないけれども、なんともいい味を持っているその言葉の響きは、MARS EURYTHMICSのサウンドと本当によくマッチしていた。軽快なビートとともに、情感をたっぷりと込めた歌声を奏でる「それを」。新曲の「Have a nice day」も、力強くもしなやかなグルーヴにのって、雄々しいメロディが響く。その質感はまさに「カカオ82%」の、“胸の奥がズキンズキンとする”という歌詞のとおりで……。シンプルなサウンドでありながらも、音ひとつひとつが、そしてメロディひとつひとつが、胸の奥までじんわりと染みて心をギュッとわしづかみにする。シャープ、かつダイナミックなギターをこの日も披露した伊藤悦士が5月13日のライヴをもって脱退、別の道を歩むことを決めた彼ら。これからも続いていく、それぞれの音楽人生の前途に、幸多かれ━━。


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凛として時雨


SEのノイズを切り裂くように、いきなり疾走を開始するドラム。そこへ絡みつく轟音と、鼓膜に突き刺さる男女のハイトーン・ツイン・ヴォーカル。それは、会場の空気感を、ヒリヒリとした緊張感に満ちたものに一変させるには十分すぎるほどの威力だ。ヴォーカル&ギター・TK、ベース&ヴォーカル・345、ドラム・ピエール中野。凛として時雨の超個性的サウンドは、この3人の中からしか生み得ない唯一無二のものなんだろう。高速ビートからテンポをシフト・チェンジ、空間を揺らぐような音の粒が独特な雰囲気に染め、再び激しく疾走する「Telecastic fake show」。極太ベースで幕を開け、ループするギターと4つ打ちリズムが跳ね、かと思えば轟音が渦をまく「DISCO FLIGHT」etc……。激しく、ときにたおやかに、自由自在に変幻するスリリングな演奏で聴き手を撃つ。ほとんど絶叫に近いハーモニーと残響音で衝撃を残していったラスト・ナンバー「傍観」まで、ステージには息詰まるような緊張感が張り詰めていた。


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FRONTIER BACKYARD


「祭りですねこれは! 完全なるお祭り!」と、オーディエンスとコール&レスポンスしながら大騒ぎのTGMX、今日も絶好調! 4番手・FRONTIER BACKYARDのパフォーマンスは、もうまさにその言葉どおりだ。ファンキーなギター・カッティング、スペイシーなデジタルサウンドが乱れ飛ぶ「MUSIC IS A BASIS」。"NANANANA.NANANANA━━"。ハッピーなムードいっぱいのハミングを大合唱した「Flower of Shanidar」。この人たちのナンバーはどの曲も楽しさに満ち満ちていて、聴いていると自然と笑顔になってしまう。さかのぼること12年前、1997年5月に下北沢シェルターで初めて開催された"BAD FOOD STUFF"にはSCAFULL KINGとして出演した彼ら。バンドのスタイルは変わっても、音楽を心の底から楽しんで、ライヴという“現場”をめいっぱい盛り上げてくれる姿勢は、今もまったくもって不変だ。ステージを跳びはねまくり、フロアに飛び込んでファンとはっちゃけまくったライヴに、拍手喝采!


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BRAHMAN


呪術的なムード漂う音色とパーカッションのアンサンブルが、ライヴの幕開けから異様なムードで会場を包み込む。BRAHMANが登場すると、そこはどこでも、他には決してない彼らだけの空間に変貌する。トライバルなリズムとファストなサウンドが交錯する「THE ONLY WAY」で幕を開けたこの日のライヴも、唯一無二の世界にフロアはヒートアップ! ボディアタックの連発、クラウドサーフの嵐、拳を振り上げて楽曲を叫ぶように歌う者……。反応の仕方はさまざまだが、そのひとりひとりはどれも同じように上気しまくっている。その熱にさらに火を注いだのが、イントロが鳴った瞬間に大歓声がこだました「DEEP」。僕自身、本当に久しぶりに体験した、激しい音の渦の中から響き渡るTOSHI-LOWのスピリチュアル・ヴォイスはやはり圧倒的だ。さらに、日本語詞の名曲「BASIS」もまた、髪をなびかせ、気合とともに汗をほとばしらせる迫力の演奏に視線が釘付けになった。ただただストイックに、楽曲の世界観を全身全霊で表現している彼らの姿は、いつ見ても心が震える。エンディングを迎えた瞬間TOSHI-LOWが、天に祈りを捧げるように両手を合わせへたりこんだラスト・ナンバー「ROOTS OF TREE」まで……。約35分という凝縮した時間の中で、神々しいまでにドラマチックな世界を描いたライヴ。それはまさしく、BRAHMANだからこそ作り得る圧巻の空間だった。


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LOW IQ & THE BEAT BREAKER


「さぁ皆さん! お手を拝借!」。オーディエンスを巻き込んで、フロアを手拍子で埋め尽くすエンターテイナーっぷりは、今日もやっぱりおみごと! 恒岡章とお揃いのコスチュームに身を包み、ドラムとギター&ヴォーカルの2ピース・スタイルでSTUDIO COASTを盛り上げに盛り上げたLOW IQ & THE BEAT BREAKER。轟音リフをぶちかまし、かと思えば軽やかなストロークでドラムとアンサンブルする超シンプルなサウンドで、こんなにも心と身体が踊るサウンドを生み出せてしまうウデはまったくもって驚異的だ。「すごい懐かしい感じもしたんだけど、でも、懐かしいだけじゃないんですよ。"いい進歩"っていうか、いい歳のとりかたができてるなって思います」。"BAD FOOD STYLE"には、SUPER STUPIDのメンバーとして出演していたイッチャンが感慨深そうな言葉を語ったステージには、いつのまにか、彼と一緒に"いい歳のとりかた"をして成長してきた仲間たち、TGMXとが磯辺正文が乱入! TGMXはフロアまで降りていって拳を振り上げてるし、ラスト・ナンバー「LITTLE GIANT」はイッソンがヴォーカルを務めてイッチャンはギターを弾きまくってるしで、騒がしいことこのうえなし(笑)。底抜けに楽しいお祭りムード一色のステージに、FYB同様の痛快な喝采が乱れ飛んだ。


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ACIDMAN


「今日出てるバンドたちは、俺らが学生のころからずっと憧れてきた本当に大好きな先輩たちばっかりで……。一緒にこういうステージに立てることを嬉しく思います。呼んでくれて本当にありがとうございます」。そう真摯に語ったヴォーカル&ギターの大木はもちろん、メンバー一同、この日のステージに立てたことはACIDMANにとって感慨ひとしおだったはずだ。彼らのパフォーマンスは、その喜びをエネルギーに変えて発火させているかのようにすら感じる、熱気満ちあふれる演奏が印象的だった。大木の気合一閃から、スピード感が一気に弾けたオープニング・ナンバー「飛光」。3人で呼吸をひとつに合わせ、緩急を利かせながら放つ「ストラマライト」も、轟音ととともにポジティヴなメッセージが突き刺さった「ある証明」も……。音の広がりとシンクロして、眩い光がフロアを包んでいく光景は、本当に美しい。激しさの中にも見る者を惹きつける独特のオーラをまとっている、ACIDMANの真髄を見せつけたこの日のステージ。そのエンディングもまた、彼らならではのディープな世界が展開! 約10分にわたる、静寂と混沌が同居する大曲「廻る、巡る、その核へ」。憧れてきた先輩たちから受け継いださまざまな音楽要素を、自らのセンスで昇華させて創造したACIDMANならではの深淵な音物語が、そこにはたしかにあった。


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BACK DROP BOMB


イベントの大トリを務めたのはもちろん、"BAD FOOD STYLE"の企画者でもあるホスト役・BACK DROP BOMB! 彼らのセットは、まさにこの良き日ならではのスペシャル・スタイルだ。ASPARAGUSのギタリスト・渡辺忍、54-71のドラマー・BOBO、さらにSCAFULL KINGのホーン隊3人までゲストに招き入れたラインナップは、問答無用に超豪華! BDBの真骨頂と言ってもいい極厚&重量サウンドに、盟友たちのプレイが色つやを加えて、フロアの人波を縦横無尽にグルーヴさせる。さらにこの日は、今年3月にリリースしたベスト・アルバム『THE BDBEST』をライヴで再現するかのような、BDBの歴史の一端を凝縮したセットリストにもファンは狂喜だ。最新オリジナル・アルバム『VENOMETEORIC』収録曲「GREAT VIEW」でロケットスタートをぶちかまし、その疾走感にのって「DON'T」でダンサブルに、かつトリッキーな音色で聴き手を興奮状態に叩き込み……。スキャフルホーンズの多彩な音色が冴えに冴えた「BOUNCE IT」や「BLAZIN'」など、"AIR JAM世代"リスナーは涙もの間違いなしの楽曲もこの日は連発だ。自らのバンド名をタイトルに冠した名曲「BACK DROP BOMB」で、記念すべきイベントの盛り上がりにとどめを刺してみせたBACK DROP BOMB。日本産ラウドロック/ミクスチャー・サウンドのオリジネイターらしい貫禄で、堂々たるフィニッシュ!


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BACK DROP BOMB


Text : Toshitomo Doumei
Photo : Tsukasa Miyoshi


fam Set List
01. over
02. season
03. leave the past behind
04. can't crush my feelings
05. only dreaming calm days

MARS EURYTHMICS Set List
01. GT Bolero
02. I swear with sll my doul
03. それを
04. Have a nice day
05. カカオ82%
06. 価値ある形
07. 砂上の楼閣

凛として時雨 Set List
01. J POP Xfile
02. Telecastic fake show
03. DISCO FLIGHT
04. nakano kill you
05. 感覚UFO
06. 傍観

FRONTIER BACKYARD Set List
01. Fake us
02. MUSIC IS A BASIS
03. Putting on BGMs
04. TWO
05. Flower of Shanidar
06. JUNKY BEAT
07. We want crazy sticks
08. the room

BRAHMAN Set List
01. THE ONLY WAY
02. SEE OFF
03. BEYOND THE MOUNTAIN
04. DEEP
05. THE VOID
06. SPECULATION
07. EPIGRAM
08. BASIS
09. LOSE ALL
10. CAUSATION
11. FIBS IN THE HAND
12. ROOTS OF TREE

LOW IQ & THE BEAT BREAKER Set List
01. F.A.Y.
02. T・O・A・S・T
03. 五日はまた雪(Punk Ver.)
04. So Easy
05. SWEAR
06. GOT LUCKY
07. Way It Is
08. MAKIN' MAGIC
09. LITTLE GIANT

ACIDMAN Set List
01. 飛光
02. ストロマトライト
03. 波、白く
04. ある証明
05. CARVE WITH THE SENSE
06. 廻る、巡る、その核へ

BACK DROP BOMB Set List
01. GREAT VIEW
02. DON'T
03. IN ORDER TO FIND THE NEW SENSE
04. REMIND ME
05. PERSPECTIVE
06. FLIP OUT
07. SIGH
08. BOUNCE IT
09. BLAZIN'
10. TURN ON THE LIGHT
11. THAT'S THE WAY WE UNITE
12. BACK DROP BOMB


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