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SPECIAL OTHERS "QUTIMA ver.8 ～QUEST～"

SPECIAL OTHERSが今年2月に発表したアルバム『QUEST』は、いわゆるジャム・バンド、そしてインストゥルメンタル・バンドのスタイルを全国にローカライズしながら、同時にそうしたカテゴライズさえ越えていこうとする、バンドの確かなイノベーションが感じられる作品だった。その最高傑作に伴うツアーのファイナルは、単独公演としてはおそらく最大のキャパシティとなる渋谷AXだ。

見事ソールドアウトを記録し、2階席も含め膨れあがった会場中に熱気が充満している。メンバーの周りにぐるりと配置されたスポットのみというシンプルな舞台装置。広いステージを大きく使うのではなく、メンバー全員が全員の顔を見渡せる、小バコと同じようにギュッと中央に固まった立ち位置は変わらない。ジャム系アクトがしばしば試みる2部構成を導入する彼らのライヴ、この夜はアルバムのオープニングを飾る「NIGHT PARADISE」でスタートした。

MCでもしきりに、特別なものに感じているということが語られていたが、この大舞台を充実したものにしていこうという、いい意味での緊張感がみなぎっていたのが1部のステージだったと言えるのではないだろうか。自由に踊ることもままならないほどに見えたフロアは、次第にゆったりとグルーヴに包まれていく。「NGORO NGORO」などのおなじみの楽曲をまじえながら、近年の「STAR」のような、より進化したSPECIAL OTHERSのスタイルがじっくりと構築されていく。1部ラストは、よりアーシーな色を濃くする「QUEST」。多幸感たっぷりのオーガニックなインスト、アフロ的であったりアブストラクトな音響であったり、さらに豊かな表現力を身につけていることを感じさせる演奏が披露された。

小休止を経て、2部が「Mambo No.5」でスタートすると、演奏中おもむろに周囲のスポットがスタッフにより外されていく。そして2曲目の「BEN」になると、メンバー後ろの幕が開き、ちょっとびっくりするくらいの大胆でゴージャスな照明が現れるという、心憎い演出。まるでこれまでの彼らのがんばりのご褒美のような輝きが、彼らのタフな演奏を盛りたてる。この彼らのアンセムでは、柳下のクリアなギターの響き、芹澤のリリカルなキーボード、宮原のずぶといドラムというソロ・パートの充実ぶりも特徴だが、屋台骨となる又吉のベースも加えた4人の圧倒的なプレイヤビリティはつねに新鮮さを我々に与えてくれる。しかも、決してマニアックではなく、とてもカジュアルに。この日常感こそSPECIAL OTHERSの魅力であるのだろう。カラフルに輝くライティングとともに「Laurentech」「AIMS」とハイライトとも言える楽曲が次々と押し寄せ、そしてラストの「Good Morning」まで、その温かな高揚感は終わらなかった。

アンコールでは「武道館2デイズが見えてきた！」と豪語する宮原を筆頭に、又吉が「俺、帰ったら泣くよ！」、芹澤が「この光景を10年前の自分に見せてあげたい」と語り、その充実感からか、いくぶんリラックスした彼らの姿があった。ちなみに今回のツアーで恒例となった、柳下が詠む一句は、〈これだけは　言わせてください　ありがとう〉（笑）。アンコールラストにプレイされた「IDOL」には、爆発的なカオスといってもいいバンドのタフなアンサンブルがあった。音楽の力を信じることを改めて体感させてくれる、万感胸に迫るパフォーマンスが終わり、SEとしてザ・バンドの「The Weight」が流れる。SPECIAL OTHERSもきっと彼らのように、音楽に人生や夢を託すことで深みを増していく存在になってくれるんだろうな──そんな余韻と期待がじわりじわりと心の中に満ちてきた。

Text : Kenji Komai
Photo : Reiji Isoi