2011.5.3 (tue) @ Sinagawa STELLAR BALL, Tokyo
2011年初のワンマン・ライヴ、しかもUSTREAMとニコ生での配信も行われるということで、ソールドアウトとなった品川ステラボールのフロアには熱気とともに、オーディエンスの期待が醸し出す不思議な緊張感も漂っていた。それを解き放ってくれたのは言うまでもなくテナーの音楽で、この日ほど彼らのたたずまいに、リスナーからの期待に確実に応えたいというどっしりとしたたたずまいを感じたことはなかった。「信じなくていいよ そんな悲しいニュースを」というリリックから始まる「CLARITY」を1曲目にしたことにまず、彼らのこのライヴへの想いが存分に伝わってくるオープニング。
常にクールな印象のホリエのヴォーカルもとりわけ今日はエモーショナルに聴こえる。6曲目の「BIRTHDAY」まできたところで、ホリエは、久しぶりに会う友人に対してのように観客に「短い時間ですけれど、同じ夢を見たいんです」と語りかける。エモーショナルな楽曲の一体感と同時に、これまで夢をなくした人物や小さくはかないものたちを主人公に、ある意味突き放すような語り口で歌を紡いできた彼らが、あらためてリスナーへの感謝を伝えるぐっとくる瞬間だった。
大山のロックなギター・ソロが耳に残る「FREEZING」をはじめ、1月に発表されたアルバム『STOUT』で試みられたアップ・トゥ・デートな荒々しいアンサンブルが、現在の4人でのライヴのアグレッシヴなテンションによるものだということを最認識させられる。昨年のアルバム『CREATURES』も含め、ここ数年のテナーの軌跡は、中盤でプレイされた「Lightning」、「CLONE」といったメロディアスで荘厳な楽曲に顕著なロック・バンドとしての風格と、「Man-like Creatures」などで推し進められるダンサブルなリズムへのアプローチから生まれる同時代性、その双方を獲得するためのものだったと言えるかもしれない。そうした方法論の結実を、肉感的なバンドのアンサンブルで証明してみせることに、現在のテナーの強さがあるように思う。
現在のテナーを象徴するようなそのエナジーをまたしても提示したのが、この日も披露されたニュー・シングル「VANDALISM / SILLY PARADE」。初期の楽曲にあるパンキッシュで衝動的なエネルギーを復権させ、UKやUSのインディ・シーンともリンクする小気味よいプロダクションの妙も忘れない。ステラボールの場内がこれほど狭いと感じられるほどはないというくらいの熱狂は、テナーの新境地がファンに伝わっていることの証明だろう。
さらに当日のMCでは、7月13日にリリースのニュー・シングルについても触れられた。「いい曲がありすぎて、まだどの曲にするか決まっていない」と笑うほど、現在のクリエイティヴな作業の充実には自信を持っているのだろう。
アンコールの「MARCH」に至るまで、あくまでバンドのダイナミズムを核にしたうえでの可変性を存分に味わえ、バンドの懐の深さを提示したパフォーマンスだった。
Text : Kenji Komai
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