New Audiogram: オルタナティヴミュージック ウェブマガジン

"New Acoustic Camp 2011 Pre."

昨年OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDを中心に立ち上げた"New Acoustic Camp"が、今年も山梨県・道志の森キャンプ道で開催されることになった。これはアコースティック・ライヴとキャンプを組み合わせ、音楽と共にアウトドアの空気を楽しんでもらおう、というイヴェントだ。今日はそれに先駆けたキックオフ・ショウとなり、会場は満員御礼の混み具合。ビール片手にチキン・ガンボ（南アメリカのスープ料理、会場内で販売）を食べている人も見受けられ、通常のライヴとは趣が異なるリラックス・ムードが漂う。

「（ヘアスタイルが）もじゃもじゃのふたりです」の第一声でトップを飾ったのは、GRAPEVINEの田中和将＆高野勲のユニット＝Permanentsだ。ギターとキーボードのミニマム編成で、「いきなりエレキ使いやがってと思ってるでしょ？」と田中は観客を軽く牽制しながら、最初はエレキを使い、途中からアコギに切り替え、歌詞が若いから恥ずかしいとこぼしつつ、「遠くの君へ」（ファースト・アルバム収録）など懐かしのGRAPEVINEナンバーをプレイし、この場をきっちり掌握する。その後、昨年の"New Acoustic Camp"の模様が20分近くスクリーンに映され、音楽と自然をテーマにしたこのイヴェントらしい風景の数々にすっかり癒されてしまった。

「こんばんは、Def Teckです」とMartinのツカミの挨拶に観客も笑いつつ、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのショウがはじまった。ご存じの方も多いだろうが、最新ミニ・アルバム『夢の跡』は4月6日発売予定だったが、震災の影響により6月1日に延期された。この日は偶然にもリリース直後のライヴとなり、新曲を楽しみにしていた人も多かったに違いない。

優雅なヴァイオリンの調べにうっとりするインスト曲「Tinte」で幕を開けると、観客は即座に反応し、ハンドクラップが鳴り響く祝祭ムードが広がる。前半はMartin、TOSHI-LOWがそれぞれリード・ヴォーカルを務める新曲「coffee　stain」、「gross　time～町の灯～」をやり、前者はふくよかな広がりを、後者は哀感に満ちた繊細な歌声を存分にアピールする。改めて、これほど両極端な声音をごく自然に内包してしまうバンド・サウンドに感心させられた。

さらにMAKOTOのウッド・ベースやKAKUEIのパーカッションを含めたカラフルかつ躍動感なアンサンブルも、鳥肌が立つほどの素晴らしさで耳を根こそぎ持っていかれる。新作は歌もの色を強め、キメ細かな音色を紡いでいた。だが、ライヴではアコースティックとバンドの中間、いや、その両方の良さを取り込んだOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDにしか鳴らせない世界観が屹立していた。特に各楽器が有機的に絡み合い、繊細な表情を垣間見せながら肉感的なグルーヴで巻き込んでいく腕っ節は、やはり血筋に因るものなのだろう。現在のOAUサウンドは、代替不可能な魅力溢れるバンドへ確実に成長・変貌していることを思い知った。

「南三陸の川でお婆ちゃんが洗剤を使わずに洗濯してて、地球にあれだけガツン！とやられたのに地球に優しく接している…」とTOSHI-LOWは切々と語り、新曲「pilgrimage」、ビスコのCMソングに起用された「夢の跡」を披露した。余分な力を一切入れず、耳元で囁いてくるようなTOSHI-LOWの歌声は人肌のぬくもりに満ち溢れ、聴く者を優しく包み込んでいた。アンコールではROZI、KAKUEI、TOSHI-LOWの3人でパーカッションによるセッションが行われ、これがまた非常に聴き応えがあり、最後の最後まで緊張感と安らぎが激しい反復を繰り返す、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND流のダイナミズムをしっかり見せつけてくれた。

Text : Ryosuke Arakane
Photo : Aki Ishii

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夢の跡 OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND