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LIVE REVIEW

"Springfields 09 ~東京場所~"

2009.5.3 (sun) @ Hibiya YAGAI DAIONGAKUDO, Tokyo
ACTs : 細野晴臣 / Port of Notes / LITTLE CREATURES / SAKEROCK/ EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX / 木津茂理社中

この春よりスタートする新たな野外ミュージック・フェスティバル"Springfields"。大阪は服部緑地野外音楽堂に続き、東京でも日比谷野外大音楽堂で、世代を超えたポップなミュージシャンたちとオーディエンスとの集いが開催された。


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木津茂理社中


オープニング・アクトの木津茂理社中に続き、最初にステージに現れたのはEGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX。「今日は気持ちいい曲ばかりやるから」という森ラッピンの言葉のとおり、ロックステディな「A Love Song」で幕を開け、「あしながのサルヴァドール」とアッパーでカオスな通常のエゴのライヴとは異なり、春の陽気にぴったりのスペシャルなセットリスト。いつも尋常でないテンションの中納のパフォーマンスも、しっとりとそしてチャーミングだ。「5月の感じの曲やります」と語った後は武嶋聡のサックスが印象的な「五月のクローバー」、そして最新作から「!楽団」「Dear mama」と優しく、包容力に溢れたセレクトが場内を温かい空気で満たしていく。「みなさん、良い思い出作って帰ってください」と最後は「かつて..。」。EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXXとして、ニューウェイヴの混沌とカッティングエッジなサウンドとその奥にある多様な音楽性を提示している彼らの、ジェントルな魅力に溢れたアクトだった。


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EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX


2番手に登場のSAKEROCK。グッドラックヘイワ野村卓史をキーボードに迎えて、「平凡な人生」~「慰安旅行」と始まり、あのノスタルジックでのほんとしたムードがたちまち広がっていく。ゲーム・ミュージックとオールドタイムなジャズを融合させたようなストレンジな「ホニャララ」が終わると大きな拍手が起こる。続いて最新作から「千のナイフと妖怪道中記」、「最北端」。ひとつの楽曲のなかに様々なエレメントを盛り込んでいく彼らの楽曲はライヴではさらにスリリングに聴こえる。伊藤大地の口笛をフィーチャーした「エブリデイモーニング」、そして「餞」と、実験音楽、冗談音楽、ムード音楽、音響系といったカテゴライズを超越したアンサンブルは続く。ハマケンのMCも今日は少なめに、彼らのとぼけた音楽の奥にある滋養は野音のオーディエンスにもしっかりとアピールしたようだ。ラストは「この曲、野音でできるのがすごく嬉しいんだよね」という星野源の言葉とともに「会社員」。


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SAKEROCK


続いてのLITTLE CREATURESは、のんびりした野音の雰囲気を引き締めるように黒と白の衣装に身を包み、おもむろにステージ現れるときも、はけるときも全力疾走(笑)。なんだか新人バンドのような瑞々しさで、ディスコパンクを経由したような最高のロックンロールを鳴らしてくれた。彼らの音楽性には、その時々の彼らの音楽的嗜好が如実に表れているけれど、ここ数年のジャジーでオーガニックなムードを経て、いままたこうしたロックに回帰していることは注意しておくべきだろう。ポリスを思わせるホワイト・レゲエや、「相撲の仕切り直しを取り入れてみました」というナンバーでは、鈴木正人と栗原務の奏でるソリッドなグルーヴの上、青柳がギターを置きなんとハンドマイク歌うという場面あり、そしてゴールディー「Inner City Life」のアーバンなカヴァーも秀逸。何が出てくるかわからない、そんなニューウェイヴの混沌やいい意味でのアマチュアリズム、そしてそこはかとないユーモア!を体現する彼らに脱帽だ。


