2014.5.29 (thu) @ Shibuya CLUB QUATTRO
東京は渋谷クアトロ、大阪は梅田シャングリラで開催される今回の企画。結論から言って、OGRE YOU ASSHOLEの新たなモードが満載のライヴだった。オープニング、ゆるやかなリズムボックスの音がステージに鳴り響き、そこにベース、そしてドラムと加わっていく。初期楽曲「タニシ」の削ぎ落とされたアンサンブルで幕を開けた後、スーサイドのような反復するドラッギーなグルーヴが次第にカオスになっていく「見えないルール」へ。
音色、空間ともに、彼らが今鳴らしたい音、イメージするサウンドが具現化されていることへの自信が感じられる。残念ながら発売される予定だった12インチ・アナログはプレスの都合により発売が延期になってしまったものの、この日は特別に配られた清水のデザインによる歌詞カード(インナー)を「チラシだと思ってもらうと困る」と出戸が冗談めかすと、固唾を呑んでいたフロアが柔らかい空気に包まれる。
このクアトロのライヴで感じたことだが、彼らの音の質感に対するこだわりが確実に変貌を遂げていることだ。『100年後』のあの虚空をつかもうとするかのような感覚よりも、よりタフで中音域に特化した質感へ。とりわけそのサウンドの変化を感じられたのが「フラッグ」だった。強烈にサイケデリックなムードのオルタナティヴな前半から、途中でテンポを変え、オリジナル・ヴァージョンのアレンジへと変貌を遂げるこの曲の展開には鳥肌が立った。
新曲をはさみながら、「100年後」などこれまでのレパートリーもプログレ的な大仰さやギターバトルなど、新たなオウガのテイストが加えられていることが印象深かった。とりわけ圧巻は後半の「素敵な予感」(alternative version)。出戸がエフェクターをノイズのレイヤーを重ねていき、次第にズブズブと暗闇に落ちていくような世界、もうマイブラもゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラーもいらないと思わせる新しい音像があった。
そして本編最後に披露された新曲は「未来」「希望」「夢」といったおおよそこれまでのオウガでは考えられなかった言葉を用いて世界の絶望を歌ったメロディアスなナンバー。アンコールに登場した彼らは「いまアルバムを作っていて、今日やった曲も入る」と楽しみな報告をしてくれた。
アンコールにプレイされたのは海の底で鳴らされているような「ロープ」。メンバーがバックライトに照らされるなか、オープニングを逆回転させるように、ひとりひとりメンバーがステージから消えていく。出戸はいつものように「どうもありがとうございました、OGRE YOU ASSHOLEでした」と淡々とした挨拶だったけれど、会場の高揚感、そしてすごいものを観てしまったという興奮はクアトロの場内から消えることはなかった。
Text : Kenji Komai
Photo : Takeshi Hirabayashi / Nami Maruyama