2014.5.8 (thu) 1st Stage @ Billboard Live Tokyo
2011年の来日公演以来、3年ぶりとなるTORTOISEのBillbordでのステージは、ツインドラムのポリリズミックなリズムがストイックなムードを持つ「Gigantes」でスタートした。90年代から20年以上の活動を続ける彼らならばさもありなん、フロアには会社帰りと思しきスーツ姿の観客もいて、バンドの佇まいが間近で感じられる親密な空間とともに、食事しながら思い思いに楽しむことができるこのヴェニューはTORTOISEとハマっていると感じた。
ゆったりとしたグルーヴのなか途中でダビーなムードになり、最後にカオスに至る「High Class Slim Came Floating In」、タメの効いたビートとメロウなメロディを特徴とする「Stretch (You Are All Right)」、変拍子からスピード感あるリズムへ、ダブルベースも駆使された「Eros」と、近頃日本でも帯付きで再発売された5枚のアルバム群そして現時点での最新作『Beacons of Ancestorship』から選りすぐられた楽曲が、繊細なタッチと勇壮なアンサンブルで奏でられていく。
イタリア映画のサントラのようなデカダンな「I Set To My Face To The Hillside」に続き、次第に高揚感を高めていく「Benway」そして耽美な「Minors」と続く音の鳴りはとてもエロティックだった。ジョン・マッケンタイアを中心に、次々とメンバーが楽器を持ち替えながら、時にストレートに、時にストレンジな変化球を用い、緩急のリズムを自在に生み出していく音の磁場に酔う。
続く後半は、開放感と突き抜けるようなブライトなメロディを持つ「Prepare Your Coffin」、スケールの大きなアンサンブルでスペクタクルを作り上げる「Charteroak Foundation」と続き、プログレッシヴな「Salt the Sky」で本編の幕を閉じた。
アンコールに応えプレイした「Speakeasy」の多幸感に客席も再び湧く。そしてドラマティックな「Glass Museum」まで、1時間強のコンパクトなセット。新曲こそなかったものの、ポスト・ロックというカテゴライズさえ古めかしく感じられてしまう今だからこそ、TORTOISEという存在が間違いなく世界の音の地図の様相を変えたこと、そしてイノベイティヴな音響に挑戦していることをあらためて強く印象づけた夜だった。
Text : Kenji Komai
Photo : jun2