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ART-SCHOOL VS VOLA & THE ORIENTAL MACHINE "ECSTASY IN THE MACHINE"

熱気に包まれたリキッドルーム。オープニング・アクトのyour gold, my pinkの東京初ライヴが終わり、木下理樹(ART-SCHOOL)のDJでさらにヒートアップ。OGRE YOU ASSHOLEの「コインロッカー」でフロアは一気に盛り上がり、その熱気を維持したまま、元ナンバーガールのアヒトイナザワ率いるVOLA & THE ORIENTAL MACHINEが登場した。

your gold, my pink

照明が落ち、暗闇を切り裂くようなSEを経て演奏が始まる。「self-defense」「An imitation's superstar」などの代表曲に、客席は一瞬で最高潮の盛り上がりをみせる。ステージ上のアヒトイナザワは全身を使って叫び、踊り、手を叩く。その動きに比例するように演奏のグルーヴにも拍車がかかる

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE

曲の途中でアヒトがギターを肩にかけると、演奏のエッジが増し、それまでの縦横無尽なアヒトの動きも落ち着きをみせた。演奏に耳を傾けると、ギター、ベース、ドラムの骨組みがはっきり聴こえてくる。勢いに押されて気づかなかったが、前衛的でニューウェイヴなイメージに囚われていた筆者にとって、シンプルな音の構成は意外な発見であった。頭を使って緻密な音を鳴らすのではなく、先に身体が反応してしまうような肉体的なバンドであることが、ステージ上の姿から伝わってくる。だからこそ、観客とバンドの間に壁はなく、一体となって踊ることができるのだろう。アヒトは全身でリズムを取り、奇声を発した後、客席に飛び込んだ。

そして、前日に発売されたばかりのスプリットシングル「50/50」から「SWEET MEN」「WEEKEND LOVERS」の2曲を披露。観客は、休むことなく踊り続ける。この2曲はもちろん、現在制作中のニュー・アルバムに収められるであろう新曲を聴けば聴くほど、肉体的なバンドという感覚は確信に変わっていく。KLAXONSやDIGITALISMのように、自分たちの時代をエレクトロニックなサウンドで切り開こうとするVOLA & THE ORIENTAL MACHINEと、それに素直に反応するオーディエンスを見ていたら、これからの日本での音楽シーンが楽しみになってきた。

MCでは学校の先生の声が裏返った話をしたり、ハンドクラップを求めたり、決して独りよがりな演奏で自己陶酔することはない。同様に、アルバムを聴き込んでライヴにやってくるオーディエンスも自己陶酔することなく、メンバーと一体となって楽しもうとしている。ネットの普及などによって、ミュージシャンと聴き手の垣根は低くなっているのかもしれない。そんな中、こうしてアーティストとオーディエンスの信頼関係が築かれていることは本当にすばらしい。ライヴは終盤にかけ絶頂を迎え、アヒトがステージ中央に置かれたカウベル、シンバル、タムを思い切り叩きまくる。ナンバーガール時代のアヒトはここにはいない。VOLA & THE ORIENTAL MACHINEのフロントマンとしてギターをかき鳴らし、本能に従って叫び、踊る。アヒトの魂の鼓動である激しいパーカッションの余韻は、ライヴが終わってもいつまでも消えることがなかった。

ART-SCHOOL

フロアの熱気が少し落ち着きを取り戻した頃、ART-SCHOOLが登場。「Shella」で幕を開けた彼らのステージは、VOLA & THE ORIENTAL MACHINEのパフォーマンスとは対照的で、静寂に映えるギター・サウンドが心に響いた。英米のインディ・ロックからの影響を自分なりに解釈し、消化させた自信のようなものが、木下の弾くギターの音色から感じられた。これまでグランジやシューゲイザーなどという言葉で語られてきたART- SCHOOLだが、今の彼らは90年代の様々なギター・ロック・スタイルを総まくりした上で、新たな時代へ向かうサウンドを鳴らすバンドへと成長した。

5月にドラムの櫻井が脱退し、オリジナルメンバーは木下だけ。新生バンドとしての化学反応が起こっていたと判断するには早計かもしれない。しかし、ART-SCHOOLは不安定な感情の上で、いつ崩れてしまうのかわからない繊細な足場で機能するバンドでもある。「それぞれが、楽しんでもらえれば、いいと、思います」とぶつ切れに話す姿は、不器用で斜に構えているというより、様々な経験を経て自分にも他人にも寛容になった証のようにも感じた。ライターやDJとしての活動を通じ、自身の活動を誰よりも客観視することによって、木下はART-SCHOOLを更新してきたのだろう。「Miss World」「ロリータキルズミー」は、新生ART-SCHOOLとしてまだ覚束なかったが、これからどのように血肉化していくか楽しみでもある。

8月5日には約2年半ぶりのアルバム発売が決定しており、今回のライヴでも新曲を3曲披露した。過去のART-SCHOOLとは異なり、変化の最中にいることは明らかだ。それは木下がこだわってきた"オルタナティヴ"の追求に他ならない。何かと内向化している時代に逆らうように、彼は外へ目を向けている。ライターやDJの活動はもちろんのこと、新たなメンバーを従え再始動したことがそれを物語っている。初期メンバーがいなくなり、木下理樹のソロ・プロジェクトとして活動していくことも可能だったはず。しかし、木下はバンドであることを選んだ。ART-SCHOOLの繊細な足場を踏み固めることが、当面の彼らの目的であり、"オルタナティヴ"な作業に他ならないのだろう。アンコールなしの15曲は、過去と未来の狭間で美しく鳴り響き、オーディエンスを魅了していた。

「ART-SCHOOL VS VOLA & THE ORIENTAL MACHINE」と銘打たれたように、一見対照的なライヴであったが、VOLA & THE ORIENTAL MACHINEもART-SCHOOLも、同じ使命感と目的意識に貫かれている。そんな気がした。

Text : Hiroo Nishizawa
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE Set List
01. ORIENTAL MELANCHOLY
02. self-defence
03. An imitation's superstar
04. Turning Turning
05. SWEET MEN
06. In the morning
07. WEEKEND LOVERS
08. PARTY SONG
09. DEAD OR DANCE
10. Mexico Pub

ART-SCHOOL Set List
01. SHEILA
02. 14souls
03. 水の中のナイフ
04. 左ききのキキ
05. Real love/Slow dawn
06. MISS WORLD
07. イノセント
08. バタフライ・キス
09. スカーレット
10. HEAVEN'S SIGH

SA-KA-NA ELECTRIC DEVICE VOLA & THE ORIENTAL MACHINE

Ghosts & Angels ART-SCHOOL