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MO'SOME TONEBENDER "The world conquest tour"

昨年10月、実質的な再始動となった異なるバンドとの対バンライヴ"STRIKES TOKYO"、ニュー・アルバムを携えて今年1月の"TOUR STRUGGLE"、そして初のUSツアーを経て、モーサムはついに今回、"脱皮"した。USツアーこそ観れてはいないが、前回は新作を軸としたツアーだっただけに、いかに従来のレパートリーを今のバンドの音像で立体化してくれるのか？ が、ベスト・アルバム『BEST OF WORST』リリース後の今回、最も気になるところだったからだ。今回の"world conquest tour"（世界征服ツアー）には大阪、名古屋に続いてこの日も撃鉄が帯同。巨大なホワイトタイガーのぬいぐるみを背負って登場したヴォーカルのAMANOをはじめ、シルエットがもはや日本人バンドじゃない。だが、筋肉質なルックスとは不似合いなほど、どこか往年のNYパンク／NW的な繊細さやヒステリカルな響きを伴った踊れるロックは、今、モーサムのオープニングに似合いすぎ。クアトロのカウンターを危なっかしくも疾走し、「何をやれば盛り上がるかツアーで分かったんですよ」と、ライトセーバー（本家モーサム武井のお家芸？）ならぬ非常灯を振り回し……破天荒と腰の低さがないまぜになったステージにモーサムファンも満足げだ。

場の空気が"ユーモラスな無法"であったまった中、『2001年宇宙の旅』のテーマ（「ツァラトゥストラはかく語りき」）で雄雄しく登場したモーサムの4人。錯覚かもしれないが、藤田の打楽器やシンセをまとめたセッティングのシンバルの位置が常軌を逸した高さに見えた時点で、もう笑いが……。オープニングは「To Hell With Poverty」。轟音で塗りつぶすことなく、いい意味でアンサンブルの隙間が気持ちいい。楽器も百々のヴォーカルも鮮明で、その上、踊れるビートに自覚的だ。しかもそれはライヴ冒頭だけの展開ではなかった。

「DAWN ROCK」ですら（とはいえ、ベストALの2011年Ver.で予感できたが）四つ打ち～トライヴァルと、フィジカルに訴えるリズムでこの歴史あるナンバーは更新され、これまた定番「未来は今」すら、藤田の80s感バリバリのシンセでこの日のライヴのトーンを示唆。たった4曲で、冒頭に書いた"脱皮"感覚を体感したというわけだ。そして、イノセンスがある地点で沸騰した瞬間に起こる狂気を俯瞰で歌う「You're Rock'n Roll」の歌詞が恐ろしくクリアに聴こえたとき、ぞっとすると同時に涙がこぼれそうになる。踊りながら泣く。もしかしたらモーサムは今年最強のダンスアクトなのかもしれない……。

武井＆藤田ダブルでライトセーバーを左右に振り、ファンもそれにつられるというシンプルにキュートな時間を「Lost In the City」で、さらに「Hummmmer」ではキレっキレのハンマービートで暴走。正統派かつシンプルなロックンロールバンド（だったことは過去にもない気がするが）というイメージをもし持っている人が見たらば、ここで起こっていることに混乱したに違いない。

ライヴ終盤は藤田とサポートドラムSPANK PAGEの水野とのツインドラムが野生を呼び起こす「Drum Song」、アレンジは不変だが、音がさらに透徹していた「GREEN & GOLD」、そして本編はステージ、ファンともにブレイクのタイミングもバッチリ決まった「ロッキンルーラ」！　全14曲のコンパクトなセットだが、この日彼らはほとんどノンストップでこれをやり遂げたのだ。どういうテンションか想像してみてほしい。潔いライヴをこのまま終わらせても良かったが、アンコールも潔く超初期の代表曲「echo」が、煮えたぎったクアトロを真っ白に染め上げた。

照明も主に客席に向けて強烈な白い光が放たれた。ニュー・アルバム『STRUGGLE』を「極端に間口を狭くして、これに何かを感じるヤツのためにだけ作った」と話していた百々和宏の意図は、ついにライヴでも実現したんじゃないだろうか。何度でも転生するバンド、MO’SOME TONEBENDERの真価を見た。
　
Text : Yuka Ishizumi

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