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LITTLE CREATURES


心地よい夕闇が会場を包むころ、Port of Notesは、Hands of Creationの小池龍平、そしてBICをサポートに迎えてのパフォーマンス。照明の美しさとともにサウダージな感覚とメランコリックなメロディが会場を満たしていく。オープニングの「エイシェント・ブリーズ」からそのままパーカッションのリズムが続き、永遠の名曲「(You are)More Than Paradise」への流れに震える。畠山美由紀が盛り上がる客席に向かって「いいね! そんなあなたたちに」と焼酎をもう一杯ならぬ「One More Bourbon」。さらにこの夜は待望の新曲も披露してくれた。これがまた、これまでの彼らのさまよう感覚や歌ごころを備えたまま、それぞれのソロ活動を経て生まれた新たなPort of Notes節というべき大名曲。こみあげる展開から生まれるせつせつとした調べ、卓越した小島大介のギタープレイと畠山美由紀のおおらかかつ繊細なヴォーカル、そして一つひとつの心情が手に取るように伝わってくる歌のリアリティがさらに磨かれているのだ。予定されている新作が早くも待ち遠しくなる演奏だった。


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Port of Notes


最後に御大・細野晴臣がペダルスティールの高田漣、ベースの伊賀航とともに現れる。「というわけで……僕だけ気持ちはお通夜です」とMCの話題は前日に発表となった忌野清志郎の話題にどうしてもなってしまう。オープニングにザ・バンドの「All La Glory」を日本語に訳したバージョンでプレイし、2曲目からはSAKEROCKの伊藤大地をドラムに迎えての演奏だったが、これがなんともはまっていた。そしてdaisyworld discsよりアルバム『Strange Tomatoes』をリリースしたばかりのハミングキッチンのふたりが登場し、彼らの「Taxi Driver」や、スタンダード・ナンバー「Smile」を披露。イシイモモコのソウルフルで透明感ある歌声、そして眞中やすのギターワークとハリーのコーラスが生むハーモニーがたまらない。このセッションにはハリーもいたくご満悦の様子で、「いいなー、場所変わらない?」とハミングキッチンのふたりに語りかける場面も。ふたたびザ・バンドの「The Night They Drove Old Dixie Down」のカヴァーもプレイされ、彼の新作は果たしてこんな『HOSONO HOUSE』のようなレイドバックした音になるのかという期待も抱かせつつ、本編が終了。


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細野晴臣


アンコールにはハリーの「みんな出てきて」という声の後に出演アーティストが勢揃い。「キヨシローはついに僕のライヴ、観にこなかったな、でも今観てるかもしれない」と泣かせるMCの後、HISの「幸せハッピー」を演奏。木津茂理のこぶしが大団円にふさわしく、力強く響きわたる。最初に登場したEGO WRAPPIN'の森による「ロックの神様に届きますように」という言葉からスタートした"Springfields"は、まさに『ラスト・ワルツ』のようなジャンルを超えた音楽の融合が生む感動を届けてくれた。


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Text : Kenji Komai


EGO WRAPPIN' Set List
01. a love song
02. あしながのサルヴァドール
03. 5月のクローバー
04. !楽団
05. Dear mama
06. かつて..。

SAKEROCK Set List
01. 平凡
02. 慰安旅行
03. ホニャララ
04. 千のナイフと妖怪道中記
05. 最北端
06. エブリデイモーニング
07. 餞(はなむけ)
08. 会社員

Little Creatures Set List
01. Nowhere
02. For Ease
03. 新曲
04. Stray Dog Is Walking
05. Inner City Life
06. Daze
07. Freeway Nerves

Port of Notes Set List
01. エイシェント・ブリーズ/新曲
02. (you are) more than paradise
03. One More Bourbon
04. 高台の家/新曲
05. ほんの少し
06. 愛の蜃気楼/新曲
07. 心の半分/新曲

細野晴臣 Set List
01. All La Glory
02. Lazy Bones
03. Wayword Wind
04. Taxi Driver
05. Moments Like This
06. Smile
07. The Night They Drove Old Dixe Down
08. Hit The Road To Dreamland
-Encore-
幸せハッピー with All Musicians


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