2011.5.2 (mon) @ SHIBUYA-AX, Tokyo
「今日このアルバム(最新作)が完成したと思ってる」とPABLO(Guitar)がライヴ後半に言っていた。たしかに、この日はPay money To my Pain(以下PTP)にとって"終わりにして始まり"を意味するのだな、と強く思った。最新サード・アルバム『Remember the name』レコ発は、3月20日の渋谷AXでツアー・ファイナルを迎えるはずだった。しかし東日本大震災の影響により公演は延期。1カ月以上の延期を余儀なくされたものの、なんとか無事に開催された。観客の入りはどうなんだろうか。余計な心配もしてしまったが、会場内は隅々までビッシリ埋め尽くされていた。
客電が消えると、ステージ上から吊るされた白幕にメンバー4人のシルエットが浮かび上がり、空を切り裂くドラム、鼓膜をつんざく怒号シャウトを合図に「Price to pay」で幕を開けた。白幕が曲の後半部分でハズされると、熱気と殺気が入り混じった盛り上がりを見せる。デジタル風味の異色ナンバー「Deprogrammer」でジリジリ攻め立てた後、「ようこそツアー・ファイナルへ、ケジメつけるぞー!」とK(Vocal)が渇を入れ、バンドの演奏はより一層加速度が増した。時折ステージ左右に設置されたお立ち台に上がり、ラップ、スクリーム、歌メロと硬軟自在に操る見事なヴォーカル・ワーク、そこにシンプルかつ重厚な演奏が追い打ちをかける。一糸乱れぬ怒涛の攻めは、圧巻の一語に尽きた。
しかし、今のPTPは単なるラウドロック・バンドの括りに収まり切らない魅力を持っている。最新作では聴き手と伴走する歌えるメロディが増え、激しさをも包含する懐の深いサウンドを鳴らすようになった。それに比例して、ライヴの見せ方にも変化が刻まれていた。メンバー自ら率先して「腹から声出して行こうぜ!」と呼びかけたり、ハンドクラップで一体感を促したり、全身全霊で観客とコミュニケーションを図ろうとしている。斜めに構え、聴いてくれる奴だけ聴いてくれ、といったクールなポーズは皆無だ。カッコつけてる方が百倍ダセえ、音楽は一人でも多くの人に届けるためにやっているんだ、と言わんばかりに丸裸で体当たりしてくる。その晴々とした、まっすぐな熱さに胸を打たれた。
中盤は弾き語りに近いほど音数を最小限に抑え、Kの哀感に満ちた歌声にウットリさせられる「In the blink of an eyes」、ノスタルジックな温かみを帯びた「Home」の流れには思わず涙腺が緩んだ。後半は「Butterfly soars」、「Here I'm singing」、「Greed」と再び爆音の絨毯爆撃でフロアをカオス化させる。「みんなが歌えるように試行錯誤した曲です」と説明を挟んだ後に披露された「Pictures」、オーケストラのような壮大な広がりを見せる「This life」は、本編最後にしてハイライトと言えるほど素晴らしかった。
アンコール2曲を含む全23曲、約2時間強の史上最長のライヴを走り切り、バンドは確かな自信を得たにちがいない。ハードコアにも通じるアグレッシヴな攻撃力、ポピュラリティ抜群のメロディを武器に、一回りも二回りも奥行きのあるステージングを最後まで見せつけてくれた。前方で両腕を振り回して暴れるキッズから、後方でじっと観戦しているOL風の女性まで魅了するラウドロック・バンドは、そうそういないだろう。今年は変化の年になる、来年にはニュー・アルバムを出す、と早くもメンバーはこの先の未来図を意気揚々と語ってくれた。ここから始まるPTPの変貌ぶりを刮目して待つべし!
Text : Ryosuke Arakane
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