2011.6.17 (fri) @ Kudanshita NIPPON BUDOKAN, Tokyo
ACTs : the band apart / ASPARAGUS
「"聖地"でライヴをやるような気持ちでいっぱいです。君達はどうなのかな?」。the band apartのベーシスト・原昌和の普段通りの泰然自若とした雰囲気の言葉に、会場はもちろん大歓声だ。国内外の名アーティスト達が数々立った"聖地"のステージでも、変な気負いは感じられないその言葉は、この日のライヴ自体のムードを物語るようだ。1曲1曲の世界観をアシストする照明はもちろん素晴らしかったが、舞台は暗幕で覆われ、派手な演出は一切なしだったこの日の"SMOOTH LIKE BUTTER"。ついに日本武道館で開催するまでになったバンアパ主催イヴェントの大舞台にあったのは、the band apartとASPARAGUSという盟友2組が生み出した、それぞれの個性とオリジナリティがたっぷり込められた楽曲の数々。過剰な装飾は一切なくとも、音楽の力のみで多くの人の心と身体を躍らせた風景は、ミュージシャンの本分で勝負する彼らのプライドが結実した瞬間にも思えた。
「ホント、全然緊張してない!」満面の笑みで堂々と言い放ったのは(笑)、トップバッターASPARAGUSの渡邊忍。オープニング・ナンバー「FAR AWAY」と、そこから立て続けに流れ込んだ「DEAD SONG」ではアコギをリズミカルに鳴らし、繊細にアルペジオを鳴らし……。プレイヤーとしてのスキルをいかんなく発揮するフロントマンと、それを柔軟に変化するプレイで支える原直央、一瀬正和のリズム隊。このトライアングルにしか作れないであろう独特なテンポ感で、武道館の大観衆は跳んだり跳ねたりもう大変だ。「JERK」からはエレキ・ギターにスイッチ、サウンドにさらなるアグレッシブさが加わった「APPROACH ME」ではスタンディング形式のフロアでファン同士が笑顔で身体をぶつけあう。
「やっぱ武道館、違う!」。大観衆と一緒に作るライヴ空間に、最初は「緊張しない!」なんて言っていた渡邊も感激の面持ち。「人生ってさ、すごいのよ! 上がったり下がったり。みんな生きてるから分かると思うけど、結構あるじゃない。調子良いなと思ったら、ガーンときたり……」。バンド結成から来年で10年を迎える彼らの道は、昨年は楽器ごと機材車の盗難に遭ってしまったりと、波乱万丈……。しかし、そんな彼らへ機材車を提供したバンアパとともに立った武道館のステージで、さらに言葉を続ける。「でも本当、夢って叶うんだね。人間だからね、飛べないけど……。飛べるかもしれないよ?」。ちょっとクサいそんな言葉も(笑)、シノッピーのあの笑顔で言われると"その通り!"なんて拍手を贈りたくなってしまう。さらに、それに続いた曲が「I FLY」というのもまたニクい! スピード感の中にフックを様々つけて観客を揺らしに揺らし、そのビートに乗せたメロディは、眩い光とともに大空へ舞い上がっていきそうなほどの鮮やかさだ。「SILLY THING」、「FALLIN' DOWN」とさらに続けたエンディング・シーンも、爆音とポップ・センスが見事に融合するASPARAGUSの真骨頂。武道館をいっぱいに埋めた手拍子と笑顔で、この日のもう一人の主役バンアパへバトンをリレー!
ディープな青色の色彩と、その中から響く厳かなギターの音色。そして、メンバー全員がステージに集い、繊細に音を重ね……激情的な音の塊が炸裂! 「AG」から「light in the city」でライヴの幕を切って落としたthe band apartも、激しくも滑らかな緩急自在の演奏で武道館を終始グルーヴさせまくった。「GAME,MOM,ERASE,FUCK,SLEEP」はリズムとメロディが異なるテンポを奏でるポリリズム的アプローチの1曲だが、テンポ感は独特でも自然と踊らされてしまうのが不思議だ。ドラムやベースだけでなく、ギターもヴォーカルもまるで打楽器のように昂揚的なリズム感を生み出す、the band apartという名の唯一無二の個性を、武道館の大音響の中に浸っているとあらためて感じずにはいられない。
「ASPARAGUSは長い付き合いで、本当に良い先輩なんすけど。俺、タメ口じゃないと心が開けないっていうすごい態度の悪い後輩で申し訳ないなと思ってるんだけども……。今日は本当に、アスパラ、ありがとう」
口調はタメ口でぶっきらぼうでも、気持ちがたっぷりこもっていることは当然過ぎるくらい伝わってくる。ASPARAGUSへの感謝をあらためて伝えた原の言葉に続いたのは、ミドルのテンポの「Taipei」。洗練された都会的な雰囲気を漂わせるこんなナンバーも、心地よいグルーヴ感を与えてくれる。そしてまた一転してテンポアップ、1曲の中で多彩に変化するグルーヴに酔わされたかと思えば、「1000 light years」でスピーディーに疾走、etc……。曲間なしで縦ノリ、横ノリ、あの手この手で押し寄せてくるテクニカルなサウンドに、武道館の観衆は身体全体で喜びの声を上げ、ステップを踏み続ける。
「俺、高校生のときにここにメタリカ観に来て、(二階席を指さして)たぶんあの辺だと思うんだよね。そのときは、"俺、メタリカと同じ空気吸っちゃってるな!"とか思ったけども……。そんな青春の思い出が、よく考えたらあったよね。武道館でやらせてもらえるってことになってから全然気にもしてなかったんだけど、なんか……。嬉しい反面、嬉しいよね。"反面"ないよね(会場笑)、嬉しい! それでこんなにたくさん人に来てもらえて、俺達なんてラッキーなバンドなんだろうっていつも思います、本当にみんなありがとう」
この良き日への感謝を、荒井は素直な言葉で伝えた。彼は、自らを"ラッキー"と言ったけれど……。ASPARAGUSを始めとする多くの人たちの支えなど、様々な幸運があったからこそ彼らのこれまでの活動はあったのだろう。それはもちろんだが、武道館ライヴが実現するほどのスケールにまで彼らの活動が広がったのは、何よりもthe band apartの音楽が魅力的だったからこそだ。荒井の歌声が何度もリフレイン、感動的なメロディが武道館にエコーした「CAN'T REMEMBER」。そして、本編のエンディングを飾った「ERIC.W」の超アッパーなリズム――。テクニカル、かつ"歌心"で聴き手の胸を打つこんな音楽は、何度も書くが、the band apartにしか生み出すことができないものだと思う。そんな、彼らのバンドとしての骨格をあらためて実感させられるとともに……。その収益を東日本大震災で被害に遭われた方々へ義援金として贈るチャリティCD収録曲の「THE SUN」と「SNOW LADY」からも、"音楽を通して出来ることをする"という彼らのミュージシャンの本分が伝わった。"音楽"で自らの姿勢を、メッセージを伝えるミュージシャンと、その思いを真正面から受け取るリスナーが作ったこの日の日本武道館――。ステージにも、客席にも、最高の“音楽仲間”が集った素晴らしき日は、ASPARAGUSのメンバーも呼び込んで全員の一本締めで見事に大団円!
Text : Toshitomo Domei
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